今日も俺は採取系の依頼をこなす。

ノベルバユーザー69231

冒険者ギルドで

風が進んだ道を俺も歩いていく。
少しの道のりを進んだところで、どうやら着いたようだ。冒険者ギルドと書かれた看板を見つけたので間違いないだろう。高さは他の家屋とさほど変わらないが、横幅と奥行きが広い。2倍はある。他の家屋と比べたと言っても、少し離れた位置にあるため目測になるわけだが。また、他の家屋はほとんどが木でできているのに対し、冒険者ギルドはレンガ?で出来ている。立派な外見で妙な風格があった。

あまり長く、外をうろうろしているのはおかしいと思って、俺は覚悟を決めて、扉を開ける。内装は木でできていた。どうやら壁だけがレンガができているようだ。右側の壁に位分けされて依頼書が並んでいる。ランク分けはS~Fまであるようだ。右側に依頼書を選ぶスペースがあるようで、いすや机が全体的に左側によっている。ドアの前に突っ立ているのもよくないので、俺は受付だろう人の列に並ぶ。3列出来ている中で左側の人が少ない列に並ぶ。体格が鎧を着ているのもあるせいか、全体的に大きいので、ここからでは先が見えない。しかし、普通に考えてこの先に受付嬢と呼ばれる女性がいて、そこで冒険者登録や依頼の受理を行うのだろう。また3列はすべて右側に出来ているので、どうやら右側が仕事スペース、左側は休憩?スペースといった感じで分けているのだろう。今はちょうど昼と夜の中間といった時間の感覚なので、あまり飲んだくれている人はいないが、数人はいた。夜はもっと煩いんだろうな。



考えているうちに自分の順番が来た。
「何か、ご用ですか。」
「冒険者登録をお願いします。」
「そう言えば、見ない顔ですね。では、この紙に必要事項をお書きください。」
「わかりました。」
そう言って、渡された紙に必要事項を書いていく。名前と職業と魔法技能と必須項目が続き、大きく自己PRスペースが設けられているが、特に書く必要もないので、自己PRはの欄は白紙にしておいた。紙を受付嬢に渡す。
「名前は村田壮郎、職業は魔導士で、魔法技能は『水』のみと。魔導士なのに、技能は1つですか。珍しいですね。失礼ですがお幾つですか。」
答える義務はないが、ちゃんと答える。
「18歳です。」
「18歳ですか・・・。それでは、”最前”の影響を受けた訳ですね。」
受付嬢は上を向いて目を閉じ、少し考えた素振りをすると、そう答えを出した。勝手に納得されても困ってしまう。俺には概念の伝達があるはずなので、それなりの事は分かるはずだ。なのに、最善ではなく、最前だということしか伝わってこない。昔の”最優”になぞらえたものなのだろうか。名前からなんとなく想像はできるがはっきりしない。

(働け。概念の伝達よ。)
強く念じようとするが、思わず声に出してしまった。受付嬢は首を少し傾けて、不思議そうにこちらを見ている。どうやら、聞こえなかったようだ。

「大丈夫ですか。何か考え事をしていたようですが。質問でしたら、後ろに誰も並ばれていないことですし、私がお答えしますよ。」

「では、依頼をどのように受ければいいのでしょうか。」
ここであえて別の質問をする。疑問に思われているならともかく、勝手に自己完結してくれたようなので、触らぬが吉というやつだろう。

「はい。左の壁に貼られている依頼を1枚取っていただいて、私たちのいずれかに見せます。こちらで適性を見て、妥当だと判断したならば・・・、」
そう言いながら、辺りを見回すと何かを発見したのか、会話を打ち切り、紙を手にして戻ってきた。
「こちらが完了した依頼書になりますが、こことここに名前またはパーティー名を書いていただきます。そしたら私達が真ん中の〇にこのハンコを押します。今ここにあるようにハンコを半分にするように二つに分けます。片方はこちらで預かり、もう片方は自分で持っていてください。これで、受理が完了です。
続けて説明させていただきますと、依頼を達成した場合は、自分の持っている半分の依頼書に依頼主の確認のサインを書いてもらってきてください。そして、その紙を私たちが確認し、報酬をお支払いします。適切な報酬を受け取ったならば、私たちが預かっている紙の方に確認のサインをしてもらって、依頼完了となります。」
「わかりました。」
依頼書の各場所を指しながら、受付嬢が丁寧に教えてくれた。
どうやらこの世界は、契約に厳しいらしい。結構な工程が必要なようだ。

「他に質問は、ありますか。」
「ここに書いてある討伐はどのように確認するのですか。」
そう言いながら、俺は依頼内容のオーク3匹討伐の文字を指す。
「基本的には、討伐確定部位を見せて頂きます。オークですと、耳になります。と言っても、魔物は食材や薬の材料などに使えるのがほとんどなので、討伐確定部位だけを持ってくることは非常に少ないですね。討伐依頼の時には、その魔物の討伐確定部位を伝えはしますが、この場で聞いておきたいものはありますか。」
「ゴブリンの討伐部位は何になりますか。」
「ゴブリンの場合はオークと同じく耳になります。」
えっ、おかしいな。俺がゴブリンを消した時は耳なんて残らなかったはずだ。下を向いて、魔法の痕跡を探したこともあったので、見落とした可能性もないだろう。
「その討伐部位は普通に戦ってもちゃんと残るのですか。」
「はい。問題ないと思います。」
えっ、おかしいな。魔法一発ですべて消し飛んだんだが・・・。聞いてみるか。
「すみません。一度僕は、ゴブリンを倒したことがあるのですが。その時には何も残らなかったと思います。」
焼却狩りプロミネンス,キルです・・・か。再び失礼ですが、よろしければステータスを見せていただけますか。」

(おい・・・、マジで働いてくれよ。概念の伝達君。)
今度は、呆れた感じに意図的に小さな声を出した。頭を掻きながら、概念の伝達が、俺の予想した使い方にができず、気持ちが沈んでしまう。やはりネタなのかもしれない。

焼却狩りプロミネンス,キルが伝わってて来ないので、素直に従っていいか迷ってしまう。

またおじさんの声に助けられた。
「嬢ちゃん。そいつはさっき初めて、この町についた人だぜ。」
声の方を振り返ると、門番とのやり取りを助けてくれおじさんだった。
「どういうことですか。」
「ああ。焼却狩り【プロミネンス,キル】なんて言葉は、もうこの町でしかほとんど使われていないんだ。他の町は大体過剰攻撃【オーバーキル】という言葉を使っている。」
投げかけられた言葉の意味が分からず、聞き返した受付嬢におじさんが、説明を加える。さっきの事といい、どうやら親切な人のようだ。
過剰攻撃【オーバーキル】なら、聞きなれた言葉だ。文字通りにやりすぎて、討伐確定部位が残らないことを言うのだろう。
「おい、お前。名前は何というんだ。」
「村田壮郎です。」
「了解だ。壮郎、意味は伝わったか。」
「はい、大丈夫です。」
「そういうことでだな。たぶん前にゴブリンを殺した時は確認のし忘れか、やりすぎたのどちらかだろう。やりすぎず、しかし確実に仕留めるってのは冒険者にとって、必須の技術だぜ。しっかり身に着けておけよ、と言っても適正ランクはそれも踏まえて、やりすぎず勝てる敵に設定されているらしいがな。」
「えっ、でも・・・。」
「まあ、そう思うなら、やってみればいいさ。」
受付嬢を無視して、しばらくおじさんと俺とのやり取りをした。しかし受付嬢を横目で見ても、怒っている顔をしているどころか、むしろ笑顔だった。元々、”新入り”への説明は先輩がやるのがだろうか。

そう言って、おじさんは、袋からちぎられた耳を出した。
「これは、先程狩ってきたオークの耳だが、一撃で判別できなくなる状態に出来れば、信じてやるよ。」
「わかりました。」

自分は詠唱する。ここでは、時間もあることだし、一応正規の詠唱をしよう。
【ロード オブ ゼロ】
右手をオークの耳に向けて、詠唱した。


・・・
結果はオークの耳はブレたが、それだけだった。消し飛ばなかった。理由がわからない。焦ってもう一度今まで通りの詠唱をするが、結果は全く同じだった。頭の中にMP-0 50/50と出るまではゴブリンを消した時と全く同じだった。結果だけが違う。

大量に汗が吹き出し、冷たくなる。
理由は何だと考え込む前に、おじさんの達の声が聞こえてきた。
「今のは、『風』の魔法か。」
「えっ、でも登録書には『水』しか書かれてませんよ。」
「ということは、あれか。属性をのせず、魔力だけを放出する感じのやつか。実際に見たことがなかったが、あんな感じになるのか・・・。ってか、わかってんじゃないかよ。えっと、壮郎だっけ。」
「合ってますよ。」
しばらく受付嬢とおじさんの会話になっていたが、もう一度俺に振られたようだ。頭が働かないので、俺は適当な返事だけを返した。
「そういうことだ。魔法ってのは、最大出力は魔力とMPで決定されるが、最小出力は魔力の高さのみで決まる。MPの消費量は好きに調節できるんだからそうしろよ、って説明をしようとしたんだが、わかってるなら手間かけさせるなや。」
「すみません。・・・でも」
確かに納得できる説明だが、そういうことではない。なぜか、固有魔法エクストラが発動しなかった。ポケ〇ンの”一撃必殺”と違って、今までは百発百中だったし、レベルが高い相手に当たらないなんてこともなかった。死んでいるからだろうか?体の一部だけだったからだろうか?

「まだ何かあんのか。」
俺は、固有魔法エクストラが発動しなかったことについて色々悩んでいたのだが、その姿を見んて、おじさんはまだ俺が魔法の話を納得していないと考えていたのだろう。
話しかけてきた。
「いえ、そうではないのですが・・・。」
「まさか武器でってことはないだろ。それこそやりすぎってもんだぜ。」
「あの・・・。再度失礼しますが、壮郎さんは魔導士ですよ。」
「えっ。魔法技能は『水』だけだって言ってなかったけ。」
「不思議に思ったのですが、18歳ということなので”最前”の影響を受けたのかと。」
「それはねぇぜ、嬢ちゃん。コイツは今日この町まで歩いてきたんだよ。」
「つまり・・・、クローム村出身ということですか。」
「ああ、そうだろうな。」
「確かに、それではおかしいですね。」
受付嬢の割り込みにより、またしばらくの間、俺を抜いた2人の会話が繰り広げられた。

(いや、働けよ。概念の伝達・・・。)
また、自分は独り言を言った。今度は少し大きな声だったかもしれない。固有魔法エクストラの事といい、目の前で繰り広げられている意味不明な会話の事といい、頭がごっちゃになった。もはや何を考えればいいのかわからない状況にあった。
そんな状態で出す八つ当たりのような声だった。


もう一度、独り言を言う。
(使えねーな。概念の伝達・・・。)
今度は諦めが多くを占める低く冷たい声を出した。

「どうしたんだ。いきなり変な声を出して。」
「すみません。話の意味が分からなかったので。」
変な声と言われたのは気になったが、頭がごっちゃになっていたので、とっさに真実を答えてしまう。

「まあ、そうだろうな。そういうことなら何でも聞いてくれや。」
どうやら当たりだったらしい。
ここでまず何を聞くのが自然なのか考えた。しかしここから、という場所がはっきりしないので、後ろからだんだんと質問していくことにする。
出身の村の事を色々聞くのはおかしいと思うので、まずは・・・、
「”最前”というのは、なんですか。」
「”最前”って言うのは、その道のプロの事や重要な発見をした人だな。ここで少し戻るが、魔法技能を1つしか持たない奴は普通、武士になるんだ。」
「あの、もう話についていけないのですが・・・。」
そう言って、俺はより詳しい説明を求めた。頭を掻きながらもおじさんは説明してくれる。本当に親切なおじさんのようだ。
「職業は3種類あるんだが。魔導士、武士と技術者の3つだな。大体、3つの魔法技能を持っている奴は魔導士、1つだけなら武士になる。2つ持ちの場合は、上昇ライズされる組み合わせなら魔導士、違うなら武士みたいな明確な区別はないが、得意な方を選択するのが普通だ。特殊属性持ちならば、ほぼが技術者を選択する。」
「職業の区別は付いたのですが、その職業はどうやって選択するのですか。」
「はぁ・・・、そんなことも知らんのか。」
いや、知らねーよ。こちとら勝手な都合で魔導士にされちまったんだよ。
ってか、女神よ。お前が気を付けてていたであろう”お前、そんなことも知らんのか”事件が起こっちまっているんだが。ちゃんと”紙”に書いておけよ。


・・・と、声には出さずに心の中で毒を吐いた。
二人は、俺の反応を待っているのだろうか。俺が心の中で女神に対して毒を吐いている知らずに、ずっと俺を見つめていた。
一応、当たり障りのない感じに応えておこうか。
「すみません。気付いたら魔導士になっていました。」
・・・、嘘は言っていない。
「まあ、そうだろうな。」
「そうだろうと思いましたよ。」
さっきから俺を見つめていたので、そうだろうと思ったが。やはり、受付嬢もこれからの説明に加わるらしい。
そして、先程の返答もどうやら当たりだったようだ。なんかいい感じに解釈してくれたようだ。

「どうしたんだ。急に黙り込んで。」
「すみません。意味が分からなくて。」
こう言っておけば、又説明してくれる気がした。


・・・
そしてまたしても当たりだった。
「まあ、そうだろうな。職業はなぁ、自分のステータスを見た後の行動によって決まるんだよ。ステータスを見た後に武器を振り回せば、武士になる。そして、特殊以外の魔法を使えば魔導士、特殊魔法を使えば、技術者になるって感じだな。たぶん、お前はこう言われたんだろう。{魔法を使え}ってな。」



はい、意味が分かりません。また心の中でつぶやく。
黙っていると、受付嬢が補足説明を付け加えた。

「一般に特殊魔法は、遺伝子的に優勢と言われています。親は子供も特殊持ちだと信じて疑わなかったのでしょう。魔法、つまりは特殊魔法を使うように指示したのでしょうね。ですがあなたが使ったのは、水魔法。さぞかし親は驚いたことでしょう。それでも、きちんとその年まで育ててくれるなんて、いい親を持ちましたね。」
「1つ訂正なのですが、親ではありません。親は自分を産んですぐに亡くなりました。」
「では、ますます育ててくれた人に感謝しなければいけませんね。」

技術者の特性については、すんなりと頭の中に入ってきた。
遺伝子的に優勢、といきなり言われたときは驚いた。たぶん、概念の伝達がやっと仕事をしてくれたのだろう。親が特殊持ちなら子供も特殊持ちになることが多い、みたいな説明を翻訳したのだろうか。それでも伝わってきた言葉に比べて口の動き方におかしいところはなかった。

考えてみれば、この世界の住人は日本語を話すわけではない。口の動きに違和感があるならば、初めの会話からそうなるのだろう。では、次に自分は日本語をしゃべる口の動かし方をしているが、相手から見ると自分の口の動きがその人の知る言語を話すような口の動きに見えるのだろうか。だとすると、『解読 翻訳』の魔法は視覚的な影響を与えるていると考えられる。つまり自分が見るすべての景色はある意味”幻影”ともとれる訳だ。その考えはとてつもなく理系心を刺激する。この考えを応用すれば、



...
「おい。いきなり黙り込んで、どうしたんだ。」
「すみません。少し考え事をしていて。」

(痛い・・・。)
頭を叩かれたのだろうか。少し痛みがある。その痛みが俺を”俺の世界”から引き戻した。

「まあ、心配するなよ。今まで教えられてきたことが、たとえ採取や鍛冶みたいな技術者の事だとしても必ずその知識は冒険の役に立つからな。それに冒険者の事はこれから学んでいけばいいさ。」
「はい。」
どうやら、悩んでいたと勘違いされたようだ。あえて訂正する必要はないと思い、返事だけをした。

(いや、ちょっと待てよ・・・。)
「ん、どうしたんだ。」
今まで働きもしなかった概念の伝達がなぜ発動したのだろうか。遺伝子的に優勢という言葉は概念の伝達が働いたのは間違いないだろう。少し気になったことを試してみようか。

「あの・・・。技術者が遺伝子的に優勢というのはどういうことですか。」
「あっ。お前はクローム村から来たんじゃないのか。」
「いえ。周知の事実なのかなと思いまして。」
「...ああ、そういうことか。技術者の特徴なら冒険者が知ってて当然だろ。」

おじさんが気になる返しをしたものの、概念の伝達の予想がついた。

結果を言えばこれは使える。
お前は知識ある武器インテリジェンスウェポンだったのか。いや、この場合は知識ある技能インテリジェンススキルか。


概念の伝達が発動しなかった”最前”について聞いた時は、相手の勘違いのおかげもあるが”疑われる”ことはなかった。門番とのやり取りを挙げても最終的に”和解”できた。
しかし、概念の伝達が発動した遺伝子的に優勢についての質問をすれば、”疑われた”。自分の返しに”納得”した感じだ。事実、遺伝子的に優勢の詳しい説明はされていない。

そう言えば、肝心の”最前”の説明をまだしてもらってなかったな。

脱線を戻して、つまり、概念の伝達は必要ならば発動するという感じなのだろう。
さらにまとめるなら”分からなければ聞いてよし”ということだ。
不親切だとも一度は思ったが、”知っているため疑われる”を避けたのだろう。どうやら女神様は本格的に俺が”異端”だということを隠したいらしいな。
この世界には、異世界召喚の魔法はあるのだろうか。


(すごいじゃないか・・・。)


「どうしたんだ。いきなり声を出して。何がすごいんだ。」
どうやら、独り言のつもりがおじさんには聞こえていたらしい。結構小声のつもりだったんだが・・・。

「いえ、天才だと思いまして。」
「いえいえ。ここまでの説明は冒険者にかかわるものならば大体知っていることですよ。」
「すみません。紛らわしい言い方をして。僕を送り出してくれた”人”の事を言いました。」
「いえ、こちらこそすみません。勝手な勘違いをして。」

俺がおじさんの発言の返しに言った言葉を受付嬢が答えた。








俺が”異端”だとばれないような”スキルの調整”と知識の伝授。
俺が現代知識を披露しても技術者に教え込めれたからだと怪しまれない状況作り。

異世界転移の理由からして、この世界に地球人を送るのは初めてなはずだ。怪しまれないために女神さまが必死に考え、頭を悩ます姿が思い浮かんだ。






いや、ほんとお疲れ様です。女神さますごいです。
















女神様に対する壮郎さんの好感度?が上昇して終わりました。
ですが人生は山あり谷あり、なものです。
次の話が終わった時には、ガラッと変わっているかもしれませんよ。

フラグというのですかね。これは。

「ファンタジー」の人気作品

コメント

コメントを書く