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才能が全ての世の中で、オレの才能は器用貧乏……

矢追 参

第六話

 ☆☆☆


 明くる日曜日は、約束していた二階堂先輩とのデートである。デートといえば聞こえは良いんだけどな……正直、そこまで良いものじゃないと思い始めた今日この頃。
  
「来たか少年! さあ、デートを始めるぞ!」

 バッとマントを翻し、漆黒のなんたらみたいな仮装をした二階堂先輩。

 約束の時間より十分前に待ち合わせ場所へやって来たオレは、先に待ち合わせで待っていた二階堂先輩に痛々しい仕草を取られた上に、痛々しい台詞でそんなことを言われた。

 デート開始前から帰りたい。

「なんですか? その服……」
「む? 私服だが……何か変なだろうか?」

 オレの記憶だと、二階堂先輩の私服といえば胸元が大きく開いたセクシーな洋服である。が、今はどうだ。巷で言うところの将軍服、所謂ミリタリーなコスプレだ。マントまで羽織って、彼女を知らない人間からしたら厨二病か、コスプレイヤーにしか見えない。

「変じゃないと思ってる方がおかしいっす」
「ふむ……君はこういう系統の方が好きだと思ったんだがな」

 第三者の目が無ければ、多分興奮しました。

「と、とにかく……その格好、めちゃくちゃ目立つんでやめましょう! なんなら、服でも買いましょう!」
「うむ。今日は、ついでに新たなコスプレ衣装を……」
「おい、さっき私服って言ってたよね? コスプレって認めてるじゃねぇか!」
「おっと」
「おっと、じゃねぇよ!」

 オレが叫び上がると、さすがに二階堂先輩も肩を竦めて分かった分かったと頷く。それから、マントは外し、ジェネラル帽子を目深く被り直し、口を開いた。

「な、なにやら視線を集めているな……もしや、私たちは付き合っているように見えているのだろうか……」
「注目集めてんのは、あんたの格好だ」

 おっと、一応先輩だった。敬語敬語……。

「とにかく、早く脱いで下さい」
「こ、こんなところで……か?」
「畜生! 自分で言った後に気づいたよ!」

 だぁぁ! 本当にこの人は……オレは、内心で悪態を吐きつつも二階堂先輩の手を取り、取った手を引きながらデパート内にある洋服店を目指した。


 ☆☆☆


「ふむ……少年は清楚なものとセクシーなもの、どちらが好みなのだい?」
「似合ってればどっちでも……」
「ふむ」

 二階堂先輩は洋服店で服を見繕いながら、何やらオレの趣味嗜好を取り入れようと意見を訊いてくる。

 本音では、是非ともセクシーな服を着て欲しいのだが……さすがにそれを自分で勧めるというのも憚られてしまう。

「お、こんなのがいいんじゃないっすかね」
「む? 胸開きのタートルネックか……こういうのが好きなのかい?」

 谷間が見えるからね。おっと、結局セクシーなのを勧めてるじゃないか。うっかりうっかり……。

 二階堂先輩は、暫くオレが勧めた服をと睨めっこする。それから、それも含めて何着かいっぺんに試着室へと持ち込んでいった。

 やがて、試着室のカーテンが開いたかと思うと、タートルネックに着替えた二階堂先輩が立っていた。相変わらずのモデルさん体型だなと、オレは二階堂先輩の胸を注視しながら思った。

 いかんいかん……なんて引力だ! けしからん……。

「どうだろう……似合っているかい?」
「もうちょい谷間……おっと、間違えました。そのタートルネック似合ってますね」
「なにやら谷間と聞こえたような……」

 二階堂先輩は丸見えな谷間を隠すように自分の腕で肩を抱く。むしろ、ちょっと艶かしい……おっと。

 オレはとりあえず否定しておこうと口を開く。

「タニーマという、日本の極一部の地域で使われる放言です。意味は、似合っているという意味なんです」
「一体、どこなんだそこは……」

 ここ。極一部というか、オレしか使わないもの。

 二階堂先輩は呆れながらも、結局はその服をそのまま買うことに決めたらしくデートはそれで続行することとなった。

 オレと二階堂先輩はデパート内を歩きながら、二階堂先輩が思案する。

「ふむ……モチベーションを上げるなら、いつもと違ったことをしてみるなどが挙げられる」
「はい」
「例えば、普段行かないような小洒落たお店に入るとなど……ね。すると、自宅で書くよりも執筆が捗ったりすることがある」
「オレの場合はどうすればいいんですかね?」
「今は頑張りすぎて疲れてるいるだけさ。いわゆる、英気を養うというのは言い訳でも何でもない。しっかりと休むのも大事なことだよ。また頑張るためにね。だから、今日は目一杯遊ぶというのが……少年には一番適していると私は考えた!」
「つまり、普通にデートすると……」
「そういうことだ!」

 で、オレと二階堂先輩は遊ぶと言ったらと二人して思いついたのがどちらもゲームセンター。色彩デパートのゲームセンターまで足を運んだオレたちは、定番中の定番ともいえるプリクラ撮影のためにプリクラ機まで来ていた。

「ポーズをとるのか……何にしようか」
「別に何でも良くないですかね」
「何を言う! 誰かとプリクラを撮るのはこれが初めてなのだ! ど、どうせなら……良いものにしたいのだ」
「…………じゃあ、定番どころで」

 オレはいくつかポーズを決め、二階堂先輩は頷いてプリクラ機にお金を投入。それからはプリクラ機から聞こえる指示音声に従い、ポーズをとって撮影。

 撮影が終了したあとのお絵描きでは、二階堂先輩が珍しくテンパっていた。

「こ、これはどうすればいいのだ ︎ 助けてくれ少年!」
「先輩。オレも本当は初プリなので、あんまり頼らないで下さい!」

 お絵描きエリアは狭く、二階堂先輩の肩がオレに触れていた。何やらシャンプーのいい匂いもするし……おおう、なんか気恥ずかしい。

 そうしてようやくお絵描きを終え、出来上がったプリクラは……まあ、オレらしい平々凡々なものになった。どちらも初プリということで緊張し、笑顔が引きつっている。あんまり見栄えが良いものとは言えない。

「むふふ……初プリ、良いものだな?」
「……まあ、そっすね」

 二階堂先輩が嬉しそうにしているので、良しとしよう。とりあえず、寮に戻ったら二階堂先輩のこの見えそうで見えないタートルネックの谷間だけ切り取って、我が家の家宝にしようと……オレは大事に財布の中へしまい込んだ。

 丁度その時、オレと二階堂先輩がプリクラ機のエリアから出ようとしたところであんまり会いたくない人物に出くわしてしまった。

「……あ、ヤリ太郎」
「……あ、ギャル子」

 オレとそいつ――ギャルズ頭領のギャル子は、ばったり出くわした開口ひとこと目に、ほぼ全く同時にそう言った。そして、直ぐにお互い切り返す。

「は?ギャル子とか誰だし」
「は?そっちこそヤリ太郎って誰のことだよ」

 オレとギャル子が睨み合う中、現状に付いていけない二階堂先輩が小首を傾げ、オレの袖を引っ張って訊ねてきた。

「彼女は?」
「あぁ、同じクラスの……ギャル子です」
「ギャル子じゃないし! 六実むつみよ! 六実むつみ凛化りんか! 人の名前くらい覚えろヤリ太郎!」
「人のこと言えねぇだろギャル子!」

 こ、この女マジでムカつく……オレがそう思っていると、ギャル子は二階堂先輩を見て、鼻で笑ってきた。

「女連れかよ……きっしょ。ヤリ太郎なんかに騙されちゃってカワイソ」
「うるせぇ……」
「あーはいはい、もうあんたに付き合ってる時間がムダ。じゃあね」
「へいへい」

 ギャル子はそう言って、どこへやら向かって歩いていく。二階堂先輩はその後ろ姿を見ながら、何やら神妙な面持ちをしていた。というか、あいつ二階堂先輩って気が付いてなかったな……。

「あの女子……もしや?」
「ん? どうしたんですか?」
「む……いや、なんでもない」
「……? そうですか。じゃあ、オレらも行きますか」
「うむ」

 それからオレと二階堂先輩は、色々なところを回った。




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