本日は性転ナリ。

漆湯講義

164.互いの気持ち

『嶺のバカッ!!そんな大切なことお姉ちゃんに言わないで勝手なコトすんなよぉッ!!』

レイちゃんは少し困ったような顔をして答える

『だってそんな事言ったらお姉ちゃん学校休んで付きっきりで看病しそうだもん。私はお姉ちゃんにいつも通りでいて欲しかったんだ。』

ガラスに貼り付けられた手のひらがグッと握られ、水滴が滴り落ちるようにゆっくりと下がる。

『嶺の…バカ…』

小さく響いたその声はレイちゃんには届いていないだろう。しかしレイちゃんはその言葉を聞きとったかのように"ふっ"と悲しげに微笑み返したのだった。

『衣瑠ねぇもありがと。ごめんね。』

ガラス越しに"ゴーゴー"と空気清浄機の音が聞こえる。
その音にかき消されそうな声を必死に拾った。

『私ね、みんなで海とかプール行きたかったんだ。』

その瞳が街灯とネオンに彩られた窓の外を眺める。

「早く良くなってさ、またみんなで行こうよっ!!」

心の何処かで"本当に行けるの?"と囁く声をグッと押し殺した。

『そうだね。行きたいな。』
静かに微笑んだその顔が私の胸を見えないヒモでギュッと締め付けた。
するとレイちゃんが無邪気な笑顔に変わる。
『あ、そうだ!!私の部屋のクマさん持ってきてよ♪』

その"お願い"に稚華さんが顔を上げた。

『あのぬいぐるみの事…??』

そういえば稚華さんの家に上がらせてもらった時に奥の部屋に少し大きめのクマのぬいぐるみがあった気がする。
そんな妹の"お願い"に、稚華さんは立ち上がると
『他になんかないっ??ほら…欲しいモノとか食べたいモノとかさっ…』と必死に"妹の願い"を聞き入れようとする。

『じゃぁ…』
レイちゃんはボソッと何かを言いかけたが首を横に振り『やっぱ何でもない♪いつも通りの姉ちゃん達で居てよ♪』と微笑んだ。





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