本日は性転ナリ。

漆湯講義

157.ドアの向こう

ようやく稚華さんが落ち着きを取り戻してきた時、突き当たりのドアが開き看護師のお姉さんが足早に歩いてきた。
『ご家族の方は?』

その声に稚華さんが立ち上がる。

『あの…嶺は…妹は…』

『大丈夫ですよ。今は部屋を移動しておりますので、ご家族の方はこちらへ。』

「あの…私たちは?」
看護師のお姉さんは少し困った顔をして答える。
『すいませんご家族の方以外…』
『この子達も…一緒にいいですか?』
稚華さん…
『え…まぁ、ご家族の方がそう言うなら…』

看護師のお姉さんに案内され部屋に入った。

小さな会議室のようなその部屋には長机が置かれ椅子が並んでいる。

椅子に座り少ししてから医師らしき人が部屋に入ってきた。

『お待たせいたしました。椙山嶺さんのご家族の方ですね。えと、そちらの方は?』

『私の友人です。妹が家族のように慕っているので一緒にお話を聞かせてもらいたいんですが。』

医師は少し考えるように顎に手を当て黙り込む。

『お気持ちはお察しいたしますがまずはご家族の方だけにお話させていただけませんか?』

そりゃそうだよね。私たちも心配だけどまずは家族である稚華さんが聞くべきだ。そう思った。

「分かりました。莉結、私達は外で待ってよう。」

『うん、それがいいと思う。稚華さん、私達は後でいいから嶺ちゃんの事、聞いてあげて。』

そう言って私達は部屋を後にする。

色々な妄想が頭をかき乱しながら近くの椅子に腰掛け話が終わるのを待った。

「長いね…」

『うん…』

恐らく莉結も同じ事を考えているのだろう。

不安そうな顔でただただ床を見つめている。

"ガチャ"

長い時間閉ざされていた部屋のドアが開いた。

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