支配してもいいですか?

taxi

転生から10日後




 「おい! リンタそっちにゴブリンが行ったぞ!」

 「分かってますよ。だから僕に指示しないでください」

 口答えをしながらもリンタの拳がゴブリン目掛けて振り抜かれる。ゴブリンはたかが拳程度で重症は負わないと判断し、それを受け止めようと手を交差。しかし、リンタの拳はゴブリンの両手をへし折り、その勢いのままゴブリンの頭蓋骨を粉砕した。
 かなりグロテスクな感じになっているが、いつもの事なのでスルー。と言うより最早その光景を目の当たりにしても何も感じなくなってきてしまった。



 この世界に来てはや10日、未だにカレンとリンタと行動を共にしている。この10日で俺のレベルはそこまで上がりはしなかった。というのも、リンタやカレンのレベル上げをしていたのだ。
 どうもこの世界の冒険者の平均レベルが15〜20らしく、レベルを上げるのは大変な事なのだという。俺は2日で25まで上げれたが、それは《天才という化け物》という称号による効果があったからだ。

 なにそれ! 俺チート!! ……嬉しくはないが、むしろ困る。俺に力は要らない。

 ともあれ何故、いずれ別れる奴等のレベル上げを手伝っているのかだって? それは……あれだ! その、……そうそう! 一刻も早く別離するにはコイツらに強くなってもらって俺なんていらねぇとほざくくらいになって貰えば後腐れなくバイバイ出来るだろう?  そのため最近は、二人の前では力を抑制している。

 まぁ、つまりはそういう事だ。
 俺としては今すぐにでも離れてしまいたいのだが、なにぶんコイツらがまだ俺を必要としているからなぁ。
 今やもう、誰に言い訳しているのだか分からくなって来ているが、それは置いとくとしようか。

 そんな事を考えていると、ちょんちょんと肩を突かれ、そちらに振り向く。すると、不思議そうな顔をしたカレンがいた。

 「顎に手を当てて何をしてるの?」

 俺が長らく動かなかったためか、カレンは俺の事を心配してくれている様だ。リンタはチッと舌打ちしながら、まだ成長しきっていない、あどけないその顔立ちでカレンに忠告した。

 「カレンさん、そんな奴のことはほっといて街に帰りましょうよ!」

 まだ幼いからか、それともリンタの演技が上手いのか、その言葉は全く嫌味に聞こえない。それどころか見る人が見れば少し我儘を言う可愛い弟の様にも見える。

 俺にとっては憎たらしいことこの上ないが。

 そんな嘘つきブラザーリンタに騙され、カレンは少し思案してしまう。それを、見て俺はある事に気づく。

 ん? 待てよ、リンタがやっていることは俺にとって良いことじゃないか? 確かに寝ている時に顔に落書きされたり、露骨に反抗的な態度を取って来たりするが、奴はカレンに恋をし、そのライバルになりそうだから俺を排除しようとしているに過ぎない。
 つまり、リンタとカレンが結ばれるか、俺がリンタに騙されたカレンに拒絶やらをされればいいのである。さすれば、俺は晴れて独り身。この世界を満喫できると言うものだ。

 ん? 流石にあんなのでは騙されない? いーや、カレンさんを舐めちゃいけない。あの子直ぐ騙されるんだから……。

 俺はふふふふ、と怪しげな笑みを浮かべながらリンタに頑張れ、と心の中で応援する。俺の笑みから何かを感じたのか、リンタは少し身震いをした。

 あれ? これ俺の声漏れてないよね?









 「影刃シャドウエッジ


 深夜になり多くの人々が深い眠りにつく頃、俺は真っ暗闇で何も見えない森の中、魔法の練習をしていた。

 えっ? いきなりすぎじゃないかって? 仕方ないだろ! あの後は何事も無く普通にクエスト完了し、普通に昼食をとり、普通に宿で眠りについたのだから。いや、眠りについたフリなのだが。因みに宿の部屋は男女別々だからな?

 それはさて置き、魔法の練習は初日の夜から隠れてやっている。そもそも、俺が魔法を使える事を2人には話していない。成長補正の称号のおかげで今や、魔法を手に取るように操れるようになった。
 火魔法は兎に角イメージが重要で、術者の想像力によって威力や質が変わる。それ以外にも要因はあるが、そこまで重要ではなく、良く物語に出て来る魔法の詠唱などはほぼ意味が無い。
 闇魔法はまず『闇』という不明瞭なモノを感じ取る事から始める。俺は『影』を意識して使うが、それも術士次第ではないだろうか?
 固有魔法にはまだ手を出していないが、そろそろ出して良い頃だと思う。時空魔法にはそれなりに興味がある。

 ガサガサッ

 魔力を練っていると近くで何かの気配を感じた。俺はそのまま魔力を闇魔法で影に干渉し、俺を中心とした半径10メートルに動く影が無いかを探す。目を閉じ、意識を巡らせ、剣に手をかける。

 ビューゥ……

 暗く湿った森の風がそよぐ。

 ザザッ、

 「……捉えた!」

 俺は斜め後ろの草むらに向けて剣を振り抜く。瞬間、その草むらからツノの生えたウサギが飛び出して来る。
 剣が直撃する、と思ったら何とウサギが空中で体を捻らせ、寸前のところで剣を回避した。すぐさま剣の軌道を修正して、ウサギを追うがそれも一歩届かずにウサギは俺の間合いから外れ、着地した。ウサギは着地してから直ぐに俺から背を向けて逃走を開始する。

 流石の俺も森の中に逃げ込まれたら、コイツを仕留める事など出来ない。だが、俺と一度相対しておいて生かすのも癪だ。

 「……仕方ない。悪いな、俺と出会った運命を恨め……冥府の導きガイダンス・オブ・ネザーランド

 森が、影が、闇が、ユラユラと魑魅魍魎の如く蠢きだす。ウサギは足を止め、辺りを見渡すと脚を震わせ、その小さな体を縮こませる。

 そして、影から数えきれないほど無数の手がウサギ目掛けて伸びて来ると、ウサギを掴み影へと引きずりこんで行く。ウサギは悲痛な鳴き声を上げながら深く暗い影の底へと沈んでいった。


 やはり、20パーセントの力じゃ上手くいかないもんだな。あの程度の奴を仕留めるのに片手間で済ます事が出来ないというのだから。

 自分の今の実力を再確認していると、又しても周囲に気配を感じた。先程のウサギよりは大きいが、俊敏性や隠密性は無いようで、直ぐに正確な位置を察知出来た。
 次こそは一撃で仕留める、とばかりに剣で宙を二、三回切り剣の感度を確かめる。心地よい風切り音を聞くと、俺は獲物が出て来るのを待つ。

 ドスンッドスンッ

 来た! 

 ドスンッドスンッ

 まだだ! まだ、敵が確実に殺せる範囲内に来るまで構えを崩してはいけない。
 はやる気持ちを留めてゆっくりと呼吸を整える。

 ドスンッドスンッ

 まだ

 ドスンッドスンッ

 まだまだ

 ドスンッドスンッ

 「今だ!」

 軸足に目一杯力を込めて、地面を踏み抜き、全力で加速する。一瞬、音すらも置き去りにしたような感覚を覚えるが、気にせずその勢いのまま標的を切り裂く。

 ズバッーードゴッ

 ん? なんか変な音しなかった?

 違和感を感じたが確かに肉を断つ感覚があり、今回は仕留めた事を悟った。それは良いのだが……俺の通った道を振り向くと地面が抉れ、葉が散り、木々は折れ、もはや先程まで森だったとは思えないほどになっていた。

 は? えっ? ちょっと待って! ドユコト? 落ち着け〜俺。一旦落ち着くんだ。冷静になって考えてみよう。

 少なくとも今日の昼の時点ではこんな異常な力を持ってなかったはずだ。それが何故?

 【それは余が力を貸したからだ】

 幼さを残しながらも凛と美しい声音が聞こえた。その声には確かな自信と高慢さが含まれていて、まるで圧倒的強者と会話しているように錯覚してしまう。

 「……お前は……誰だ? どこにいる?」

 【おるではないか。貴様の中に】

 俺の中? いや、それはない。とすれば、何かしらのスキルか? 最近はステータスを確認してなかったから、ありえない話でもない。

 「ステータス」


 《名前》   ヒイラギ   カムイ

 《年齢》   16

 《種族》   ヒューマン

 《職業》   支配者

 《レベル》   28

 《状態》   良好(封印中)

 《魔法》   火・闇

 《固有魔法》   時空

 《スキル》   剣術lv5・鑑定lv10・看破lv10・首切りlv3・回避lv2・並列思考lv2

 《固有スキル》   最適化・絶対鑑定・【傲慢】

 《異能》   支配(封印中)

 《加護》   女神リエルの封印・女神リエルの加護(鑑定lv10・看破lv10・絶対鑑定・マップ)

 《称号》   封印されし者・絶望を知る者・天才という名の化け物・王の器・堕天使ルシファーのあるじ・傲慢なる者

 スキルポイント・1280




 なんか新しいスキル増えてる。






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