支配してもいいですか?

taxi

勇者side 異世界召喚










 「ようこそ勇者様! 我がフォールズ王国へ」


 私は夢を見ているのだろうか? 
 目の前には桃色のドレスを着て佇む可憐な少女の姿。その背後にはメイド服を着た女性2人が侍るように立っている。また、可憐な少女を守るように騎士のような人達もいるのだ。
 これが夢で無かったら、それこそ信じがたい。

 それに私の足下には大きな模様が描かれていて青色に発光している。


 はっ、そうだった! 確か、私は突然眩い光に飲み込まれてそれで……。あれ? そのあとどうなったの?


 やばい、頭が混乱してきた。ホントに何でこうなったの? 

 私は唐突の出来事に頭がついていかず、現状を把握するのもままならない。
 すると、それを見かねたのか先程発言した少女が自己紹介を兼ねて、現状を説明し始めた。


 「申し訳ございません。いきなりそんな事言われても分かりませんよね? わたくしとした事が早とちりしてしまいました。では、まず自己紹介からさせていただきますね。わたくしの名前はリリシア・フォールズ、このフォールズ王国の第2王女でございます」

 「「「お、王女 ︎」」」

 たしかに上品な雰囲気を醸し出していたけど、王女様だったなんて! 
 私達3人は驚きのあまり大声を出してしまう。ん? 3人? 疑問に思い隣を見ると私と一緒に光の渦に飲まれた義兄さんと舞の姿があった。

 ああ、良かった〜。2人とも居たんだ! 

 さっきまで思考が停止してたから、気付くのが遅れてしまった。少し後ろめたいけど、最初から気付いてましたよ、とばかりに2人に微笑む。

 多分、今の私の笑みは引きつっていることだろう。し、仕方ないよね? だって、あり得ない出来事が起きたんだもの。少しの間、友人や家族の事が頭からすっぽ抜けても。

 「……美月、私達の事忘れてたでしょ?」

 ギクッ

 「いや、忘れてないよ! ほ、ホントダヨ!」

 やはり、私の笑みが引きつっていたのだろう。目を合わせた瞬間にバレてしまった。しかし、ここで認めて仕舞えばわざわざ嘘をついた意味がなくなってしまう。
 だから私は最初の意見を貫く! 初志貫徹、少しの間これが私の座右の銘だ!

 「いやいや、美月。セリフ棒読みだし、顔にバレたって書いてあるよ」

 ギクッ

 「光輝さん、そんなわけナイジャナイデスカ!」

 うう〜、義兄光輝さんにもバレてるよ〜。でも、私は私を曲げないぞ!

 私が意固地になり、2人がギブアップするまで待つ。しばらくすると、2人は呆れたように息を吐く。その姿を見ると私はしたり顔で勝利した事を悟る。


 ふふふ、この私の忍耐力を軽く見たのがあなた達の敗因よ! あれ? そう言えば、何でこんな頑なになってたんだっけ? まぁいいや。

 ピロリン

 《我慢を取得しました》

 ん? 我慢を取得? どういう事だろう? まぁ、あとで王女様に聞けばいいかな。取り敢えず、今は王女様の話を聞いて現状の把握を優先しないと。


 「……それでは、話を続けますね? この世界《ヴァルハラ》では、主に人族ヒューマン獣人族ビースト森精種エルフ魔族アスラという4種族に分けられます。人族は……言わなくても分かるでしょうが、私達人間の事です。獣人族は頭の上に動物の耳がついている事以外、人族と容姿は変わらりません。しかし、身体能力が非常に高く、魔力適性や魔力の内包量が低い種族です。例外もありますが、大半はこの類を見ません。次に森精種は耳が長く、魔力適性や魔力の内包量が非常に高い種族です。また、森精種は全員が美形であり、自然を重んじ自然と共に生きる者たちです。次ですが……「ちょっと待ったぁぁ」……はい、何でしょうか? 勇者様」


 王女様の説明の途中で舞が声を上げ説明を妨げる。少し手が震えてるため緊張しているのだろう。
 そして、我が親友、舞よ! よくやってくれた! 正直言うと、私も王女様の説明が頭に入って来なかったのである。何故なら、そもそもの知識が欠けているのだ。
 魔法がどうのこうのと言われても、私達が住んでいた地球には魔法という力が無かった。そのため、それがどんなものか分からないのだ。


 「その、魔法適性とか魔力の内包量って何? ……ですか? あっ、その……私は成城せいじょう まいと言い……申します」


 プッ、舞ってば途中まで普通に疑問を呈してたけど、相手が王女様だと思って下手くそな敬語を使ってるよ。
 親友の戸惑う姿を見て、少し安心する。
 やはり、世界が変わっても舞は変わらないなぁ。

 そう感慨にふけっていると、王女様がクスリと上品な笑みを浮かべ舞の問いに答える。


 「ふふ、敬語でなくても良いですよ? まぁ、それは置いとくとして、勇者様方の世界には魔法が存在しないのですか? ならば、そこも説明せねばなりませんね。この世界には、魔法、それからスキルというものがあります。魔法とは私達に内包する魔力を用いて様々な現象を起こす力で、スキルとは様々な技術や能力を固定し己の意思で使用する事ができる力です」


 「つまり、魔法適性は魔法で起こす現象の適性、例えばその種族や人物が、火を出すという事象に適しているか否か、という事ですか? 魔力の内包量は、その事象を起こすため使用する魔力の量、例えるとすればお金ですかね? だってほら、お金は持っている分だけやりたい事が出来ますよね? 魔力もそれと同じで、多ければ多いほど大規模な魔法を起こす事が可能になるのではないですか? 」

 「はい、そうですね! そのようなものです。……えっ〜とーー」

 「ーーあっ、神原かんばら 光輝こうきと申します」

 あ、やっと義兄こうきさんが発言した。てか、この流れって私も自己紹介しなきゃいけないのかな? いや、別にいいんだけどさ、なんかタイミング見逃したなぁって感じが否めないんだよね。


 案の定、王女様は私にも名乗るように目配せをしてくる。それに合わせるようにこの場にいる全員の視線が私に集中し、もはや私が名乗る以外の道はなかった。
 ならば、私は優雅に清楚に自己紹介して見せましょう!


 「……では、私の番ですね? 初めまして王女リリシア、私は神原かんばら 美月みつきと申します。名の通りここにいる神原 光輝の義妹でございます。それと、僭越せんえつながら王女様、リリシアと名前でお呼びしてもよろしいでしょうか?」


 「ええ、もちろんですとも。でしたら、敬語ではなくタメ語でお話し出来たら嬉しいです」


 「分かりました。公衆の面前では敬語を用いますが、プライベートでは普通に会話させていただきますね!」


 「は、はい! こちらこそよろしくお願い致します!」


 見たか! 私のこの話術を! 私のカリスマ性をフルに活用すれば、王女様と対等に話す権利すら簡単に得る事が出来てしまう。
 まぁ、私の内面を見たらみんな失望すると思うけどね。


 私は内なる思考を停止し、周りの反応を確認する。リリシアは少し興奮気味なのか頰が赤く、その周りの侍女や騎士達は少し驚いているようだ。義兄あにと舞は普通にしている。


 まぁ、2人は普段見てたもんね。私の優等生ぶりを。


 「はっ、ああそうでした。そう言えば、説明の途中でしたね。今から続きを説明しますので悪しからず」


 そう言って、またリリシアはこの世界のことや私達、勇者の事について説明し始めた。




 そうそう、今更だけどこれは夢じゃないみたい。

 どうやら私達は異世界召喚されてしまったようです。

 非日常の出発点。私はこれからどうすれば良いのかな………………カムイ・・・お兄ちゃん。

 私の心の声は、青く澄んだ異世界の空へと儚く散っていく。その声音には、最愛の人にもう会えないというどこか切なさを、虚しさを孕んだものだった。









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