本日は性転ナリ。

漆湯講義

175.迎えるその時

そして一目散に嶺ちゃんの元へと歩み寄り、ギュッとその身体を抱きしめたのだった。

しばらく抱き合った後、顔を上げた2人の目にはキラキラと輝くものが見えた。

そこでふと気づく。「あれ?レイちゃん…」

稚華さんがレイちゃんのニット帽を摘み上げると『オソロー♪』と言って頭と頭を合わせた。

その時に"あぁ、そういうことだったのか"と納得する。

今までガラス越しでしか触れ合うこと出来なかった2人が今、ガラスの向こうで触れ合っている。それだけで何故かとても気持ちが良いものだった。

『ごめんトイレっ!』

『えぇ??今やっと消毒終わったのにー。見ないから部屋出なくてもいいでしょ??』

そんな稚華さんも部屋の外に出され用が終わるのを待った。

『意外と無くなるとスッキリして良いもんだよ♪』

自分の頭を撫でながら稚華さんが言う。

私たちも便乗してツルツルの頭皮を笑いながら触った。

『いいよー♪』
レイちゃんの声に再び部屋へと戻る。

このまま2人の幸せが続きますように。そう何度も願った。


それから変わらない日々が過ぎ、ちらほらと蝉が鳴き始めた頃、蒸し暑い夜に一本の電話が鳴った。

「あ、稚華さんどうし…」

『嶺がっ!!嶺が!!』

ただならぬ雰囲気に背筋が凍りつく。
私は莉結と共に病院へと走った。

病室へと向かうと廊下に稚華さんの姿が見えた。

「稚華さんッ!!レイちゃんは??」

青ざめたその顔がこちらを見つめた。

『私、サイテーだ…』

「どうしたの?何かあったの?」

すると稚華さんは涙ながらに話し出した。






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