貴方を知りたい//BoysLove

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#2 景色


3年生になって1週間が経つ。
クラス内でも大分安定感が感じられるようになってきた。1人自己紹介の時以来問題発言のせいでハブられている女子がいるようだが、それは俺には関係ない。

しかしいつもの場所で過ごした1週間は、〝いつも〟の様には落ち着かなかった。もちろんあの教師...櫻宮さくらみやの影響だ。ずっとまた不意に扉が開くのではないか、という微妙な緊張を抱えていた。

そして今日もいつもの場所へ向かう。
途中何人かの女子生徒とすれ違う度、
「櫻宮先生ってハーフらしいよ、もう私それだけで惚れちゃいそう。」「あれ、クォーターじゃなかったっけ?とにかく綺麗な人だよね、あの声 忘れられない!」
とかいう会話が耳に入ってくる。今櫻宮はかなり女子人気がある教師になっているらしい。確かに金髪の物珍しさはあるが、俺にはいまいち理解できない。

「ふぅ...今日は少し窓を開けておくか。」
いつもの場所に着いてから窓を開けると、爽やかな春の風がこの部屋を包み込んだ。
桜の花びらがチラチラと部屋へ舞い込むのを眺めながら体制を横にした瞬間、春風に誘われたかのように櫻宮が現れた。

「お、やっぱりいた。」
櫻宮はいかにも嬉しそうに、にんまりと微笑んだ。

「どうしたんですか、また脅迫ごっこがしたくなったとか?」

「キツいね、私は君と話したくなったから来ただけだというのに。」
そう言いながら風にたなびく金髪をかきあげ、俺の隣に腰掛ける。...やはり俳優と言われたら疑い無くそう思えるような容姿が間近にいると、男ながら僅かな緊張感を覚える。真っ黒な髪と瞳と平凡な顔つきの俺にとっては、羨ましくも思う。

「そういえば先生、最近女子生徒に人気...って、なんですか急に。」
櫻宮は俺の両手を持って指1本1本を優しく撫でた。
...擽ったい。

「ああ、確かに女子生徒は騒いでいるな。そんな事より君、いい手をしているね。大きくてしっかりしている。私なんかよりピアノに向いている手をしているよ。」

「そんな事言われたのは初めてです。ピアノは駄目だ、ドレミもわからないし。」
すると櫻宮は俺に向かってクスリと笑い、窓辺に立った。

「...ねぇ君はさ...」

「?」

「ラヴェルは好き?」
その問いに、俺は困惑した。すごく困ってしまった。
そもそも知らない〝単語?〟なのだが...どういう事か、とても答えたいと思うのだ。ここで「大好きです」と言えれば、もっと彼に近づける予感がしたから...って、俺は一体何を考えているんだろう。

「あ...えっと...」

「ふふ、困った?可愛い所もあるんだね、君。」
それから俺は熱い顔を恥じつつ、舞い込む桜と音楽用語を口ずさむ櫻宮を眺める事しか出来なかった。




帰宅後。
俺は久しぶりにペンを持ち、スケッチブックを開いた。
ゆっくりと思い出して、手を動かす。

多分、今日眺めていた景色を忘れたくなかったんだと思う。

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