異世界転生の特典は言語理解EXでした〜本を読むだけで魔法習得できるチートスキルだった件〜

ふぁに

第十三話「レグリア国へ」

 部屋に戻り、汚くなった床を綺麗に掃除してからルーシェとミカエラを呼びに行った。
 ルーシェとミカエラはギルドのテーブルに座りながらティルと遊んでいた。ティルは、テーブルの上でルーシェ達に撫でられたりと可愛がられている。

「ルーシェとミカエラ。終わったぞ」
「あ、アレン様。お疲れ様です!ティルちゃんすごく可愛いですね!行儀よく待ってましたよー」
「そうか、ありがとな」

 ルーシェは頬を緩めながら喋る。つい先ほど命を狙われたばかりだというのに。この子は、緊張感がないのだろうか。それとも肝が据わっているというべきか。
 隣にいるミカエラは笑顔でティルと戯れていたが、俺の姿を捉えた途端に真剣な表情になった。

「アレン様、情報は得られましたか?」
「ああ。だけど、ここでは話せないな。何はともあれレグリア国に向かうのは確定なんだろ?道中で話すわ」
「分かりました。では、準備が出来次第、出発しましょう」
「おう。俺の方はいつでも大丈夫だ」
「アレン様!ティルちゃんお腹空いてるみたいです!昼食を取ってから出発しましょう!」
「おう。じゃあ昼飯でも食べるか。俺が泊ってた宿屋で飯は食えるから案内してやるよ」
「はい!行きましょう!」
「ピィー!ピィ!」

 ルーシェとティルはすっかり仲良くなったみたいだった。おかげで雰囲気が明るい。暗い雰囲気よりこういう明るい方がいいだろう。
 俺たちがギルドを出ようとしたそのとき、ギルド長がやってきた。

「大事な話は済んだかい?」
「はい、ギルド長さんのご厚意のおかげで円滑に話が進みました」
「本来はお貸ししてもらえない部屋を貸していただき本当にありがとうございます」
「いやいや、こちらも力になれて光栄だよ」

 ルーシェとミカエラは、おじぎをしながらギルド長に感謝の言葉を述べる。ギルド長も笑顔で対応する。
ギルド長が笑顔で二人に対応した後、俺の方を向く。申し訳なさそうな顔をしている。

「アレン君には昨日に続き迷惑をかけてしまったね。本当にすまない。だけど、どうか二人のことを助けてあげてほしい。詳しい話は知らないが、力になれるのは君だけらしいんだ」
「まったくな。俺じゃなかったらどうなることやら。・・・だけどまぁ、レグリア国には元々行く予定だったんだ。ついでにこの二人のことを助けてやるさ」
「・・・アレン君は第一印象で損する人だろうね。君は本当に心の優しい人だ」
「へいへい。ありがとさん」

 ギルド長は俺たちを笑顔で見送ってくれた。このギルド長のおっさんこそ第一印象で損してると思うのは俺だけだろうか。筋肉ムキムキで荒らそうな印象に見える。だが実際は、物腰が柔らかい良い人だ。俺なんかよりよっぽど第一印象で損してるだろ・・・。



 宿屋で昼食を食べた。エルフが食べる物と言ったら俺も野菜とかを思い描いていたが、普通に人族と同じ物を食べる。3歳のころは、これを知ってびっくりしたものだ。前世のイメージからすると、エルフはなんとなく菜食主義っぽい感じだったからな。
 ルーシェとミカエラは、ティルにミルクを与えていた。二人は、外套を被っていて表情が良く見えない。だけど、ニコニコな笑顔でミルクを飲む様を見ているのだろう。
・・・俺は昨日ティルに肉を食べさせていた。赤ちゃんに肉を与えるって改めて思うと中々クレイジーな発想だったな。まぁ、食べれたから問題ないだろう。
 ちなみに俺は、食べる気分ではなかったので水とパンだけ食べた。


 昼食を終えた後、レグリア国に行くまでの食糧や寝袋などを用意して俺たちは陸竜小屋にやってきた。陸竜小屋は前世でいう馬小屋みたいなもんだ。レグリア国からアルデバン王国に来るとき陸竜車に乗ってきたというので、ここにやってきた。
 陸竜小屋の管理人に案内され、乗ってきた陸竜に対面した。ルーシェは陸竜を撫でる。陸竜も撫でられ心なしか嬉しそうにしている。ルーシェは、動物が好きなんだろうな。こういう奴は何故か動物から好かれるよな。

「では、4日間預からせて頂いたので料金は銀貨4枚となります。・・・はい。確かに受け取りました。ご利用ありがとうございました!またのご利用をお待ちしております!」

 管理人に銀貨を渡して、陸竜を引き取った。この世界の貨幣は、銅貨、銀貨、金貨、白金貨という順で価値が高くなっている。日本円にするなら銅貨=10円 銀貨=1000円 金貨=10万円 白金貨=1000万円と言ったところかな。だから4日で銀貨4枚のこの陸竜小屋の料金は結構リーズナブルな価格だ。


 俺たちは、陸竜車に乗り込み、ミカエラが陸竜車を走らせる。
 いよいよ、レグリア国へ旅立つ時が来た。ルーシェ達から受けた依頼は、レグリア国を救うという非現実的な依頼だ。死ぬ可能性だって十分にある。この依頼を受けないというのも利口な選択かもしれない。だが、幸い俺は自分の好奇心を満たすため、とてつもない力を手にしている。だから、たまには理不尽に抗おうとする人達の手助けをしてもいいんじゃないかと思った。
 柄にもないことを思っているのかもしれないが、結局は自分が興味のあることをしているだけだ。俺が興味を持ったからルーシェ達を助ける。簡単な話だ。ルーシェ達が言うような優しい人間ではない。

「アレン様、本当に私達の依頼を受けてもらっても大丈夫ですか?今ならまだ引き返して断ることだってできるんですよ」
「ギルド長にも頼まれちまったからな。まぁ、なんとかなるさ。俺のオーラは誰よりも大きいらしいしな」
「でも・・・アレン様が命を落とすことも全然ありえるんですよ?本当にいいんですか?」
「国を救うっていう話なんだ。死人は何人も出る。それを踏まえて俺は協力してやるって言ってるんだからあんまり気負うな」
「・・・はい。ありがとうございます」

 ルーシェは鼻を小刻みにすすらせながら涙を流す。不安や責任で押しつぶされそうなんだろうな。肝が据わっていると思っていたが、実際はやせ我慢だったのかもしれない。
 空は青く澄み渡り、陸竜が地面を叩く音が響き渡る。レグリア国までは2日かかる。それまでに細かい話や作戦を練っておく必要があるだろうな。だけど、今は泣かせてやろう。泣いてスッキリしたあとに話をした方が捗るだろうからな。

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