異世界といえば魔法? いいえ答えは化学物質です
圧倒
「とまれ!! 通行証を見せろ!!」
はぁ……。まぁこういう展開になりますよねそりゃあ。面倒だがこいつらを片付けないことには先に進めない以上仕方がない。
俺は片方の門番に手をかざし即座に塩酸を射出した。
「ぐぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!????」
そして相方が一瞬で無力化されたことに目を白黒させている兵士にも、同様に塩酸を射出する。これで二人か。脆すぎるな。
あまりにも簡単な仕事を終えた俺がそのまま門を開け中に入ってみると、
「止まれ侵略者!! ここから先にはいかせぬぞ!!」
予想通りそこには何百人もの兵士がいた。どいつもこいつも武装しているところを見ると、どうやら都市部での戦いが既にこちらにまで伝わっていたらしい。だがそんなことはどうだっていい。
「侵略? まるでてめぇらが正義みてぇな言い方だなオイ」
頭にくる。たまたま才能があったから、たまたま生まれが良かったから、そんなもので人を決めるようなやり方が心底むかつく。結局こいつらのやっていることはスケールを大きくしただけのいじめでしかない。自分たちを正義だと思っている救いようのなさがその事実を明確に示している。故に俺はこいつらに教えてやる必要がある。
「来いよ地位だけのぼんくら共が。世の中の厳しさを教えてやるよ」
言い終わると同時にとある物質を生成。騎士たちも同時に走り出したが、悲しいかな、ただでさえステータスがあまりにも違い過ぎる上こちらは飛び道具。彼らは確実に間に合わない。
「おせぇんだよ!!」
そのまま手にした物質を集団のど真ん中辺りに向けて投げつけ、直後爆音が響き渡った。
ニトログリセリン、狭心症治療薬としても使われるこの物質だが、本来の使用用途は爆薬。衝撃感度が高いおかげで小さい摩擦や衝撃でも簡単に爆発する。ちなみにこの物質の融点は大体常温以下のことが多く、最も危険な状態は溶けだしたとき、つまり手の中にあった個体のニトログリセリンを兵士にぶつければどうなるか。その答えは自明だ。
「な、なんだありゃあ!!」
「あんなもん聞いてねぇぞ!!!」
爆発で無力化できたのはせいぜい50人程度。まだ4分の3以上が残っているように見えるが、当初の目論見通りどいつもこいつも戦意喪失状態か錯乱状態に陥っている。後はもう処理だけ、再び俺は塩酸を生成しそのまま残った面々に浴びせていく。そして、
「あれ?」
どれくらい経ったかは分からないが、気づけばこの場に俺以外に立っている者は誰もいなかった。周りを見渡すとどこもかしこも死屍累々になった騎士だらけ。戦える状態でないことは一目瞭然だ。
「だらしねぇなぁ」
正義を語るくせにこの程度か。ステータスを見ても体力値が多少減っているだけに、戦いにすらなっていないとさえ言える。俺は地に伏した自称正義どもを尻目に城内に向かって走り出すのだった。
「弱すぎて作業になるなこれ」
城に入ってからも数戦騎士たちと交える羽目になったが、はっきり言って話にならない。基礎ステータスの時点で俺よりも遥かに劣っているし、聖騎士とかいう連中も筋肉を膨張させたり火を吹いたりと、はっきり言って色物しかいない。これでは塩酸だけで事が足りてしまうのは当然だ。
ため息をつきながら廊下を走っていると、奥の方に人影が見えた。
「おめでとう。よくここまで来たね、というべきかな?」
現れたのは30ちょいくらいにしか見えない男。虫も殺したことなさそうな顔をしているがこいつは武闘派なのだろうか。だがこの物言いからして撃破しなければならないことは確実だ。
「よくここまで来たも何もねぇよ。流石にここの警備担当してる連中弱すぎだ、少しは鍛えたら?」
俺がそう言うと一瞬男はぽかんとしたが、すぐに笑いだし、
「ハハハ!! 弱いか!! そうかそうか!!」
何がおかしいのだろうか。自分の仲間がやられたというのに笑ってられる神経がよく分からない。
「いやぁすまないね。君の意見には概ね私も同感だ。事実この城の連中なんて私一人でも殲滅可能だしね」
一瞬強がりかとも思ったが、それにしては自信に充ち溢れすぎている。ひょっとしなくても今まで戦った中で一番強い。
であればこちらも出し惜しみしている暇はない。初撃で決める。幸い男は余裕があるのかまだしゃべり続けているし、これなら当てられる。そう思いじりじり距離を詰め、そして50メートルまで縮めた瞬間俺は思い切り地面を蹴った。
「だから私は軍部の連中によく言っているんだよ。雑兵を増やすより既存の兵の練度を上げたほうが……、っておっと」
そのまま至近距離で塩酸を浴びせる。今回だけは力を出させずに終えた、はずだった。
「ひどいじゃないか全く。行動だけじゃなくて匂いまで酷いし……」
「は?」
異質な光景に俺は一瞬目を疑った。今確かに俺は奴に塩酸をかけたはずだ。事実奴の服は確かに濡れている、が、そこまで来てようやく気付いた。奴の皮膚が鋼色に変色していることに。
「成る程手から消化液を出す能力か。確かにこれは他の連中には荷が重いかもねぇ。けど残念」
言いながらも奴の変色は止まらない。そして奴の体は完全なグレー、いや、完全に金属と化した。まさかアイツの能力は……、
「私は体を鉄に変化させることが出来るのだよ。故に私には君の消化液は効かない」
はぁ……。まぁこういう展開になりますよねそりゃあ。面倒だがこいつらを片付けないことには先に進めない以上仕方がない。
俺は片方の門番に手をかざし即座に塩酸を射出した。
「ぐぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!????」
そして相方が一瞬で無力化されたことに目を白黒させている兵士にも、同様に塩酸を射出する。これで二人か。脆すぎるな。
あまりにも簡単な仕事を終えた俺がそのまま門を開け中に入ってみると、
「止まれ侵略者!! ここから先にはいかせぬぞ!!」
予想通りそこには何百人もの兵士がいた。どいつもこいつも武装しているところを見ると、どうやら都市部での戦いが既にこちらにまで伝わっていたらしい。だがそんなことはどうだっていい。
「侵略? まるでてめぇらが正義みてぇな言い方だなオイ」
頭にくる。たまたま才能があったから、たまたま生まれが良かったから、そんなもので人を決めるようなやり方が心底むかつく。結局こいつらのやっていることはスケールを大きくしただけのいじめでしかない。自分たちを正義だと思っている救いようのなさがその事実を明確に示している。故に俺はこいつらに教えてやる必要がある。
「来いよ地位だけのぼんくら共が。世の中の厳しさを教えてやるよ」
言い終わると同時にとある物質を生成。騎士たちも同時に走り出したが、悲しいかな、ただでさえステータスがあまりにも違い過ぎる上こちらは飛び道具。彼らは確実に間に合わない。
「おせぇんだよ!!」
そのまま手にした物質を集団のど真ん中辺りに向けて投げつけ、直後爆音が響き渡った。
ニトログリセリン、狭心症治療薬としても使われるこの物質だが、本来の使用用途は爆薬。衝撃感度が高いおかげで小さい摩擦や衝撃でも簡単に爆発する。ちなみにこの物質の融点は大体常温以下のことが多く、最も危険な状態は溶けだしたとき、つまり手の中にあった個体のニトログリセリンを兵士にぶつければどうなるか。その答えは自明だ。
「な、なんだありゃあ!!」
「あんなもん聞いてねぇぞ!!!」
爆発で無力化できたのはせいぜい50人程度。まだ4分の3以上が残っているように見えるが、当初の目論見通りどいつもこいつも戦意喪失状態か錯乱状態に陥っている。後はもう処理だけ、再び俺は塩酸を生成しそのまま残った面々に浴びせていく。そして、
「あれ?」
どれくらい経ったかは分からないが、気づけばこの場に俺以外に立っている者は誰もいなかった。周りを見渡すとどこもかしこも死屍累々になった騎士だらけ。戦える状態でないことは一目瞭然だ。
「だらしねぇなぁ」
正義を語るくせにこの程度か。ステータスを見ても体力値が多少減っているだけに、戦いにすらなっていないとさえ言える。俺は地に伏した自称正義どもを尻目に城内に向かって走り出すのだった。
「弱すぎて作業になるなこれ」
城に入ってからも数戦騎士たちと交える羽目になったが、はっきり言って話にならない。基礎ステータスの時点で俺よりも遥かに劣っているし、聖騎士とかいう連中も筋肉を膨張させたり火を吹いたりと、はっきり言って色物しかいない。これでは塩酸だけで事が足りてしまうのは当然だ。
ため息をつきながら廊下を走っていると、奥の方に人影が見えた。
「おめでとう。よくここまで来たね、というべきかな?」
現れたのは30ちょいくらいにしか見えない男。虫も殺したことなさそうな顔をしているがこいつは武闘派なのだろうか。だがこの物言いからして撃破しなければならないことは確実だ。
「よくここまで来たも何もねぇよ。流石にここの警備担当してる連中弱すぎだ、少しは鍛えたら?」
俺がそう言うと一瞬男はぽかんとしたが、すぐに笑いだし、
「ハハハ!! 弱いか!! そうかそうか!!」
何がおかしいのだろうか。自分の仲間がやられたというのに笑ってられる神経がよく分からない。
「いやぁすまないね。君の意見には概ね私も同感だ。事実この城の連中なんて私一人でも殲滅可能だしね」
一瞬強がりかとも思ったが、それにしては自信に充ち溢れすぎている。ひょっとしなくても今まで戦った中で一番強い。
であればこちらも出し惜しみしている暇はない。初撃で決める。幸い男は余裕があるのかまだしゃべり続けているし、これなら当てられる。そう思いじりじり距離を詰め、そして50メートルまで縮めた瞬間俺は思い切り地面を蹴った。
「だから私は軍部の連中によく言っているんだよ。雑兵を増やすより既存の兵の練度を上げたほうが……、っておっと」
そのまま至近距離で塩酸を浴びせる。今回だけは力を出させずに終えた、はずだった。
「ひどいじゃないか全く。行動だけじゃなくて匂いまで酷いし……」
「は?」
異質な光景に俺は一瞬目を疑った。今確かに俺は奴に塩酸をかけたはずだ。事実奴の服は確かに濡れている、が、そこまで来てようやく気付いた。奴の皮膚が鋼色に変色していることに。
「成る程手から消化液を出す能力か。確かにこれは他の連中には荷が重いかもねぇ。けど残念」
言いながらも奴の変色は止まらない。そして奴の体は完全なグレー、いや、完全に金属と化した。まさかアイツの能力は……、
「私は体を鉄に変化させることが出来るのだよ。故に私には君の消化液は効かない」
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