支配してもいいですか?

taxi

新たな仲間?


 

 「そこのフードの君ビッグボアの串焼きはいらねぇか?」

 「いやいや、うちのオークステーキの方が美味しいよ」

 俺がレグルスの大通りを歩いていると左右の露店から声がかかる。俺は何も反応せずにそのまま大通りを歩く。
 そもそも、大きなお金しか無いため買うにも買えないのだ。あの露店に宝石分の材料があるわけもなく、お釣りを出せるわけもない。なら買わない方があの露店のためである。
 だが、魔物の肉と聞いて少し興味を持った俺はいつか買おうと記憶に留めておく。そのためにも職に就かなければいけない。
 宝石は持っているがあれは施し物だ。俺はあまり人の施しを受けたくはない。神が人なのかどうかは置いといて、俺は面倒臭がりだが誰かに依存しながら生きたくはない。

 心の中で己の信念を語りながらレグルスの街並みを眺める。
 レグルスの大通りはかなり活気付いていて、人通りが多い。そのため様々なお店がありそれぞれ客を呼び込んでいる。その様子は地球の都心と変わりない……人口密度以外は。

 取り敢えず、異世界モノの定番である冒険者ギルドに行きたいと思いマップで調べてみたところ街の大通りを歩いて5分くらいすれば着くらしい。

 マップに従い大通りを5分ほど歩くと冒険者ギルドと大きく書かれた看板がかかっている二階建ての建物が見えてきた。しかし、冒険者ギルドの周りには人集りが出来ている。

 何か起きたのだろうか? 

 俺は不思議に思い、人集りをかき分けて中心を覗いてみると何やらギルド内で諍いが起きているようだ。俺の視界には男性冒険者と女性冒険者が言い争っている姿がある。

 「このグスタフ様の女にしてやるって言ったんだ。光栄に思いな! ガッハッハ」

 「あんたみたいな雑魚の女になる気なんてさらさらないわよ! 失せなさい」

 「あ? テメェ殺されてぇのか?」

 どうやら女性冒険者が男性冒険者の誘いを断った事で争いに発展したみたいだ。男性冒険者はスキンヘッドでボディビルダーの様な図体をしている。また、背には大きな斧を背負っている事からかなり力が強い事がわかる。
 女性冒険者の方はサラサラとした茶髪に大きくてつぶらな瞳、そして何より男達の視線を惹き付けるのは凹凸の激しい魅力的な体である。武器は魔法使いなどが使用する杖のようだ。
 確かにあの女性は顔立ちもスタイルも抜群で魅力的だが、男性はあんな誘い方であの女性を落とせるとか思っていたのだろうか? まぁ、誘い方も誘い方だが断り方も断り方である。あの断り方じゃこうなるのは目に見えていた。
 よっぽど腕に自信があるのか、女性は腕を組みながら仁王立ちしている。そのせいで女性の豊満な胸が押し上げられ余計に男性達の視線が集中しているのだが。

 俺は早く冒険者登録したいのだが……どうにも邪魔で仕方ない。あまり目立ちたくないが最悪、2人を気絶させて事態を収束させようか? いや、もっと大騒ぎになりそうだな。これは最終手段だ。

 一先ず、最悪の場合を考えて2人のステータスを鑑定する。男性のあの横暴さからして彼はそこそこ力があるのだろう。この世界の強さの基準を知るためにも必要な事なのだ。
 そう言って己の所業に理由付けをし人のステータスを覗く事を正当化する。





 《名前》   グスタフ

 《年齢》   23

 《種族》   ヒューマン

 《職業》   戦士

 《レベル》   15

 《状態》   良好

 《スキル》   斧術lv4・筋力上昇lv2・挑発lv2・薙ぎ払いlv1

 《称号》   一人前冒険者・Dランク冒険者




 男性冒険者の方は強いのか、弱いのかよく分からない。この世界の強さの基準を図るために鑑定したのだがやはり比較対象がいないと分からない。それとスキルだけが全てじゃないというのもある。少なくとも俺はスキル無しで一般人の50人分の能力はあると思う。
 彼を見てもこの世界の基準は分からなかったが、俺よりは確実に弱い事は分かるため問題ない。
 次は女性の方も鑑定する。




 《名前》   オオノ   カレン

 《年齢》   17

 《種族》   ヒューマン

 《職業》   魔法使い

 《レベル》   22

 《状態》   良好

 《魔法》   火

 《固有魔法》   灼炎しゃくえん

 《スキル》   杖術lv4・棒術lv3・魔法の才lv1・魔力操作lv2・魔法威力上昇lv1

 《加護》   女神ノエルの加護

 《称号》   異世界人・魔の天才・新人冒険者・Fランク冒険者





 驚いた、こんなにも早く俺と同じ転生者に遭遇するとは。女神ノエルは何人の異世界人を転生させたんだ? いやもしかしたら転生者全員を同じ場所に転生させているのかも知れないな。
 それよりもあのグスタフとか言う奴大丈夫だろうか? 力の差があり過ぎて勝てる確率はゼロに等しい。そんな相手に喧嘩売るなんて愚の骨頂である。

 俺の心配とは裏腹にグスタフは怒りのあまり手に持つ斧を振り上げた。流石に不味いと思い止めようと入るがカレンがグスタフの局部を蹴り上げる。グスタフは痛みのあまり気を失ってバタリと倒れてしまう。
 それを見ていた男達は青い顔をして股間を抑える。俺以外全員が同じポーズを取ったため何故か疎外感を感じた。
 何となく股間を抑えている男達の俺を見る目に尊敬の眼差しが灯っているのは気のせいだろうか?

 「ふん、男なんて大事な所を蹴り飛ばせば1発よ! あら? あんたは大丈夫なのね?」

 勝ち誇ったよな笑みを浮かべた後、唯一股間を抑えなかった俺を見てカレンが面白おかしそうに俺に問いかけてきた。

 「別に俺が喰らった訳でも無いし、何とも思わない」

 面白いものを見つけたような目で俺を見てくるカレンにそう答えるとそのままギルドの受付に向かう。すると、ガシッと肩を掴まれる。俺の肩を掴んだ色白く細い手の先には満面の笑みを浮かべたカレンの姿が映った。

 「待ちなさい! あんたまだ冒険者ギルドには登録してないのよね? なら私と一緒に行動しましょうよ! 私はいつか大物になるから今の内に縁を持っといた方がいいわよ?」

 何がカレンの興味をそそったのかはわからないが逃げきれそうも無いので暫定的な仲間になる事にした。あくまでも暫定的・・・なものだ。せいぜい俺が目立たないように盾にでもなって貰おうと思う。だから周りの男達、可哀想な目で俺を見ないでくれ。

 「ほら! そうと決まれば早く登録しなさいよ」

 カレンは俺が仲間になる事に承諾した事が分かると頰を緩めて冒険者登録を急かしてきた。俺はカレンに押されながらギルドの受付に着くと目の前にいる受付嬢に用件を伝える。

 「冒険者登録がしたい」

 「はい、でしたらこの紙に名前や特技を記入して下さい」

 受付嬢から紙とペンを受け取り紙に名前、特技、などを書き込む。名前はカムイで特技は剣術、と書いたのだが紙にはまだ職業や年齢の記入欄があり不思議に思っていると背後からカレンが声をかけてきた。

 「まだ終わらないの〜〜? ん? あ〜、そこは別に書かなくても良いのよ」

 確かに職業などは書いた方が恩恵を受けられる人もいれば逆に書けない人もいるだろう。前者の方は貴族が後者の方は殺し屋や国の暗部などが良い例だ。
 年齢は何のためだろうか? 分からないが、とりあえず16歳と記入しとくか。
 俺は紙に記入し終えると受付嬢に紙を差し出す。受付嬢は営業スマイルをしながら紙を受け取るとギルドカードを作成し渡してきた。

 「これでカムイ様はFランク冒険者です。冒険者のルールやランクの説明を受けますか?」

 「……ああ、おねが「私が後で教えるから大丈夫よ!」大丈夫だ」

 受付嬢の質問に俺はしばし考えた後説明を受けようとしたのだが、カレンによりそれを遮られてしまう。それどころか説明を拒否した。
 ここでカレンの意向を無視しても良いのだがここで揉めても後が面倒なため渋々ながら従う。

 「さぁ! 早くクエストに行きましょう!」

 「いやまだ依頼を受けてないのだが」

 「さっきオーク討伐依頼を受けたわ! レッツゴー!」

 興奮状態のカレンに手を引っ張られながらというより引きずられながらクエストに向かう。俺は人々から奇異な視線を向けられるが気にもせずなすがままにされる。

 「新たな仲間を加えた事だし、これから私の物語が始まるのよ!」

 まさに主人公の様なカレンの声が天まで轟く。



 あれ? これって俺が主人公だよね? 

 そんな不安に駆られながら俺は目的地の森まで引きずられていくのだった。












 スキル・称号等の解説

 挑発:半径20メートルの敵の意識を自分に集中させて、攻撃目標を自分に固定する。


 魔の天才:魔法の才能に恵まれた者に送られる称号。魔法威力上昇、魔法耐性の効果を持つ。






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