異世界といえば魔法? いいえ答えは化学物質です
うちのクラスが丸ごと異世界に飛ばされました
「やった! 成功したぞ!!」
声が聞こえる。俺は一体どうなってしまったのだろうか。さっきまで授業を受けていたのに何故眠っているのだろうか。とりあえず目を開けるとそこには白い天井があった。が、蛍光灯もなければクーラーのようなものもない、明らかに教室ではない。
状況が分からず飛び起きると、神官のような服を着た人たちが周りを取り囲んでいる。それにしてはやけに神官の場所が遠いと思い少し下に視線をずらすと、そこには何十人もの人間が先ほどの俺と同じように倒れているのが見えた。
「あ、あれ? ここどこ?」
「眠いよぉ……」
「いったた……。なんか固くない?」
意味の分からない状況に俺が混乱していると、次々と倒れていた人たちが起き始めていた。全員見たことがあるというか、なんと全員俺のクラスメイトだった。ちなみに一人だけ制服を着ていない人がいるが、その人は先ほどまで授業をしていた担任であった。つまりここにいる奴全員先ほどまで同じ教室にいたということになる。
「どうやら皆様無事お越しいただけたようですな」
と、皆が起きたタイミングで一人の老人が前に出てきた。当然クラスメイト達は皆ここはどこだとか、教室に帰せとか口々に叫び始める。
「今皆さまがおられるのは聖オルディン公国という国であり、私はこの国の国王、アレイスターと申すものです。この度はわけあってあなた方をこの地に及びいたしました」
そう言うと国王は俺たちにお辞儀をした。そんなことより聖オルディン公国? 聞いたことのない名前の国だな。しかしその疑問は次の一言で解消された。
「聞いたことのない国と思われる方も多いと思われますが、この国は皆さまがいた世界の国ではございませぬ。皆様にとっては異世界、ということになるのでしょうか」
国王の一言によってクラス中は一気に騒然とした。泣き出す者、怒る者、無理に明るく振舞うもの、現実から必死に目をそらそうとするもの、実に様々だったが一人として冷静に物事を対処しようとする者はいなかった。だが流石は国王というだけあって、俺たちがうろたえているのを見ても顔色一つ変えずに、
「しかしご安心ください! 皆様にはこちらに転移してくる際、英雄召喚陣の効果により、身体強化に加え各々固有の能力が備わっているはずです! その能力を用いてこの世界の平和を脅かす魔王を討伐して欲しいのです! もし討伐できたならその暁には必ずや皆様を元の世界にお返しして見せましょう!」
力強くそういってのけた。するとどうだろう、今まで騒然としていたクラスメイト達はいつの間にか落ち着きを取り戻していた。無論まだ不安そうにしているものも多数いたが、大半は帰れるということへの安堵と与えられた固有の能力への興味からむしろ高揚しているのがはっきりとわかる。が、そんな中一人だけ国王に抗議するものがいた。
「あの、王様。一つお聞きしたいのですがその魔王討伐をしろとおっしゃいましたが、あなた方はうちの生徒の安全を保障していただけるのでしょうか? もしそうでないなら私は生徒をそんなことに参加させるわけにはいきません」
抗議したのはうちのクラスの担任、須藤恵だった。彼女はまだ新任ではあるものの、非常に生徒思いで有名であり、それ故に自身が不安で押しつぶされそうであろうが、生徒をかばおうとしたのだろう。しかし、
「大丈夫ですよ。何かあっても俺が何とかしますから。それに俺たちには能力があるみたいですし、このまま困ってる人を見過ごすってのも寝覚めが悪いじゃないですか」
そう言って爽やかに笑っているのがうちのクラスのまとめ役である飯島亮。眉目秀麗、文武両道、温厚篤実、実に非の打ちどころない男である。そのためクラスカースト最上位にいかなる時にも君臨し、かつ教師からの信頼も厚い。
そんな奴が戦うという選択を取った以上、クラスメイト達の反応は言わずもがな。どんどん上がっていく士気に須藤先生もため息をついたものの、もう彼女に止めることは出来ない。
「話はまとまったようですな。それでは本題に入らせていただきましょう」
他の奴等が戦うという選択肢を取ったせいか王の機嫌はかなり良さそうだ。対照的に須藤先生は生徒たちが戦うことが不安なのかひたすらおろおろしていた。
「さて、それでは皆様ステータスを見てください。皆様の国にステータスという概念があったのかは存じ上げませぬが一応説明しておきますと、ステータスは頭に念じることで確認することが出来ますぞ」
俺が言われた通り頭の中で念じてみると、確かにステータスとやらが出てきた。
浅野悠一:LV1
体力 :HP17
魔力 :MP78
攻撃力 :32
防御力 :27
魔攻 :172
魔防 :128
敏捷度 :72
運 :117
正直これだけ見ても強いのかどうかさっぱり分からないが、物理戦闘よりも魔術戦闘の方が得意であることだけはわかった。
「確認できましたかな? それではこの表をご覧くだされ。ここには一般的なLV1をCランクとした場合のランク分けが書かれております。Dは苦手分野、Cは並、Bはそこそこ、Aは優秀、Sは全世界でも最高峰とみていただければよろしいかと」
んーどれどれ。一つずつ目通していくと、
体力:S ~82,A 81~58,B 57~38,C 37~22,D 21~
魔力:S ~65,A 64~47,B 46~27,C 26~13,D 13~
攻撃力:S ~102,A 101~88,B 87~63,C 62~40,D 39~
防御力:S ~76,A 75~49,B 48~32,C 31~17,D 16~
魔攻:S ~79,A 78~63,B 62~41,C 40~26,D 25~
魔防:S ~54,A 53~36,B 35~19,C 18~8,D 7~
敏捷度:S ~77,A 76~52,B 51~35,C 34~19,D 18~
運:S ~68,A 67~43,B 42~31,C 30~17,D 16~
 成る程。体力攻撃力はD、防御力はC、敏捷度はA、それ以外は全部Sか。分かっちゃいたが体力とかは向こうの世界でなかったからかここでも無いらしい。てかこれ割と俺強くね? 一人でラッキーと思っていると後ろの方で歓声が上がった。
「すげぇ! オールSかよ! さすがじゃねぇか!!」
「ハハハ、よしてくれよ。みんなだって強いじゃないか」
「いや私なんてオールAよ!? やっぱり亮君ってすごい!!」
騒ぎの中心にいるのは予想通り飯島だった。どうやらオールSだったらしい。リア充はこっちの世界でも強いようだ。
「おーいがり勉くーん! お前どうだったよ? ちなみに俺は攻撃力と防御力はSで、他魔力魔攻のD以外は全部Aだったぜぇ!?」
面倒なやつに絡まれた。毎度毎度この馬鹿はよく懲りないものだ。どうせ言葉のキャッチボールも出来ないのは目に見えてるし、時間を無駄にすると考えた俺は無視を決め込む。
「あれぇ!? ひょっとして言えない感じぃ? まっさか全部Dみたいな笑わせる結果だったとかぁ!?」
するとさらにまた馬鹿が二人ほど増殖する。
「さっすがにそりゃねぇよ加計~!! 一個くらいはAあったんじゃね?」
「いやいや全部Cだったりしてな! 強化貰っといて全部一般人レベル!!! 元どんだけ酷かったんだよって感じ!!」
俺に絡んできた順に加計昭、夏野平治、小平宗太。通称馬鹿トリオである。普段から三人でつるんでおり、俺に突っかかってくるアホども。一人でいるという脳味噌がないらしい。俺が三人の処理をどうしたものかと考えていると、
「ちょっと、そこ! 何やってるの!!」
突如横から三人に対する非難の声が聞こえてきた。
「い、いや何にもしてないだろ。ちょっと話してただけだって、な?」
加計の声が急に小さくなった。後ろの二人に至っては何も言えないのかただ黙って加計の言葉に何度もうなずくだけ。そしてそのまま奴らは恨みがましそうな視線をこちらに向けて去って行った。声の主は三人が立ち去るのを確認するとすぐこちらに駆け寄り、
「浅野君大丈夫? 何かされたりしてない?」
そう心配してくれるのは我がクラス随一の美少女にして委員長の木内愛梨。黒髪ストレートの大和撫子然とした容姿の通り、正義感が強く優しいことで有名な彼女にはあの三人を追い払う際にかなりお世話になっているため、感謝してもしきれなかったりする。加計達も美少女には弱いのだ。
「特に何もされてないから大丈夫だ。ありがとな」
そう言うと心底ほっとしたような表情をしていた。彼女の行為は見返りを求めない物だろうが、流石にそろそろお返しくらいはしないとまずいと思い、密かに昼飯くらいおごろうかと思っているのは内緒である。予め彼女に言ったらほぼ確実に悪いからと断られるのは目に見えているからだ。
「それでは確認も済んだようですし、いよいよスキル発表の時間ですぞ。ステータスの下を確認してみてくだされ」
三人を追っ払ってすぐ国王はそんなことを言い出した。俺がスキルって能力とやらのことでいいのかと考えていると、既に何人か見たらしく、
「私どこからでも敵を狙えるスキルだって!!」
「俺どんなものでも切れる能力だ!!」
割とどいつもこいつも強そうな能力を手にしていた。中でも飯島はやはりというべきか、
「お前勇者かよ!! やっぱちげぇぜ!!」
「飯島君凄い!! 私も一緒に戦うね!!!」
本人は困ったように苦笑していたが、悪い気はしないらしくその表情はどこか誇らしげだった。
「ねぇねぇ! 私たちも見てみようよ!」
俺が周りの能力をぼーっと確認していると、横からやけにテンションの高い木内から声をかけられた。彼女もなんだかんだで気になって仕方ないらしい。俺も一時的に周りの能力の確認を中断し、彼女の言葉にうなずき再びステータスを見る。
さてさて俺はどんな能力なのかな……、ん? いやちょっと待ってくれ。は?
「やったー! 私なんでも治せちゃうヒーラーだって!! そっちはどうだった!? ってあれ? 浅野君?」
木内が心配そうに顔を覗き込んでくるが俺は硬直したままだった。事態に頭が追い付いていかない。だって俺のスキル欄に書かれていたのは、
化学者:mp1を消費することで任意の化学物質を生成できる
この時、この瞬間に、俺一人だけ剣と魔法の世界において、元居た世界の技術を使って戦わなければならないことが決定されたのだった。
声が聞こえる。俺は一体どうなってしまったのだろうか。さっきまで授業を受けていたのに何故眠っているのだろうか。とりあえず目を開けるとそこには白い天井があった。が、蛍光灯もなければクーラーのようなものもない、明らかに教室ではない。
状況が分からず飛び起きると、神官のような服を着た人たちが周りを取り囲んでいる。それにしてはやけに神官の場所が遠いと思い少し下に視線をずらすと、そこには何十人もの人間が先ほどの俺と同じように倒れているのが見えた。
「あ、あれ? ここどこ?」
「眠いよぉ……」
「いったた……。なんか固くない?」
意味の分からない状況に俺が混乱していると、次々と倒れていた人たちが起き始めていた。全員見たことがあるというか、なんと全員俺のクラスメイトだった。ちなみに一人だけ制服を着ていない人がいるが、その人は先ほどまで授業をしていた担任であった。つまりここにいる奴全員先ほどまで同じ教室にいたということになる。
「どうやら皆様無事お越しいただけたようですな」
と、皆が起きたタイミングで一人の老人が前に出てきた。当然クラスメイト達は皆ここはどこだとか、教室に帰せとか口々に叫び始める。
「今皆さまがおられるのは聖オルディン公国という国であり、私はこの国の国王、アレイスターと申すものです。この度はわけあってあなた方をこの地に及びいたしました」
そう言うと国王は俺たちにお辞儀をした。そんなことより聖オルディン公国? 聞いたことのない名前の国だな。しかしその疑問は次の一言で解消された。
「聞いたことのない国と思われる方も多いと思われますが、この国は皆さまがいた世界の国ではございませぬ。皆様にとっては異世界、ということになるのでしょうか」
国王の一言によってクラス中は一気に騒然とした。泣き出す者、怒る者、無理に明るく振舞うもの、現実から必死に目をそらそうとするもの、実に様々だったが一人として冷静に物事を対処しようとする者はいなかった。だが流石は国王というだけあって、俺たちがうろたえているのを見ても顔色一つ変えずに、
「しかしご安心ください! 皆様にはこちらに転移してくる際、英雄召喚陣の効果により、身体強化に加え各々固有の能力が備わっているはずです! その能力を用いてこの世界の平和を脅かす魔王を討伐して欲しいのです! もし討伐できたならその暁には必ずや皆様を元の世界にお返しして見せましょう!」
力強くそういってのけた。するとどうだろう、今まで騒然としていたクラスメイト達はいつの間にか落ち着きを取り戻していた。無論まだ不安そうにしているものも多数いたが、大半は帰れるということへの安堵と与えられた固有の能力への興味からむしろ高揚しているのがはっきりとわかる。が、そんな中一人だけ国王に抗議するものがいた。
「あの、王様。一つお聞きしたいのですがその魔王討伐をしろとおっしゃいましたが、あなた方はうちの生徒の安全を保障していただけるのでしょうか? もしそうでないなら私は生徒をそんなことに参加させるわけにはいきません」
抗議したのはうちのクラスの担任、須藤恵だった。彼女はまだ新任ではあるものの、非常に生徒思いで有名であり、それ故に自身が不安で押しつぶされそうであろうが、生徒をかばおうとしたのだろう。しかし、
「大丈夫ですよ。何かあっても俺が何とかしますから。それに俺たちには能力があるみたいですし、このまま困ってる人を見過ごすってのも寝覚めが悪いじゃないですか」
そう言って爽やかに笑っているのがうちのクラスのまとめ役である飯島亮。眉目秀麗、文武両道、温厚篤実、実に非の打ちどころない男である。そのためクラスカースト最上位にいかなる時にも君臨し、かつ教師からの信頼も厚い。
そんな奴が戦うという選択を取った以上、クラスメイト達の反応は言わずもがな。どんどん上がっていく士気に須藤先生もため息をついたものの、もう彼女に止めることは出来ない。
「話はまとまったようですな。それでは本題に入らせていただきましょう」
他の奴等が戦うという選択肢を取ったせいか王の機嫌はかなり良さそうだ。対照的に須藤先生は生徒たちが戦うことが不安なのかひたすらおろおろしていた。
「さて、それでは皆様ステータスを見てください。皆様の国にステータスという概念があったのかは存じ上げませぬが一応説明しておきますと、ステータスは頭に念じることで確認することが出来ますぞ」
俺が言われた通り頭の中で念じてみると、確かにステータスとやらが出てきた。
浅野悠一:LV1
体力 :HP17
魔力 :MP78
攻撃力 :32
防御力 :27
魔攻 :172
魔防 :128
敏捷度 :72
運 :117
正直これだけ見ても強いのかどうかさっぱり分からないが、物理戦闘よりも魔術戦闘の方が得意であることだけはわかった。
「確認できましたかな? それではこの表をご覧くだされ。ここには一般的なLV1をCランクとした場合のランク分けが書かれております。Dは苦手分野、Cは並、Bはそこそこ、Aは優秀、Sは全世界でも最高峰とみていただければよろしいかと」
んーどれどれ。一つずつ目通していくと、
体力:S ~82,A 81~58,B 57~38,C 37~22,D 21~
魔力:S ~65,A 64~47,B 46~27,C 26~13,D 13~
攻撃力:S ~102,A 101~88,B 87~63,C 62~40,D 39~
防御力:S ~76,A 75~49,B 48~32,C 31~17,D 16~
魔攻:S ~79,A 78~63,B 62~41,C 40~26,D 25~
魔防:S ~54,A 53~36,B 35~19,C 18~8,D 7~
敏捷度:S ~77,A 76~52,B 51~35,C 34~19,D 18~
運:S ~68,A 67~43,B 42~31,C 30~17,D 16~
 成る程。体力攻撃力はD、防御力はC、敏捷度はA、それ以外は全部Sか。分かっちゃいたが体力とかは向こうの世界でなかったからかここでも無いらしい。てかこれ割と俺強くね? 一人でラッキーと思っていると後ろの方で歓声が上がった。
「すげぇ! オールSかよ! さすがじゃねぇか!!」
「ハハハ、よしてくれよ。みんなだって強いじゃないか」
「いや私なんてオールAよ!? やっぱり亮君ってすごい!!」
騒ぎの中心にいるのは予想通り飯島だった。どうやらオールSだったらしい。リア充はこっちの世界でも強いようだ。
「おーいがり勉くーん! お前どうだったよ? ちなみに俺は攻撃力と防御力はSで、他魔力魔攻のD以外は全部Aだったぜぇ!?」
面倒なやつに絡まれた。毎度毎度この馬鹿はよく懲りないものだ。どうせ言葉のキャッチボールも出来ないのは目に見えてるし、時間を無駄にすると考えた俺は無視を決め込む。
「あれぇ!? ひょっとして言えない感じぃ? まっさか全部Dみたいな笑わせる結果だったとかぁ!?」
するとさらにまた馬鹿が二人ほど増殖する。
「さっすがにそりゃねぇよ加計~!! 一個くらいはAあったんじゃね?」
「いやいや全部Cだったりしてな! 強化貰っといて全部一般人レベル!!! 元どんだけ酷かったんだよって感じ!!」
俺に絡んできた順に加計昭、夏野平治、小平宗太。通称馬鹿トリオである。普段から三人でつるんでおり、俺に突っかかってくるアホども。一人でいるという脳味噌がないらしい。俺が三人の処理をどうしたものかと考えていると、
「ちょっと、そこ! 何やってるの!!」
突如横から三人に対する非難の声が聞こえてきた。
「い、いや何にもしてないだろ。ちょっと話してただけだって、な?」
加計の声が急に小さくなった。後ろの二人に至っては何も言えないのかただ黙って加計の言葉に何度もうなずくだけ。そしてそのまま奴らは恨みがましそうな視線をこちらに向けて去って行った。声の主は三人が立ち去るのを確認するとすぐこちらに駆け寄り、
「浅野君大丈夫? 何かされたりしてない?」
そう心配してくれるのは我がクラス随一の美少女にして委員長の木内愛梨。黒髪ストレートの大和撫子然とした容姿の通り、正義感が強く優しいことで有名な彼女にはあの三人を追い払う際にかなりお世話になっているため、感謝してもしきれなかったりする。加計達も美少女には弱いのだ。
「特に何もされてないから大丈夫だ。ありがとな」
そう言うと心底ほっとしたような表情をしていた。彼女の行為は見返りを求めない物だろうが、流石にそろそろお返しくらいはしないとまずいと思い、密かに昼飯くらいおごろうかと思っているのは内緒である。予め彼女に言ったらほぼ確実に悪いからと断られるのは目に見えているからだ。
「それでは確認も済んだようですし、いよいよスキル発表の時間ですぞ。ステータスの下を確認してみてくだされ」
三人を追っ払ってすぐ国王はそんなことを言い出した。俺がスキルって能力とやらのことでいいのかと考えていると、既に何人か見たらしく、
「私どこからでも敵を狙えるスキルだって!!」
「俺どんなものでも切れる能力だ!!」
割とどいつもこいつも強そうな能力を手にしていた。中でも飯島はやはりというべきか、
「お前勇者かよ!! やっぱちげぇぜ!!」
「飯島君凄い!! 私も一緒に戦うね!!!」
本人は困ったように苦笑していたが、悪い気はしないらしくその表情はどこか誇らしげだった。
「ねぇねぇ! 私たちも見てみようよ!」
俺が周りの能力をぼーっと確認していると、横からやけにテンションの高い木内から声をかけられた。彼女もなんだかんだで気になって仕方ないらしい。俺も一時的に周りの能力の確認を中断し、彼女の言葉にうなずき再びステータスを見る。
さてさて俺はどんな能力なのかな……、ん? いやちょっと待ってくれ。は?
「やったー! 私なんでも治せちゃうヒーラーだって!! そっちはどうだった!? ってあれ? 浅野君?」
木内が心配そうに顔を覗き込んでくるが俺は硬直したままだった。事態に頭が追い付いていかない。だって俺のスキル欄に書かれていたのは、
化学者:mp1を消費することで任意の化学物質を生成できる
この時、この瞬間に、俺一人だけ剣と魔法の世界において、元居た世界の技術を使って戦わなければならないことが決定されたのだった。
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