ドラゴンテイマーにジョブチェンジしたら転生してた件

流し肉うどん

順調な進行

 ダンジョンの土壁に埋まっていた照明代わりの結晶も少なくなってきた。
 照明の辺りは明るくてよく見えるが、離れるにつれて見えにくくなる。
 僕達は、そんな薄暗い通路を警戒しながら進む。

 僕は手に持っているカンテラの魔道具で辺りを照らす。

 弓持ちゴブリン達との遭遇から、まだ魔物とは遭遇していない。
 しばらく歩いたとは思うが、ここまで魔物が出てこないとなると、どこかで固まってそうで少し不安になる。
 某ダンジョンゲームみたいにモンスターハウスだ!
 ……とならないことを祈るよ。

「あっ、分かれ道ですね」

 前方からリュークの声が聞こえてきた。
 左と右と真ん中の3つに分かれているようだ。

「うーん。どっちに進むべきか……」

 こういうのはどれかの道の先に宝箱があったりするんだけどな……
 僕は悩んだ結果、声を出したリュークの方へと進むことに決めた。
 前衛は右がリュークで、左がリューネだ。

「右にしよう」

 そうして僕達は右の道へと進む。
 しばらく歩くも代り映えのしない通路が続く。
 そんな時、1体のゴブリンが見えた。

「ギャギャ!?」

 僕達の明かりに気付いたゴブリンは、すぐさま奥の曲がり角を曲がって引っ込んだ。
 その方向からは、ゴブリンの声が重なって聞こえてくる。
 声の数からして、少なくとも3体はいると思われる。

「みんな、ゴブリンだ。数は少なくとも3体はいる思う。向こうからこちらにくるまでは警戒して待機だ」

「了解です!」

「わ、わかりました!」

 前衛の2人は、僕の指示に返事をした後に武器を構える。

 待ち伏せされている可能性もあるし、ここは逆にこっちが待ち伏せしていこう。
 追いかけて曲がり角を曲がったら、複数の矢が飛んでくるとかは勘弁してもらいたいしね……

 さっき僕達が見たゴブリンは、剣のみを持っていた。
 おそらく、ゴブリンファイターだろう。

 『スカイ・アース・ファンタジア』の知識だが、ゴブリンは持っている武器で何のゴブリンかを判別することができた。
 剣のみを持っていたら、ゴブリンファイター。
 弓と矢を持っていたら、ゴブリンアーチャー。
 杖のみを持っていたら、ゴブリンメイジ。
 剣と兜を持っていたら、ゴブリンリーダー。
 これまでのゴブリンの肌の色は緑だが、肌の色が青とか灰色に変わると上位のゴブリンとなる。

 そんなことを考えていると僕達の前から足音が聞こえてくる。
 曲がり角から出てきたゴブリンの数は5体。
 ゴブリンファイターが4体とゴブリンリーダーが1体だ。
 そいつらは、僕達を見ると剣を振り上げて駆け寄ってくる。

「くるぞ!」

 さすがに前衛の2人で5体を相手にするのは厳し過ぎる。
 僕はロープで1番前のゴブリンファイターを打ちつけた。
 その後も別のゴブリンファイターを攻撃する。

「うおぉぉぉッ!」

 そんな中、リュークが叫び声をあげて強引に大剣を横に薙いだ。
 ひるんでいた先頭のゴブリンとその少し後ろにいたゴブリンを力任せに切り倒す。

 だが、残りのゴブリンの数は3体。
 大剣を振り切ったリュークへとゴブリン達が群がる。

「やらせません!」

 そのゴブリン達に向かって、盾を構えたリューネが突進する。
 今まさに剣を振り下ろそうとしていたゴブリン達は、踏ん張ることもできずに吹っ飛んでいく。

「今だ! 突っ込め!」

 僕達は3体のゴブリン達に突っ込んでいく。
 リュークは大剣で、リューネは槍で、ゴブリンファイターへと向かった。

 僕はロープから槍に持ち替えて、ゴブリンリーダーへと突きを放つ。
 ゴブリンリーダーは剣を振ろうとするも、それよりも先に僕の槍がゴブリンリーダーの胸を貫いた。

「ギャ、ギャ……」

 ゴブリンリーダーは、その声を残して消滅した。
 他のゴブリン達も倒しきったようだ。
 辺りに他の魔物がいる様子もない。

「ルシエル君、ゴブリン達の魔石です」

 リューネが魔石を拾い集めてくれたようだ
 リュークも念のため辺りを警戒してくれている。

「ありがとうリューネ」

「いえいえ」

 さて、どうするか。
 今日は成果もあったし、このまま引き返してもいいのかもしれない。
 リュークとリューネは、まだまだ元気とやる気が有り余っているように見える。
 僕もまだまだいけるし進んでもいいとは思うけど……

 僕はチラッとリーチェを見る。
 僕に気付いたリーチェは、こちらを見てふっと笑った。

「このまま進んでもいいと思うわよ? 客観的に見てもゴブリン達を圧倒出来ているし。……だからといって、油断はしないようにね?」

「わかった。じゃあ、今日は行けるところまで行こうか!」

 リーチェのお墨付きももらえた僕達は、さらに奥へと進む。

 僕達はまだまだ頑張れるぞ。

▽▽▽

 あれから、いくつかの分かれ道を進み、遭遇したゴブリン部隊を倒した。
 遭遇したゴブリン達の中には、必ずゴブリンリーダーが存在して、他のファイターとアーチャーを率いているようだった。
 複数体で出てくるのは厄介だったが、なんとかここまで進むことができた。

 そして、僕達は広い部屋へとたどり着いていた。
 この部屋は照明となる結晶が多く、非常に明るい部屋となっている。
 僕達以外にも結構な数の冒険者達がいた。

 大体20人ぐらいかな?
 3人から5人ほどで固まっているのは、おそらくパーティなのだろう。
 パーティで数えると、5パーティほどだ。
 テントを張って休んだり、寝袋で寝てたり、ご飯を作って食べたりしている。

「リーダー、たぶんここは休憩部屋ですね。各階層の中間地点にあるらしいというのを聞いたことがあります。休憩部屋では魔物が出ないんです」

「そうなんだ。……これ、他の冒険者に挨拶とかしたほうがいいのかな?」

 冒険者同士の付き合いとかあったりするんだろうか?
 攻略情報の共有やアイテムの交換とか……

 僕がそう問いかけると、リュークは思い出すように上を向く。

「うーん。そう言うのはほとんどないと思いますよ? 基本的には互いに不干渉であるべしっていうのを聞きました。なんでも、そう言って近付いてくる盗賊もいたらしいですから」

 魔物は出なくても盗賊と化した冒険者には気を付けないと……か。
 さすがにこの人数が全て盗賊ってことはないと思うけど、警戒するの越したことはないな。

「なるほどね。……それじゃあ、少しここで休んでから先に進もうか」

 僕達は地面に座って疲れを癒す。
 そこで、僕は今日の戦闘のことを思い返してみる。

 リュークとリューネのことだけど、戦いの中で急に武器の扱いが上手くなってた気がしたな。
 もしかしたら、スキル覚えたのかな?
 ちょっと聞いてみよう。

「リューク、リューネ、今日の動きは今までで一番良かったよ! もしかしたらスキルを取れたんじゃないのかな?」

「そうね。良かったと思うわ。特訓でボロボロになるまで頑張った甲斐があったわね」

 僕がそう褒めると、リーチェも乗っかってきた。

 ははは……
 さっきの戦いぶりを振り返ると、あの地獄の特訓をやれて良かったと思えるよ。
 リーチェには感謝だね。

 リュークとリューネは照れた様子で、ステータスを確認する。
 2人とも照れた表情から一転して歓喜の声をあげた。

「リ、リーダー、リーチェさん! やりました! 大剣のスキルを取れました!」

「ルシエル君! リーチェさん! 私も槍のスキルが取れました!」

 2人はそう言って喜んでいる。
 リュークがレベル13で、リューネがレベル12になったらしい。

 やはり、戦いの中で成長していたか……
 めでたくていいことだし、とりあえず祝っておこう。

「2人ともやったね!」

「おめでとう」

「「はい!」」

 あ、アステルも成長しているか見ておこう。
 メニュー! テイムモンスター!

テイムモンスター 2/28

リーチェ
レベル:100
種族:フェアリープリンセス

アステル
レベル:4
種族:フェアリーリザードベビー

 おお! レベルが3も上がっているぞ!
 アステルは寝てるだけだったけど……
 でも、やっぱりテイムモンスターにも経験値が分配されるようだね。
 戦闘ができるわけじゃないから、戦闘訓練も積ませないといけないけど。

 ちなみに僕のレベルは上がっていなかった。
 ちょっと残念だ。

「僕のレベルは上がってなかったけど、アステルのレベルが3も上がってたよ!」

「寝てるだけだったけど、結構上がったわね」

「まさかの成長ですね」

「寝てる姿も可愛いです……」

 そんな感じで僕達は雑談しながら体を休めた。
 戦闘を振り返ったり、装備のチェックしたりと攻略の準備も進めておく。

 今日で第1階層を踏破できたらいいなぁ……

「ドラゴンテイマーにジョブチェンジしたら転生してた件」を読んでいる人はこの作品も読んでいます

「ファンタジー」の人気作品

コメント

コメントを書く