妹はこの世界でただ一人の味方

さらだ

連載5ヶ月目の5月5日

「結衣〜どこだ〜?」

大声とまではいかないものの、大きめの声で結衣を呼んでいた学の手には一冊の本が握られていた。曲がり角を曲がろうとすると結衣がヒョッコリと出てきた。少し汗をかいているのが分かった。

「どうしたのお兄ちゃん?」

「実はこんな本を買ってな。」

学が結衣に見せたのはエンジェルナンバーの本だった。
エンジェルナンバーとは天使からのメッセージと言われている。普段何気なく目にしている数字が何度も同じ組み合わせだとしたら、今自分に必要な天使からのメッセージと言い伝えられている。

「どうしてお兄ちゃんはこの本を買ったの?」

「数字は古くから神秘的なものと考えられていたんだ。数学は独自の波動と周波数を持っていて俺たちに影響されているんだ。実際多くの偉人が「御託はいいから。」・・・暇だったからだな。」

「あ、そう・・・。」

微妙な顔をした結衣だったが、「せっかく買ったなら」と言いエンジェルナンバーの本を手に持った。

「結衣は何の数字を選ぶんだ?」

「2」

「何でだ?」

「お兄ちゃんが1番で、私が2番っていう解釈をしただけだよ。あんまり深い意味はないの。」

本をペラペラとめくって2のページを開いた。

「えーっと・・・信念を貫く。」

「エンジェルナンバー2は天使や宇宙のエネルギーの中に存在する、勇気や信じる心、信頼を持ち続けてくださいというメッセージ・・・か。」

少し頭の中で考えていた結衣が最初に発した言葉は学に対するものだった。

「私はいつもお兄ちゃんの事を信頼しているからね。」

ニコッと笑顔で言った結衣の頭を撫でながら学も同じことを言った。

「俺も結衣のことは信用してるぞ。」

結衣から本を渡された学は悩んだ末に数字を決めた。

「じゃあ俺は1で。」

「うん。」

これはしっかりと結衣の事を配慮した結果だった。

せっかく結衣が俺の事を1と例えてくれたからな。違う数字にしたらダメだろ。

「・・・ポジティブでいてください。何だこれ?」

「1は始まりの数字です。全ての現実化がここから始まります。全ての行動を起こさせ、新しい方向に導く力です。・・・だってお兄ちゃん。」

「いや、意味わからねぇ。」

特に1と2の関連性がなかったため、少し気分が沈んだ学だった。結衣は気を取り直したように学に言った。

「じゃあ私たちがそれぞれ思った数字の和を割って、その数字を2人のエンジェルナンバーにしない?小数点は切り上げで。」

結衣の提案に学は了承した。紙と鉛筆を渡し、お互いに思った数字を書いた。

「お兄ちゃん書けた?」

「俺は終わったぞ。結衣は?」

「私も終わったから見せ合いっこしよ。せーのっ。」

結衣の合図で2人は書いた数字を見せ合った。

学...5

結衣...5

「おっ。」

「同じだね。ところでお兄ちゃんはどうして5にしたの?」

「いや、なんとなく。」

「私と同じだね。」

学と一緒だったことが嬉しいのか微笑みながら5のページを開いた。

「5は人生における重要な変化が訪れようとしている。」

「その変化はあなたにとって沢山いい機会をもたらします。なんていうか・・・もうこっちに来ただけでも重要な変化って言えそうな気がするね。」

「まあな。あんまりあてにならないな。まあ所詮気持ちの問題だな。心の隅にでも置いておけばいいか。」

「そうだね〜。」

本をしまうと、思い出したように学が聞いた。

「そういえば結衣はさっき何をしていたんだ?」

「さっき?さっきはね、ヨガをしていたんだよ。新陳代謝がアップするから痩せやすくなるし、体力も増やすことができるから時々やってるんだ。」

「ああ。それで汗をかいていたのか。」

「うん。」

ヨガか・・・。たしかに健康にいいから俺もやってみるか? いや、もし結衣が一人でやりたいなら邪魔しちゃいけないな。

学がそう考えていると、結衣がおずおずとある事を提案してきた。

「もしよかったらお兄ちゃんも一緒にやらない?昔から同じ事をした事なかったでしょ?たまには一緒に何かしたいな〜って思ったんだけど・・・どうかな?迷惑だったら全然断っていいからね。お兄ちゃんが嫌がる事を強要するつもりはないし、そこはお兄ちゃんの意見を第一にしたいから。」

なんて優しい心遣い・・・。まあそこまで言われたら嫌でも付き合うけどな。

「いや、せっかくだしやってみるか。健康面の事もあるし、結衣と一緒っていうのもあるしな。」

「後半の動機はあまり納得できないけど・・・よかった。いつからやる?明日?」

学は少し考えた。結論はすぐにでて、結衣に言った。

「結衣がやる時になったら言ってくれ。その時に俺もするから。あ、何か作業をしてても一応報告はしてくれよ。どうでもいいことだったらほったらかすから。」

「邪魔はしたくないけど・・・分かった。やる時は声をかけるようにするね。」

学が結衣と別れた後、何気なく本を一人でめくっていた。理由はなかったけれど、555のところで目が止まった。

1,次なるステージが用意されている
2,変わる時
3,飛び出す時
4,良い方向に流れてる
5,重要な変化がある
6,ポジティブに進む
7,しがみつかない
8,ターニングポイント
9,解放
10,自由になる

中でも学がひときわ目に入ったのが4の『良い方向に流れてる』だった。

結衣との関係・・・良い方向に流れてるのか?前も結衣のこと怒らせてしまったし、こういうのは隠されたら絶対に分からないからな。出来るだけ辛い思いはさせたくないし・・・かと言ってそれを正面から聞くってのも不躾だよなぁ。
本当ならいい男に嫁がせて幸せな人生を送ってもらいたいんだが・・・いや、結衣に見合った男なんているわけないか。でも、なんだかんだ言ってこっちの世界に来させたのは俺のせいだよな。確か・・・体調崩して結衣にコンビニに行ってもらった後、誘拐助けて戻ったら、爆破。
うう・・・そう考えると胃が痛くなるな。

「お兄ちゃん?」

「っ! ど、どうしたんだ?」

学は心臓をバクバクさせながらも、いきなり後ろに現れた結衣に返事をした。

「用事ってわけじゃないんだけど・・・挙動不審だったから何かあったのかなって思ったんだけど、どうしたの?」

「・・・結衣に見合った男はいるのかなと、けれどそれはもう大丈夫だ。俺の考えではいないことが分かった。」

学がそう言うと結衣はムスッとした。

「それじゃ私一生独身じゃん。それに見合った男の人ならもう見つけているよ。」

「な、なんだと・・・。」

雷に打たれたような衝撃を学は体験した。驚愕している学を見て、結衣はいたずらっ子な顔をして言った。

「誰かは言わないからね。」

先を読まれた・・・。・・・誰だ?すごい気になるな。結衣はああ言ったから聞こうにも聞けないな。くそッ。イラつくな。

・・・お兄ちゃんは分からないだろうね。自分を低く見すぎているから。お兄ちゃんは自分で思ってるよりすごい人なんだけどなぁ。・・・だから私はお兄ちゃんが・・・。

結衣は一人で話を終わらすと、鼻歌を歌いながら部屋に戻ってった。


余談だが、学はその日の夜男のことが気になって眠れなかったらしい。


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以下作者のコメント
今日で連載開始から5ヶ月が経ちました。早いような遅いような感覚です。
いいね数が2200、フォロー数が1000です。(だいたいなので、細かいのは勘弁してください)で、話数が今回のを入れて75話。自分でいうのもなんですが、結構頑張った方だと思います。
それと、他の作品を見ていてふと思ったことなんですけど、更新ペース意外と早い?まあただの感覚なので違ったらごめんなさい。

エンジェルナンバーって知ってましたか?僕はつい先日まで知りませんでした。国立国会図書館に立ち寄った際に目に留まったのがこの本でした。読んで見てはどうですか?結構面白いですよ。占いと思っていれば気持ちも軽くなりますし。ネットでも見れますよ。というか、今回書いた知識のほとんどはネットです。よければ是非見てくださいね。

そういえば・・・最初の方にフォローしてくださった方はよく読もうと思いましたね。僕は評価が高い順から見てくので、今は暗殺者やら、貴族やらの小説を見ています。そっちをフォローするのなら話は簡単なんですが、こんな名も通ってないような小説をよく見つけられるなぁと思った作者でした。

では、5ヶ月の連載を記念してカンパーイ!!←未成年なのでウーロン茶


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コメント

  • さらだ

    カンパーイ(=^▽^)σ(コーヒー)
    見てくださって有難う御座います。75話一気に読むのはさぞ苦痛だったでしょう。しっかりと体と目を休ませてください。
    どうかこれからもよろしくお願いします。

    1
  • アルト

    かんぱーい^_^(烏龍茶)
    昨日読み始めて今読み終わりました。
    最高に面白いです!
    これからも頑張ってください^_^

    2
  • さらだ

    イメチェンさ...

    3
  • 神田礫

    巨人の画像になっている…だと!

    3
  • さらだ

    カンパーイ(おしるこ)

    3
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