私はもう忘れない

林檎

女の子と私の想い

「?!...」
  カズくんはびっくりしたのか目を開いて硬直している。
「な...何者って...」
「だって...なんか...こっち(私達の置かれた)の状況についてやこの世界のこと、すごく詳しいから...どうしてかなって思って...」
「...それを聞いてどうするんだ?」
「え...?」
  カズくんは少し困ったような...それとも怒っているようなそんな表情をしているように葵は見えた。
「そんなことより、ここから離れた方がいいだろう。もう少しでここのヤツらが活発に動く時間だ」
「ここの奴らって...」
  質問しようと思ったら、いきなり体が重くなった。
「なっ...」
  と、同時に体が浮いた。
「ここから離れるぞ!!」
  カズくんが葵を抱えながら走った。
「な...何だったの?今の?」
「おまえは...こんな時でも冷静なんだな...」
「冷静では...ないよ...すごく動揺してる」
「どこがだよ!」
  葵の体は今は大分は軽くなったように感じる。
  それと同時に葵は疑問を覚えた。
(そういえば、なんでカズくんは走れたのかな...) 
  葵は立ち上がるのでさえ多分無理だったと思う...
(また...聞いたら怒られるかな...)
「おい!聞いてんのか?!」
「え?...あ...ごめん...聞いてなかった。」
「はぁ?!?!しっかりしろよ!!もしかして、あいつらの気にやられたのか!」
「気?」
(気ってなんだろう...私は、あなたの事考えてぼぉ〜っとしてただけだけど...)
  と、考えているといつもの神社にたどり着いてた。
「はぁ〜...も...もう1歩も...うご...うご...け...ねぇ〜...」
「ありがとう」
  カズくんは本当に1歩も動けなさそうに、壁に寄りかかり息を整えていた。
「くそ...だから......嫌だったんだ...あそこに...いるのは...」
  そんな事言っても、最後まで一緒にいてくれたんだからやっぱり優しいなと葵は思った。
  葵は、カズくんの優しさに少し心配になった。
(大丈夫かな...)
「お前...なんて顔...してんだ?」
「え?...どんな顔してた?」
「...変な顔...」
「どんな顔よ...」
(失礼な人...いや、幽霊か...)
「あ...そう言えば...」
「あんだよ...」
「さっきのは何?なんか、重たいものが体にズシッと来たんだけど...」
  重たいものが体の上からいきなり降ってきたみたいな感じだった。でも、重たいだけじゃない、金縛りにあったように体が言う事を聞いてくれなかった。
「それは、多分あの子供の『感情』が俺らに刺さったからだろうな」
(刺さった...)
「あの子供は多分、ずっと前に死んだ。だが、それに気づかないでずっと親が来るのを待っている。来るはずのねぇー迎えをな...」
「...そう...」
  葵は、カズくんが何故か悲しい顔をしたような...そんな気がした。
「でも、そしたらあの子が可哀想だよ...」
  ずっと、一人であの公園で待ってるのは辛い事だと葵は思った。
「んな事言ったって、俺達にはどうすることも出来ねぇーよ。今回だって、逃げるので精一杯だっただろーが」
  確かに、葵達は今回何も出来ずにただ逃げるだけだった。
  葵に関しては動くことも出来ないくらいだった。
「でも...」
  葵はあの子を助けてあげたいと強く心に思った。
  無意識のうちに握りこぶしに力が入っていた。
「なら、勝手にしろ。付き合いきれるか。俺は早く自分の体に戻りたいんでね。」
  やっぱりそうだよなと葵は小さくため息をついた。
「カズくんが手伝ってくれないと、私は何もできないよ...」
「なら、何もするな。おまえは自分の体に戻る方法だけ考えてろ。」
  (そんな!)
  葵は、衝動のままカズくんの方に体を向けた。
「カズくんはあの子をほっておくの?あの子は、一人で頑張って待ってるのに...見捨てるの?」
「じゃ〜、俺たちに何が出来るって言うんだよ」
  体を起こし葵の方に顔を向けたカズくんの顔はすごく怒っていて、同時に悲しそうな顔をしていた。
「俺には、幽霊を除霊する力なんてねぇーんだよ。何も出来ねぇーんだよ!!なんもできねぇー約立たずが変なことに首突っ込んだってどうにもならねぇー!!もしかしたらもっと、ひでぇー事になっちまう可能性だってあんだよ!!」
  今までにないほどの大きな声が頭に血が上った葵の頭の中にまで響いた。
「ご...ごめんなさい...」
  葵は謝ることしか出来なかった。
  カズくんは、葵の顔を見るのと同時に焦った顔をしていた。
  冷や汗が滲み出ていて開いた口が塞がらない状態だった。
  「ちっ...」
  カズくんは舌打ちをしながら顔を葵から背け離れたところに座った。
  葵は、カズくんの声がまだ頭の中でフラッシュバックしていた。
  (あんなカズくん初めて見た...私は...なんてことを言ってしまったんだろう...)
  今じゃもう、葵は先程まで自分の言っていた言葉が思い出せないでいた。あまりにショックで動けないでいると、いきなり遠くから声がした。
「とりあえず...今は何も考えないで、寝ろ」
  葵は、顔だけをカズくんの方に向けた。カズくんは壁に寄りかかりながら顔をしたに向け座っていた。
  「......うん」
  葵は頷いたあと、座りながら壁に寄りかかり寝ようと思いそのまま目を閉じた。

ーーー。
  葵は、自分の体が宙に浮いているような感覚があった。
(なんだろう...この感じは...)
  と、考えていたら耳に誰かの声が届いたのと同時に目の前にはいつもの公園が映し出されていた。
(こう...えん...?なんで?私は、神社で寝ていたのに...)
  葵は周りを見渡した。
  公園では小さな子供たちが遊戯で遊んでいる。みんな、すごく楽しそうに笑っていた。
  その子供の中には、今日みた子供もいた。
(あの子...今日夜遅くまでいた子だ...)
  葵は、今日の出来事を思い出してみた心にズキっと痛みを感じだ。
(私は...何もして挙げられない...約立たずだ...)
  葵が自分を責めていると耳に小さな女の子の声と優しそうな柔らかい感じの声が聞こえた。
「ママ!見てみて!」
「ん?どうしたの」
  葵が顔を上げると、砂浜で女の子と大人の女の人が話していた。
  「見てみて!じゃーん!!お団子です!!」
  女の子は、大きな泥団子を両手で持ち優しそうな女の人の方へ出していた。多分、その人はお母さんだろうと葵は思った。
  お母さんの方は優しい笑顔で女の子の手を握った。
「こんなに大きいお団子さんを作れるなんて椿は凄いね」
「えへへ。もっともっと作るの!!」
  椿と呼ばれた女の子は、泥団子したに置き砂浜を走りに回った。そして、両手を左右に大きく広げて女の子は言った。
「椿が大きくなったらお菓子屋さんを作るの!!そして!ママの大好きなお団子さんをいっぱいいっぱい作ってママを嬉しくするの!!」
  女の子は、お母さんの方へと歩いていった。
「だから、ママは休んでていいよ!」
  女の子は、満面の笑みでお母さんに言っていた。
  お母さんの方は少し驚いた顔をしたが、そのあとに優しい笑みで女の子を抱いた。
「ありがとう...楽しみにしてるよ」
「うん!!」
  二人はそのまま公園の外に出ていった。
  葵が少しあの二人が気になりついて行こうと歩き出したら、いきなり目の前が光出した。
「な...何...?」
  光が少しづつ弱くなっていき葵が目を開けたらそこは公園ではなく、部屋の中だった。
  少し古そうなお部屋。その中心にはテーブルがありそれを囲うように家族3人が座っていた。
  楽しそうに話をしている。
「今日!公園でお団子作ったの!!」
「そうかそうか上手にできたか?」
「うん!!出来たよ!」
「それはいい事だなぁ〜」
  みんな、笑ってすごく楽しそうだ。葵は三人から目が離せなくずっと見ていた。
「椿ね!!みんながずーーと笑ってくれるようにお菓子作るの!!大きくなったらお菓子屋さんを作るの!!」
「お〜!そうかそうか!それは楽しみだな」
「え〜、本当ね」
「えへへ」
  葵には自然に笑みが現れた。
  そしてまた、先ほどと同じ光が目の前に現れ葵はまた目をつぶった。
  そして、目を開けた時にはお馴染みの公園の風景が目の前に現れた。
  だが、今回は少し違っていた。
  女の子の親がどこにも居ないのだ。
  葵が周りを見てみてもいるようには見えない。でも、女の子はいつものように砂場で遊んでいる。
(なんで、お母さんが今回居ないんだろう)
  葵は、不安になりながらも女の子を見ていた。
  女の子は砂場で砂団子をたくさん作っていた。そして、砂場遊びに飽きたのか、近くにおいてあったボールであそび始めた。
  砂場から出て、ボールを上にあげたり滑り台から転がしたりと楽しそうに遊んでいる。すると、ボールは公園の外に出そうになってしまっていた。
  女の子はそのボールを追いかけて公園の外に出ようとしていたの見えて、葵は咄嗟に女の子を追いかけた。
  車通りが多いこの公園は外に出てしまうと危険がある。
  女の子は車に気づいてないのかそのまま外に出ようとしていた。
  葵は手を伸ばし「待って!」と叫びながら女の子を掴もうとした。
 当然掴めなかったが、ボールが公園の外に出る前に石に引っかかり止まった。
  女の子は外に出ないで助かった。
「はぁ〜...良かった...」
  葵はいつの間にか体が強ばっていたらしく、安心した途端その場に崩れ落ちるように座った。
  女の子は公園の中に戻ろうと顔を上げたら道路を挟んだ先にお母さんの姿があった。
  お母さんの方も自分の子に気づいたらしく笑顔で手を振っていた。その手には買い物袋がぶら下がっていた。どうやら、お買い物をしていたようだ。
  葵もつられて笑いがこみ上げてきた。だが、道路にはまだ車が行き来しているにも関わらず、女の子はお母さんの方へと走ってしまっていた。
  お母さんは切羽詰まった顔で手を前に出し制止使用としていた。
「椿!!動かないで!!」
  だが、その言葉と行動は女の子には届かなかった。そのまま女の子は道路に出てしまい運悪く女の子の隣には大型トラックが迫ってきていた。
  それと同時にトラックはクラクションを鳴らし急ブレーキをかけたが間に合わなかった。
ーーードンっ
  鈍い音が葵の耳に入った。
  道路の方に顔を向けていた葵は、咄嗟のことで動くことが出来なかった。
  目の前には、道路の上で女の子がお母さんに抱き抱えられながら眠っているように見えた。体のあちこちから血を流しながらーー
  お母さんの方は、涙を流しながら何度も「椿!椿!!」と名前を呼んでいた。
  葵は動くことが出来なく、その場でその光景を眺めていた。すると後ろから小さい女の子の声が聞こえた。
「お姉ちゃん」
  葵は声が聞こえた方にゆっくりと顔だけを向けた。そこには、先程道路に出てしまった女の子。椿ちゃんが立って葵に話しかけていた。
「お姉ちゃん...椿の事分かるの?」
  葵は何が起こっているのか分からなく頷くことした出来なかった。
「助けて...お母さんを...助けて」
  椿ちゃんは葵に向かって何がながら言った。
「椿...お母さんを...笑顔...大好き...でも、お母さん...笑って...くれなくなっちゃった...」
  手で目を擦りながら必死に伝えようもしている。
「椿が...約束...破っちゃった...だから...お母さん...笑ってくれなく...なっちゃった...椿の...せいで...お母さん」
  とうとう、大泣きしてしまった。
  葵は立ち上がり椿ちゃんの前にしゃがんで涙を拭いてあげた。
(確かカズくんは、自分の死に気づかないで公園で待っているって言ってたけど、そうじゃない。多分椿ちゃんは自分の死には気づいていたんだ。そして、自分のせいでお母さんが辛い思いしてるって思って..ずっと公園で待ってたんだ...自分のに出来ることがないか...いつもの公園で...)
  そう考えていると、やっぱり自分はこの子をほっておくことは出来ないと葵は思った。
「大丈夫。私がなんとかしてあげる」
「ほんと?」
  「うん。だから、もう泣かないで。椿ちゃんが泣いていたらお母さんも笑えないよ?」
「...うん!椿...もう泣かない!」
  椿ちゃんは頑張って笑ってくれた。
  「椿ちゃんの願いはお母さんの笑顔をもう一回見ることなんだよね?」
「うん」
  葵は少し考えたあと、いいことを思いついた。
「なら、椿ちゃんの協力も必要なの。お願いしていい?」
「うん!椿、何でもやるよ!」
「ありがとう、ならまずお母さんがいる所を教えて?」
  椿ちゃんは少し考えているみたいだった。そして、口を開いた。
「お姉ちゃん、また公園に来てくれる?」
(公園に...?)
「来てくれたら、その時に教えられる!今は...椿...教えられない...」
  椿ちゃんは下を向いて申し訳なさそうな顔をしていた。
「わかった。また行くね」
  椿ちゃんは満面な笑顔で頷いてくれた。
  するとまた、周りが光出して目を開けておくことが出来なかった。目を閉じた時、椿ちゃんが大きな声で何かを言ってるのが聞こえた。葵は何か大事なことを言ってるような気がしたが体が浮いた感じがあり、考えられなかった。すると、いきなり声が聞こえた。
「......い...あお.....葵!」
  葵は、その声で目を開けた。
  目の前には心配そうに葵のことを見ているカズくんの顔があった。
  葵は驚きすぎて頭突きをしてしまった。
  二人は、頭を抱えて悶えた。
「〜〜っ。何しやがんだ!せっかく起こしてやったってぇーのに!!」
  カズくんが怒りながら葵に向かって怒鳴った。
「ご...ごめんなさい...いきなりで驚いてしまって...」
  自分の頭を撫でながら葵は謝った。
「...まぁ〜...いいけどよ...いつつ...」
  カズくんは頭をさすりながら座り直した。
「んで、お前はどんな夢を見てたんだ?」
「え...?」
  葵も座り直そうと思って動いていたらカズくんから思いがけない質問が飛んできて動きが止まってしまった。
「な...なんの夢って...」
「おまえ...何か隠そうとしてるだろ?」
ーードキ
  心臓が高鳴り、今にも口から出そうな感じになった。
「そ...そんなこと...ない...よ」
  葵はカズくんから目をそらし答えた。これは嘘ついてるって言っているような仕草だと葵自身分かったが、もう手遅れであった。
  カズくんは葵のことを「じ〜」と怪しんだ目で見ている。
  葵は目をそらしたまま黙っていた。
(...昨日の今日だし...夢のことは言わない方がいいと思う...また、喧嘩になったら嫌だしな...)
  と葵が頭の中でモヤモヤ考えていると不意にカズくんが口を開いた。
「おまえ、昨日のことを考えてんだろ」
ーーっ。
「図星...なんだな...」
  カズくんの声色は怒っているでもない、かと言って悲しいとか嬉しいとかでもない。よく分からない感情が言葉の中に含んでいる。
  葵はカズくんがどのような表情をしているのか気になり、目線だけをカズくんの方へと向けた。だが、カズくんは頭りしたに下げており顔を確認することができなかった。
「おまえ」
「...はい」
  いつもより低い声だった。葵は返事をし次の言葉を待った。
  すると、カズくんは顔を上げ葵の目を見て話した。
「自分の命と昨日の女の子の魂。どっちが大事だ?」
  「...え...?」
  予想外の言葉に葵は一瞬、動きが止まってしまった。

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