本日は性転ナリ。

漆湯講義

117.気付かぬ本心

『お風呂どーぞ♪』

さっきまでの莉結はなんだったんだろ…
髪の毛をわしゃわしゃとタオルドライしている"いつもの莉結"の顔を見つめる。
アレは莉結の顔をした別人だったんじゃないかとか変な事まで考えてしまうくらいだ。

まぁ、私たちも変わりゆく日々の中、色々な影響を受けて少しずつでも確実に変化してるんだもんね。

アレもきっと今までになかった新しい莉結なんだ。きっと。

モヤモヤが頭に纏わり付いたまま浴室へ行き汗を流す。

鏡を見るたびにドキッとしていたこの身体も今では当たり前だ。

人間の記憶というものは曖昧なモノで、かつての"瑠衣"の男性特有の筋肉質な身体も、寝癖のついたあの短めの髪も、口には出せないアレでさえ、もうハッキリと思い出すこともできない。

自分の写真を色んな角度からもっと撮っておけば良かった。なんてナルシスト思想っぽい事も考えてしまう。

どうせならもうちょっと胸も大きくなれば良かったなぁ…

…ってないない!何考えてんだ。

私は早く"元の身体"に戻って……元の身体?

これか…


たまに考えてしまうこの無意味な"自分とのやりとり"。

たまに自分が何なのか、本当に今の自分が自分なのかが分からなくなってしまうことがあるのだ。

しばらく悩んで、結局たどり着く答えは、
"考えてもしょうがない…か。"である。


さっ、お風呂上がって寝よ。





…部屋に戻ると莉結は既にベッドに横になり眠っていた。

…もう寝てんのかぁ。

気づけば寝ている莉結をじっと見つめる自分がいた。


いやっ、なにジロジロ見てんだろっ!ヘンタイじゃんか!

無理矢理視線を剥がしとってもやはり気になってしまう。

なんなんだよこのモヤモヤはっ!!

私はその答えを確かめるために、別に他に意味なんてものは無いけれど、莉結の寝ているベッドを背もたれに座った。
首を横に振れば目の前に莉結の寝顔が目の前だ。


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