rowdy(仮名)

錫メッキ

1-6(魔女)






タニアを死の直前まで追い詰め、更に追い打ちをかけてそのまま放置したルーカスは、
剥き身の釘バットを引きずりながら打ち抜かれた壁をズンズンと進み、
大きな礼拝堂に行き着いた。


「おぉ!」


礼拝堂は奥行き50m、横幅は20m程だろうか、かなり広い空間を頑丈な石レンガで作り上げた堅牢な作りになっていて、
石造りの演説台の後ろには

壁に張り付けられた巨大なラテン十字架と、

割れて枠組みだけが残ったステンドガラスだったものが床に散乱していた。 


ルーカスは巨大な十字架に近づこうと
足を向け、


ーガチャリ


左側のドアが開き、身体ごと振り返って相手を確認する。
ガガガッと釘バットが音を立てた。


「遅かったね!どうだった?」


ヘンリーは煙草を取り出した。


「彼女は死んで幼馴染と会う方を選んだ。」


「そっかー、死よりも愛を選んだんだね、…僕には選べない選択だから、
少しだけ彼女が羨ましいかな」


そう言ってルーカスは悲しそうに微笑んだ。


「…お前も好きなように選べばいい。」


ヘンリーはルーカスの真横に並ぶと巨大な十字架を見上げ煙草を吸った。

ルーカスは振り返らずに答える。


「…僕は必ず愛よりも信仰を取るよ。」


「…そうか。」


ヘンリーは紫煙を吐きながら巨大な十字架の後ろにある扉へ近付く。


「ルーカス、そっちは任せるぞ。」


扉を開けた。


「任せてー」


ヘンリーは返事を聞くと同時に扉をくぐると、ルーカスを見る事なく閉めた。


「あらぁ…?私の相手は君だけぇー?残念、
お姉さん、久々に若い男の子とたーくさん、遊べると思ったのにぃ…
1人だけじゃ楽しめないわぁ?」


ルーカスの目の前。
3mほど離れた場所に、
ワイン色の肌にぴっちり張り付くようなスレンダードレスを身に纏った妖艶な美女が立っていた。


「いや、お姉さんって年じゃないでしょ。
年齢考えなよね、オバサ…」


瞬間、呆れたように言葉を返すルーカスが、巨大な十字架に吹っ飛んだ。


―ドォォン!


ルーカスがぶつかった十字架は、
ラテン十字がギリシャ十字に変わってしまい、
ルーカスも瓦礫と一緒に演説台裏に崩れ落ちる。埃が舞った。


「人をおばさん呼ばわりするなんて、失礼な糞ガキね。
お姉さんが教育してあげるわ…!」


ルーカスをふっ飛ばした美女、
カーラ・モリーニが怒りながら喋り終えた瞬間、
後方斜め上に釘バットで殴り飛ばされ、
一部の天井のヒビが入る。


―ガシャァン!ドシャ!


「…人が喋ってるときに殴るなんて、
酷いことするね、オバサン。
今のでおあいこだね!」


左腕をぶらつかせながらルーカスが、床に倒れているカーラを見る。


「…っこの、糞ガキィ!」


カーラが両手で襲い掛かり、それを右手に持った釘バットで受け止める。


―ビシッ!


床にヒビが入る。
と同時に両手を勢い良く払い飛ばし、
そのままくるりと周り勢いを持ってカーラの左頬を殴り飛ばした。


「糞ババアには言われたくないかな。」






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今日はちょっと短めでした!




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