本日は性転ナリ。

漆湯講義

After Story…My Dearest.20

窓から差し込む薄っすらとした灯りの中、私は携帯の画面をただただぼんやりと見つめた。
そしてゆっくりと深呼吸をすると、ウェブの検索窓を開く。
"ど"
"う"
"せ"
"い"
"同性"
"こ"
"ん"
"婚"
"   "
"こ"
"ど"
"も"
"子供"
"<enter>"


画面を見て…私の心臓がギュゥ…と縮こまるのを感じた。
そう…だよね。そうなんだよね…
検索結果には"フツウ"の世間での私たちの立場を思い知らされるような記事ばかりが広がっていた。
分かっていた筈なのに、自分はそんな世間の目など気にしないと決めていた筈なのに…気がつくと私は携帯を遠くへと投げ捨てていて…そしてまた、鼻の奥の方にツンとする感覚が広がっていた。
その後のことは自分でもよく覚えていない。
ただ…私は暗闇の中、誰に言っているのかも、その大きさすら分からないほどに自分の仕舞い込んでいた気持ちを涙と共に溢れ出させた。
そして暗闇の中、突然にぼうっと柔らかな光が浮かび上がる。
私はふわふわと風に揺られるようにその光の元へと舞い降りた。
すると、いつのまにか場所が莉結の部屋へと変わっていて、私の腕に抱きつくように莉結がその温もりを私に伝えていた。

『この子はあそこの高校行ったんだよねぇ』

莉結はそう言って、机の上に開かれたアルバムを指差した。
既視感のあるその光景は、それを思い出そうとしても頭がぼうっとするばかりでその答えが浮かんでこない。

『この子とこの子付き合ってたんだよっ』

「へぇ…そう、なんだ」

すると莉結が満面の笑みを浮かべてこう言った。

『私たちだって付き合ってるでしょ?女の子同士なのにっ』

「えっ?うん…そうだけど…」

なんでそんな言い方するんだろ…
私がそう思っていると、莉結は笑みを浮かべたままアルバムをパラパラとめくっていき『だけどねっ、ほら、見てッ♪』

莉結がそう言って見せてきたページは"将来の夢"が書かれたあのページだった。




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