支配してもいいですか?

taxi

初夜?



 「ブモォォォブゥゥ」

 夕暮れ時に豚のような頭に人のような体を持つオークの叫び声が森に響く。しかし、その叫び声を上げた瞬間燃えカスと化した。

 「おい、お前これじゃまた・・オーク討伐の証明素材が取れないじゃないか」

 「あっ! そうだった……それと私はお前じゃない! カレンっていうしっかりとした名前がある!」

 俺達は今、オーク討伐のクエストを受けている最中である。5時間前からクエストをしているのだが、オークを見た瞬間にカレンが燃やしてしまうのでちっともクエストを完了出来ないのだ。今まで遭遇したオークは全て灰となり森の肥料となった。
 俺がカレンの所業に頭を悩ませているとカレンがポンポンと肩を叩いて来た。

 「そう言えば、あんたの名前を聞いてなかったわね! 何て名前なの?」

 名前も知らない相手を仲間にしたのかよ、お前は……。
 呆れながらため息をついた俺は前を向いたままカレンに名前を教える。

 「……カムイだ」

 「カムイね、 覚えたわ!」

 名前を教えると後ろの方でずっと俺の名前をゆっくり繰り返し呟いていた。それだけなら良かったのだが、繰り返す内に段々とはやくなっていき最終的には何かの呪詛を吐いているような状態になっていた。
 俺は得体の知れない恐怖を感じ背筋がゾッとなる。俺が振り向くと普通になったのだが、尚更のこと恐怖を感じた。

 そんなやりとりを済ますと俺達はまたオークを探しにいく。カレンに攻撃を任せるとすぐ燃やしてしまうので俺が剣で倒す事を伝える。しかし、カレンはそれを即刻拒否した。

 「攻撃してはいけないとは言ってない。カレンは足を狙ってくれ。そうすれば楽に倒せるだろ?」

 「う、うーん。それもそうだけど……」

 説得を試みるがそれでも後ひと押したりず、俺はまたもカレンを乗り気にさせる言葉を考える。が、面倒臭くなりやめた。
 俺は両手を合わせて頭を下げながらお願いする。
 シンプル・イズ・ザ・ベストって言うだろ?

 「頼む! カレン!仲間だろ?」

 「……仲間? 私達は友達?」

 ん? これはもしや行けるのでは?
 そう思いカレンに向き合い友達や仲間という言葉を連呼した。

 「し、仕方ないわね! そんくらいやってあげるわよ! と、友達だものね!」

 予想通り、カレンは承諾してくれた。友達という発言の時、真顔を装っているつもりなのだろうが喋っている最中も顔がにやけていて嬉しさが滲み出ている。

 友達と言う言葉がそんなに嬉しいのだろうか? 単純で助かるのだが、カレンは詐欺に引っかかりやすいタイプだな。主に操りやすいという意味で。

 俺が失礼な事を考えていると目の前にオークが現れた。視認した瞬間、即座に剣を抜きオーク目掛けて駆け出す。そして、カレンへと呼びかける。

 「カレン!」

 「分かってるわよ! ファイアーボール」

 カレンの放った火球は見事、オークの右足を破壊した。オークは当然、体を支えきれなくなり前のめりに倒れてくるので俺はその勢いを借りてそのままオークの分厚い首を斬り飛ばそうとする。しかし、それを察したオークはギリギリのところで回避した。

 おっ、今のを躱すか。中々やるなこのオーク。

 けれど、片足となり機動力の無くなったオークはそれ以上は何も出来ずにそのまま倒れてしまう。今度こそ倒れて動けないオークの首を斬り飛ばす。
 すると、切断面から血が大量に吹き出し周囲の木々や地面を赤く染めた。
 こっちにも飛び散ってきたが、俺の装備は汚れないため血が付いても平気である。

 《首切りがレベルアップしました》

 頭に鳴り響くレベルアップ時の通知音。それがやっと取れたオークの証明素材の感動と重なり少し達成感を感じた。
 今回の依頼はオークの討伐(1〜5体)なので最低限の仕事はこなした事になる。討伐数的には十数体倒しているが証明することが出来ないため数には入らない。

 「……もう日が暮れてるから帰ろう」

 俺が脱力気味に言うと流石のカレンも申し訳なさを感じたのかそれに頷く。









 「何! もう空いてる部屋は無いだと!」


 レグルスの街にある《小鳥の宿り木亭》である男の声が響き渡る。全身黒ずくめでフードを深くかぶっている男はそんなぁ、と言いながら這いつくばった。

 「何やってるのよカムイ!」

 そう、その男とは俺のことである。カレンにたしなめられる程の事をするくらい俺は落ち込んでいた。

 そもそも何故こうなったのかと言うと、俺達は冒険者ギルドにオーク討伐の証明素材を出しに行ったのは良かったものの宿をとるのを忘れたのだ。いや、間違えた。宿無しはだけである。カレンはもう既に部屋を予約済みなのだとか。
 この世界では街に来たらはじめに宿を取りに行くのが常識らしい。カレンに常識を教わるなど屈辱以外の何者でも無い。

 もう俺の精神はボロボロだ……今日は野宿かぁ。

 心の中で漏れる言葉の語尾に哀愁が漂う。それどころか俺が周囲に発する雰囲気すら段々と暗くなっていく。
 それを見かねたカレンが救いの手を差し伸べて来た。

 「仕方ないわね! そ、その……私の部屋に一緒に泊まる? いや、そう言う意味じゃ無くて、その何て言うかと、友達としてって事!」

 何が恥ずかしいのかカレンは一気にまくし立てて喋る。聞いてない事すら話すカレンに俺は少し落ち着かせようと努める。

 「ハハハ、大丈夫だよ。そこまで気を使わなくて。俺は野宿でだいじょうエッ……ちょっと」

 「さ、さぁ! そうと決まればレッツゴーよ、レッツゴー」

 そう答えてる途中にガシッと手を掴まれてそのまま引っ張られる。俺が何度も耳元で大丈夫だからと言っても独り言を言って全く聞かない。それどころか、「い、痛くしないから大丈夫 ︎ はわわ、私どうなっちゃうんだろう」などと抜かす始末である。
 俺の抵抗も虚しく部屋に着いてしまう。ロビーから去る時にこの宿の人からベット壊すなよ〜と言われたがスルーしといた。その言葉にカレンは過剰に反応していたが。

 部屋のドアを開けるとアジアンチックなベッドだけが置いてあった。枕元の近くにはライトがあり部屋全体が薄暗い。その雰囲気が余計にカレンの勘違いを促進させる。カレンが突如衣類を脱ぎ始めたのだ。
 俺はこれ以上関係を進展させたく無いのでそれを止める。

 「カレン、そういうことしないから大丈夫だ」

 「えっ!」

 俺の言葉にカレンの顔がどんどんと赤くなっていく。そして恥ずかしさのあまり蹲ってしまう。俺が背中を撫でて慰めるのだがかなり傷が深いようで微動だにしない。


 5分間背中を撫でても戻らなかったので俺は布団に潜り瞼を閉じる。布団の程よい温もりに意識が遠のいていく。すると、もぞもぞと布団の中に何かが侵入して来た。目を開けるのもめんどくさかったので手を伸ばし侵入した物を確認する。

 プニプニ

 ん? 何だ? この柔らかいものはまるでマシュマロのような……

 「きゃあ」

 きゃあ? この声どこかで聞いたような? あっ、

 恐る恐る瞼を開けてみると顔を真っ赤にして目の端には涙を滲ませているカレンの姿があった。

 「いつまで触ってんのよ! ば、バカ〜〜」

 パチンッ

 頰に衝撃が走る。宿にも甲高く良い音が鳴り響いた。そして、俺はそのまま意識を暗転させる。









 

 

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コメント

  • 某県民ソノイチ

    カレンの火のおかげで
    モンスターの死体腐敗による
    感染病のバイオハザードには怖れずにすみそう!

    0
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