本日は性転ナリ。

漆湯講義

100.キオク

ヒケンタイ…?

何を言っているのかが全く理解できていない。
そして何故私の事を"知っている"のか。

そもそもレイちゃんが私のヒケンタイ?
…って、なんの??どゆこと?

疑問ばかりが頭の中をぐるぐると回っていた。

『ホントになにも憶えてない?』

稚華さんの声で現実世界へと引き戻された。

「ごめん。なにを言ってるのか…どういう事?ごめん。わかんない…」

するとレイちゃんは私の手をそっと握った。

『ごめんね。それならボク…私は何も聞かない。』

レイちゃんの瞳がとても寂しいものに見えた。

『ダメ!そんなの…ごめんレイ。言わせて。』

『いいよ姉ちゃん!私は別に…』

『きっと衣瑠ちゃんもその方がいい。聞いてくれる?』

突然のやりとりに否定する余地もない。

「あ…うん。」

すると稚華さんは静かに語り始めた。


『あれは…私が小学生に上がってすぐの事。
私が骨折をして病院に行った時だった。
恥ずかしながら私の家は貧乏でさ…
母が受付で治療費の支払いができなくて、どうにかならないか話をしていたの。
そんな時に…如月先生が来たの。』

「如月って…まさか。」

『そぅ。お父さん…でしょ?』

「いやだけど、父さんは私がもっと小さい時に死んでる筈だよ!!」

『そうかもね。だけど、その記憶はホンモノ??』

「ホンモノ…?それは…」

自信を持って言える筈がない。だってその頃の記憶を思い出そうとしても、ボヤけてしまって出てこないのだ。

『私もそうだった。だけど最近ハッキリと思い出したんだよ。レイもそうだった。きっと衣瑠ちゃんも"何か"のキッカケですぐに思い出すよ。』

そしてレイちゃんは私をチラリと見た後、伏し目がちに言った。

『それで姉ちゃんが"選ばれた"の。』





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