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ストーリーテラー

ユキ

第1章 1話 喫茶店にて

この街に来て3ヶ月が経つ。僕はいつものように喫茶店でモーニングセットを注文していた。

「まさ君コーヒーはブレンドでいい?」
「うん、サンドイッチのセットでお願いね」

モーニングセットはコーヒーがブレンドか日替わり、食事はトーストかサンドイッチで選べるのだが、僕はいつも注文しているブレンドとサンドイッチのセットにした。

「それと……朝倉さん」
「ん、何かな?」
「そろそろ君呼びは辞めてくれないかな?少し恥ずかしいんだけれど……」

そんな僕のお願いなど気にする素振りもなく、彼女は意地悪な笑顔を浮かべた。

「いいじゃない、可愛いでしょ?ま・さ・君?」

僕はため息をつき、赤い顔を誤魔化すように水を飲み干した。
彼女はここでバイトをしている朝倉 紗枝という女性で、ここに通うようになってから話すようになったのだが、いつもからかわれてばかりで少し苦手だ。
飲み干したコップを弄んでいると、モーニングセットを持って来た朝倉さんが、顔を近づけて来た。

「そんなことより、あそこみて。あの奥の席」

彼女の言う方に視線を向けると、そこには初めて見る客がいたが、別に不審な点はなく、どこにでもいそうな大学生の様な風貌だった。

「あの人がどうかしたの?」
「あそこに座ってる人、コーヒー頼んでから1時間くらいずっとあそこで深刻そうな顔で新聞を読んでいるのよねぇ」

そんな会話が聞こえたのかは分からないが、その客は読んでいた新聞を閉じると僕の方に近づいて来た。

「やばっ、聞こえちゃったかな」

そう言うと彼女は知らないふりをして食器を洗い始めた。

「逃げたな朝倉さん……」

恨めしげな視線を朝倉さんに向けていると、その客は僕に話しかけて来た。

「あなたが春寺 正明さんですか?」

僕は名前を知っていることに驚いたが、もしかして、と期待を込めて答える。

「僕に何か用ですか?」

すると男は肩から下げていた黒いショルダーバッグから一枚のチラシを取り出した。

「助手を募集している探偵事務所があると聞いて、春寺さんを探していたんです。街の方が朝はこの喫茶店にいると仰っていたもので」

僕はニヤけそうになる表情を必死に抑えながら、その男を観察した。
細身だが華奢と言うわけではなく、顔もどこか知性のありそうな感じがする。待ちわびた助手が来てそう見えているだけかもしれないが。

「まさに僕がその探偵事務所の春寺 正明だよ!君は助手志望ということでいいのかな!?」
「はい。探偵の助手というものに憧れていまして。」

表情1つ変えずにそう答えるその男に、僕は好感を覚えた。

「……ふふっ」

テンションの上がった僕とその男のギャップに朝倉さんが吹き出し、少し恥ずかしくなった僕は一度咳払いをして誤魔化した。


「おほん、名前を聞いても?」
「私は菅野 浩介と言います。これからよろしくお願いします」
「もちろんだよワトソンく……菅野君。早速僕の事務所に向かおう。コーヒーのおかわりは大丈夫かね?」
「はい。お気になさらず」
「プハハッ」

そんな僕と彼のギャップに再び朝倉さんは吹き出すのだった。




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