本日は性転ナリ。

漆湯講義

After Story…My Dearest.5

『お婆ちゃんいっつも衣瑠のコト"瑠衣ちゃん"って呼ぶの。なんか変な感じ♪』

「だって私の名前はそっちがホントだもん。今は衣瑠って方がしっくりきちゃってるけどね♪莉結もずっと瑠衣って呼んでたのに変な感じしないの?」

『だって衣瑠は衣瑠だもん、元はと言えば衣瑠が自分で衣瑠って言ったんじゃなかったぁ?』

「えぇ?そだっけ?まっ、いっか。なんて呼ばれても私は私だもんね♪」

柔らかな髪が首元に近づき、莉結の手が私の肩を握る。そして胸に温かな吐息と共に小さな声が伝わる。

『そ、衣瑠は衣瑠なんだよ』

そして暫くの沈黙の後、再び胸元に微かな振動が伝わった。

『私たち…ずっと一緒に居れるのかな…』

消えてしまいそうなその声に私は莉結の気持ちを汲み取った。
多分、心配なんだよね。あの手紙…人生を共に進むパートナー…か。
私たちの気持ちは決まっているけれど、私たちが進む道は、その足を進める事を受け入れてくれるだろうか。多分、そういうコトなんだよね。

「私たちは私たちだって。周りに合わせるコトはないよ」

莉結の身体が私にグッと近づく。私はその小さな身体を包み込むようにギュッと抱きしめた。

『私ね、たまにふと思うんだ。私って変なのかなって、周りの子とか見てて、それが普通なのかなって思うと急に不安になっちゃったりして…衣瑠は不安にならない?』

「だって私はフツウじゃないもん。だけどね、私は不安にはなんないよ。だって普通ってのはただ単にそういう人が多いってだけでしょ?例えば莉結の好きなチョコのお菓子あるでしょ、その中にひとつだけハートの形をしたチョコが入ってたらどう思う?」

『それは嬉しい…なんかワクワクするケド…』

「それと一緒。周りと違うから変じゃなくて、周りと違うのはトクベツってだけなんだよ?それってすごいワクワクしない?」

私の胸元から莉結がゆっくりと顔をあげると、私の髪を撫でてこう言った。

『衣瑠ってホント前向きなんだね』

「それは莉結だって負けてないじゃん♪」

すると莉結はゆっくりと身体を起こし、仰向けの私に覆いかぶさるようにその視線を近づけた。
そしてその距離を段々と縮めると、ゆっくりと優しくその口先が重なった。

『これもトクベツ?』

莉結のその行動は、私の小さく開いた口を自然と頬を緩めさせ、莉結の身体をギュッと抱き寄せて耳元で囁かせた。

「うん、とってもワクワクする」

『もぉー♪衣瑠ッ!好きッ♪』

「えっ?恥ずかしいって!お婆ちゃんに聞こえちゃうよぉ…」

『知らないッ、衣瑠が悪いんでしょ?』

「なにそれー?ふふ♪」

そんな事をしていると、下からお婆ちゃんの声が響いた。
私たちは少しドキッとしながらも、簡単に髪を手櫛で直すと階段を降りていった。



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