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ストーリーテラー

ユキ

邂逅

「ゔぅ……」

 ズキリと鈍い痛みの走る頭を抱えながら体を起こすと、そこは、どこか見覚えのある部屋だった。勉強机に電気スタンド、ベット……無駄なものは一切なく、寂しい部屋という印象なのだが、何故だろう……そんな印象の薄い部屋にあって僕は、ここを見たことがあるという確信めいたものがあることに困惑した。

「ようやく目が覚めたみたいだね」

声のする方を見ると、椅子にも腰掛けず部屋の隅であぐらをかいている若い男がいた。
僕が怪訝そうな顔で見つめると、男はまた口を開いた。

「自己紹介がまだだったね。僕は神、全知全能の創造主さ」

……こいつは頭がおかしいんじゃないだろうか?
痛い頭と、記憶が曖昧なことを鑑みるに、僕はこのサイコパスに頭でも殴られてここに連れてこられたのだろう。そんなことを考えながら警戒しつつ男の様子を伺っていると、男は不思議な笑みを浮かべてこちらに少しずつ近づいてくる。

「君は自分が誰だか、ここがどこなのか、ここにくる前何をしていたのか覚えているかい?」
「何を言って……」

そこまで言ってようやく、自分に全くと言っていいほど記憶がないことに気づいた。ここがどこで何をしていたのか、そして自分の名前さえも……頭が痛い……痛みが増していく……
僕は頭を抱えながらうずくまり、男を睨みつけた。

「お前は何だ……?俺をどうするつもりだ……」

そう聞くと男は、笑顔を浮かべたまま俺の頭に手を置いた。

「さっきも言ったが、君は選ばれた。これから君は、君としてではなく他の誰かの人生を数多く経験することになる。他でもない、君自身のために」

笑顔を浮かべながら非現実的なことを言い続けるその男に、しかし僕はこの部屋と同じ寂しそうな雰囲気を感じた。

「時間が来たようだよ。さぁ、行ってらっしゃい」

その言葉を聞くと同時に、視界がぐらりと歪んでいく。平衡感覚がなくなり、意識が深い闇の中に落ちていく……
薄れていく意識の中、さっきまで笑顔だったはずの男が申し訳なさそうな顔で俺の頭を撫でているのが見えた気がした。

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