104.トレンド

暖かい春の陽光が窓から差し込み
煌びやかな白と黒のコントラストを際立たせている。

窓を背にしたレイちゃんの顔は、俯いていてハッキリと表情が読み取れない。

「うん。ありがとう。…だけど、私は衣瑠ちゃんみたいに強くないんだよ？ごめんね。」

「私こそ、勝手なこと言ってごめん…」

どっと暗い空気に包み込まれた。

何を言っていいのか分からない。今の私の発言だってもしかしたら不快に思わせてしまったかもしれない。

その空気を追い払うかのように稚華さんが口を開く。

『もぅ！こんな空気にする為に呼んだんじゃないんだからっ！レイも衣瑠ちゃんも感動の再会を喜んでよっ？』

「でも…」

と、稚華さんの大きな溜息が部屋に響いた。

その瞬間、何を思ったか私とレイちゃんを両腕で抱き寄せあっという間に3人、横一列にくっつけられてしまった。

『はいっ♪暗い顔は捨てて記念撮影〜！！』

私側から携帯を持った手が前に伸びた。

そして画面が"インカメラ"へと切り替わる。

なんだこれ？？そこには見たことのない"生き物"がいた。

しかし目を凝らし見てみるとその生き物は、動物の耳と口元が画面に映る私たちの顔に重なっていただけだったのだ。

しかも画面に映る私たちの口元と頭部に、動きにピッタリと連動している。

「何コレ？！」

同時にシャッター音が鳴る。

そして一言。

『え…知らないのっ？！？！』

…話を聞くと、ずっと前から流行っているアプリらしい。

今の若者なら誰でも知ってる！らしい。

と言う事は私は若者に分類されないのか…

なんて事はどうでもよく、その会話のおかげで空気が和らいだ。

そのあと何枚か写真を撮り、写真を共有する為にレイちゃんとも連絡先を交換した。

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