本日は性転ナリ。

漆湯講義

150.私はワタシ

モヤモヤとした気持ちで家へと帰る。

ホントに稚華さんに言わなくていいのかな…

何故そんなにも大切な話を"あれ程仲の良い姉に"隠すのかがどうも気に掛かる。

その件も踏まえて今日の病院での話をする為に莉結の家へと向かった。

『…そうなんだ。衣瑠はどうしたいの??』

「私はこのままでもいいって思ってる。というかコレが本当のジブンだから。」

『だけど…その"お父さんのハナシ"…これからの人生で凄い大切なことだと思う。』

そんな事分かっている。私が"女として生きるには辛い"その事実に。

そう、私が父さんに"瑠衣くん"として人生を歩まされた理由。

…私は産まれたときから"子供が産めない"カラダだったという事。

"産むのが難しい"とか"現代の科学では治せない"とかでは無く、そもそも子供を産む器官が存在しなかったのだ。

しかし丁度その時、生物学を根本から覆す異常な病気が発見された。

女性の"男性化"。その絶対にあり得ることのない病気に父さんは私の人生を賭けたのだ。

そんな病気が存在するなら"その逆"もあり得そうだがそんな都合の良いモノは見つからず、
止む無くして私に男としての人生を歩ませようとしたのだった。

そして"稚華さんとレイちゃん"も私と同じ運命の元に産まれてしまった。

そう、稚華さんも子供が…

あえてその話をしなかったのは、私が知っていると思ったからか、話題に出したくなかったからだろう。

「私は私。それに私が瑠衣に戻ったところで、"本当の自分"を殺しちゃうことになっちゃうよ。たぶん…その方が後悔する…それに私は…」

その続きは言ってはいけない。そう思った。

"私は莉結が居ればいい"そんな事言ってしまったら莉結の人生すら変えてしまいそうな気がしたのだ。






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