妹はこの世界でただ一人の味方

さらだ

綺麗な景色

泣き止んだ結衣は学から名残惜しそうに離れた。

「ここにいる意味はなくなったな。レベルも上がったし、家に戻るか。」

「そうだね。」

2人は16階の天井が壊れていた(壊していた)のを思い出し、そこから降りようと決めた。
途中で光っていた石を見つけたのでちゃっかりと収納にしまっていた。

「高いな・・・。」

「・・・うん。」

2人は今にも崩れそうな天井を足場にして地上を見下ろしてそう言っていた。
2人の高ステータスを持ってしても、地面が見えないのだった。

「こんなに高かったか?」

「魔法で認識が変えられてたとか?」

学の思い込みに結衣が思った事を言った。

「・・・まぁ、魔法がどれほど有用なのか俺には分からないから何とも言えないけど、その可能性はあるかもな。」

学は小さくため息をこぼすと、ある行動に移して。

「よっと。」

「え?」

学は結衣をお姫様抱っこすると、天井から飛び降りた。

「〜〜〜〜〜〜〜〜!!!」

声にならない叫び声を出している結衣はともかく、学は見える景色を楽しんでいた。
地平線には夕日が半分ほどはみ出ていて、学と結衣を淡く照らしていた。木々が見え、地面にある砂も、遠くにある街も全てが見えていた。

「見ろよ結衣! こんな綺麗な絶景はなかなか見れないぞ!」

落ちる瞬間の風に負けないよう大声を出した学だった。結衣も負けじと大声を出す。

「いきなり飛ばないでよ! ビックリするじゃん! あといきなりお姫様抱っこって・・・恥ずかしいよ。」

夕日に照らされながら結衣の頬は赤くなってた。夕日のオレンジの他の色に学は気づく事なく、結衣が最後に言った言葉をもう一度聞いた。

「何だって!? 大きな声で言ってくれ!」

「綺麗だねって言ったの! 」

バサバサと服が大きな音をなびかせていたが、2人は気にせずに直視しても大丈夫になるくらい弱くなった夕日を見つめるのだった。





「めんどくさいな・・・。」

えー、ただ今むさ苦しい男15人に囲まれています。別に盗賊とかじゃないぞ。ちゃんと街の中に入ってる。もう一つ情報を加えるならスラム街だけどな。

そう・・・帰り道のことだ。



走って帰っていると結衣が唐突に街に行こうと言い出したんだったな。理由を聞いても、ただ買いたいものがあるとだけ言った。

「じゃあ行くか。」

「うん。ありがとうお兄ちゃん。」

一番近い入り口を探していたが、見つからなかったので仕方なく壁を飛び越えて入った。まあ所詮前来た時は2人で20銭しか払わなかったからいいよな?

入った瞬間に囲まれるってこいつらどれだけ暇人なんだよ。

「で、なんか用か?」

学は結衣を背中に隠し、男たちにそう告げた。リーダーと思われる男が一歩前に出て学に話しかけた。

「お前たち入場税を払わずに入って来ただろ。いけないんだぞ〜。なぁお前ら! 俺たちでも分かることをこいつらは分かってねぇみたいだぞ!」

そう言うとその男を含めて全員が豪快な声で笑い始めた。ひとしきり笑い終わると学に向かって提案をしてきた。

「お前らの服を見れば分かる。なかなか金を持ってそうだな。そうだな・・・ここで100円払えれば許してやるよ。無理だったらそこの女置いていけよ!ガッハッハ!」

次の瞬間にはその男の人差し指が地面に落ちていた。白い骨が見え、そこから血も流れていた。
自分の指が無くなったのに気がつくと、男はしゃがみこんで必死で人差し指の付け根を圧迫して痛みを和らげようとしていた。

「テメェ・・・!」

男の目には涙と怒りがこもっていた。
学の手にはいつかのエアガンが握られていた。学はクルクルと回しながら一言、短く言った。

「どけ。」

その声は周りを囲んでいた男たちを竦ませるのには十分なほどの迫力があった。
しかしそれを無視して死に急ごうとする奴が現れた。手をなくした男だ。学のその言葉も怒りのせいで挑発しているように聞こえたんだろう。

「お前ら俺に続け!来なかったやつは後でぶっ殺す!」

男は腰にぶら下げていた刀を抜くと、学へと向かって走り出した。学はその男を狙って銃口を合わせていると、他の男たちも様々な角度から学を狙い刀を振り下ろした。

計30個。男たちの両腕が、学に刀を振り下ろす前に地面に落ちていた。
学の足元には、しゃがみながら刀を鞘に収めている結衣がいた。結衣が睨み付けると男たちは一瞬その場で硬直してしまった。
学は1人ずつ頭を狙い撃っていた。隣の男が頭を撃ち抜かれ、血しぶきを噴き出しているのを見ると、近くにいた男は腰が抜け失禁していた。

最後に残った男は学が最初に指を撃った男だった。学と結衣がその男に何の興味もない目を向けていると男はみっともなく泣きながら口を開いた。
その開いた口に学は合計3発撃ち込み、有無を言わせなかった。

2人はすっかり暗くなってしまった夜空を見てため息を吐き、15人分の死体を背にスラム街を抜けようと歩き始めたのだった。


街中を歩いていると4人の鎧を着込んだ兵士たちが学たちを囲んだ。

今日はよく囲まれるな・・・。お金の事か?

すると兵士の1人が学たちに威圧的な態度で言葉をかけた。

「お前たち! 入場税を払っていないという報告があったぞ! 我々と来てもらおうか!」

学は一瞬だけ考えて答えをだした。

「嫌だと言ったら?」

「ここで我々に殺されても文句は言えなくなるぞ。」

馬鹿にしたような言い方で学へと言った。実力は学たちよりずっと低い。
学は従う必要はないと思い、断ろうとした瞬間後ろにいた結衣が高速で移動するのが分かった。

兵士たちや、周りにいた野次馬がその光景を目にしたのは結衣が動いてから0,3秒後の事だった。
結衣は鎧相手に刀は難しいと思い、唯一鎧の効果がない、頭を狙った。結衣は現在も学と話していた男の目玉スレスレに刀の先端を向けていた。

結衣は学へと目線を向けると目で何かを訴えていた。意味が分からなかった学はひとまず頷いた。
すると結衣は喋り始めた。

「お兄ちゃんはあなた達みたいな人に殺されないよ。私なんかよりもずっと速く動けるし、臨機応変に動ける。私の動きを捉えられないようじゃ殺すなんて不可能。」

兵士達は絶句していて、学はさっきの訴えの意味に納得していた。

「まあ落ち着け結衣。自分と相手の力の差も分からないやつに何を求めてるんだよ。」

学は結衣の肩を掴むと兵士と距離をとった。結衣は一度学の顔を見た後、兵士達を睨み付けると刀をしまった。

「あ、お兄ちゃん。あそこのパン屋の角を左に曲がったところに用事があるの。」

結衣はたった今見つけたパン屋を指してそう言った。意外と距離があるがしっかりと見える。何かと縁があるパン屋だ。

「おい! どこに行く気だ!? 我々がここを通すわけがないだろう!」

「基本スペックが違うんだよ...」

学はそう呟くと近くにあった建物の屋上まで跳んだ。結衣も同様に跳んで屋上に着くと走り始めた。それを見て兵士たちも走るが、鎧+野次馬の妨害は大きくタイムロスになっていた。
2人は走りながら目的地を目指すのだった。


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以下作者のコメント
今日は学校で1500m走を走って来ました。超が付くほどのインドア派の僕にとっては辛かったです。しかも昼食の後の5時間目で吐きそうでした。
タイムは5:19ですね。何気に自己ベスト出しました。
インドア派ですけど基本的に平均以上のスペックがある理不尽さ。今年の運動会も障害物競走は出来ないのだろうか?一度でいいのでやってみたいですねー。

いらない情報ですけど50m走は6,79でした。まあまあですね。

友人が異世界に行った時用にって言って筋トレを始めてもう三年が経ちました。ホロリと涙が出そうですよ。
ちなみにその人の握力は57あって、50m走は6,81で1500m走は5:29でした。ちなみに僕の握力は32です。
・・・涙が出てきました。


傷ついたのでこれで終わります。いいね、コメント、フォローお願いします。

コメント

  • さらだ

    わざわざ金を払う義理はないっ!!

    0
  • ウォン

    金払えばよくないか?笑笑

    1
  • さらだ

    コンビニって意外と物価高いですよね。どうしてスバルくんはコンビニに行ってしまったんでしょう?(そんな事は聞いてないですよね。すいません。)

    0
  • ちょっと二次元が好きです

    そのステータスでコンビニ帰りに突然異世界に飛ばされたら、もうリゼロだな

    1
  • さらだ

    体力をつけようとしても一朝一夕でつけれるものではないので仕方ないですよね。
    僕も体力は絶望的にありませんが、目の前の人をがむしゃらに追っていけばいつの間にか終わっていました。
    もし体力や握力をつけたいと思っているなら応援します。頑張ってください。

    0
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