本日は性転ナリ。

漆湯講義

98.嶺(レイ)

『だからホラっ。ちゃんと前出て自己紹介っっ!もぅ…笑』

恥ずかしそうに私の前に出てきた彼女は俯きながら、ようやく聞き取れる程の声で自己紹介をしてくれた。

『すぎやま…れいです。初めまして。』

「初めまして♪頑張ってくれてありがとね。」

つい幼い子を褒めるような口調になってしまった。

『頑張ったね。レイ。あ、因みにレイはこれでも1個下だかんね♪笑』


「えぇ?!?!そうなのっ?!?!ほぇ〜…」

まじか…レイちゃんには悪いけど、絶対そんな風に見えない…
小柄で華奢な身体だし、胸も…

そんな私の視線に気づいたのか、レイちゃんは"ハッ"と胸元を見下ろした後、ふくれっ面になってしまった。
…が、その姿も可愛らしくて稚華さんと目を合わせて笑ってしまった。

そんな私たちにつられてレイちゃんもくすりと微笑した。

「笑顔、可愛いね♪そんなに可愛い顔なのに、笑わないのはもったないよ♪」

なんて私が変なことを言ったものだから、レイちゃんは顔を真っ赤にして俯いてしまった。

私は何でこんなにも素直に話すことができるのか不思議だった。
普段から人付き合いが苦手だった私は、特に子供や年下の扱いが苦手だったのだ。

ちょっとだけ私に似ているから…なのかな。


「そういえば!!なんか私に会わせたい人が居るとか言ってなかった??」

すると稚華さんは目をまん丸くして、急に笑い出した。

『あははは!!ごめんごめん!会わせたかったのは"レイ"だよぅ♪私の妹っ。ねっ♪可愛い可愛い妹ちゃん♪』

それを聞いたレイちゃんは、ムスっと不機嫌な顔に変化して、そっと握り拳を作ると、すぅーっと息を吐き、その拳を稚華さんの脇腹へと投げ込んだ。

『ぐぁぁぁぁぁ!!!痛ぁっっ…ばかぁ!なにすんのよ!!』

『バカにすんなっ!!』

怒る理由は分からないが、その光景を見ていて"姉妹っていいなぁ…"と思ったのであった。


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