異世界といえば魔法? いいえ答えは化学物質です
謁見に来ました
シルヴィアから案内されること約十五分、俺たちは謁見の間に着いた。本来であれば王に謁見するにはアポが必要らしいのだが、今回はシルヴィアのおかげで特例としてアポなしで謁見してくれることになった。
「うちの馬鹿娘が迷惑をお掛けしたようで申し訳ありません。このお礼はいつか必ずいたします」
レイランの王はアデルの時とは違ってかなり腰が低いらしい。こちらが子供であるにもかかわらず高圧的な態度は一切取ってこない辺り。
「いえ、別にそこは構いません。それよりも彼女の命を狙う輩に心当たりはございませんか?」
的を絞るためにそう聞いたのだが、レイラン王はかなり困惑していた。
「い、いえ全く……。もともと我が国の王は先祖代々殺されるほど恨まれるようなことはなかったはずですが……。それもまだ王になっていない姫が狙われるなんてことは……」
恨まれることはない、ってことは怨恨の線はほぼ確実になくなったってことか。シルヴィアの容姿に惚れたストーカーの仕業だとしたらあの森での一件の説明がつかねぇし、ひょっとして貿易国であることが狙われたのか? いや、そしたら今度は第二王女が殺害された理由が思い浮かばない。
「あの、不躾ですが第一王女の線は。今この国では王を決めるために争っているんでしたよね? だとしたらそのような画策があっても不思議ではないのでは?」
しかし王は首を横に振り、
「いえ、それはあり得ません。なんせ本来であればセレナーデ、あ、いえあなた方で言う第一王女こそが王になるはずだったのですから。今のままであれば画策などする必要もなく彼女が王に選ばれます。三人の中で最も聡明な彼女であればそれくらいわかっているはずです」
なるほどな。レイラン王は娘だからという理由から疑わなかったわけではなく、状況的にありえないから疑わなかっただけか。となると余計に誰なのか分からない。
「ふむ、であればしばらくの間は黒幕を探し出すより刺客から彼女を守る方にシフトするしかなさそうですね」
これではいたちごっこになってしまうが仕方がないだろう。もし黒幕探しにかまけて目を離した隙にシルヴィアがやられましたなんてことになったら目も当てられない。
「お願いしますアデルの王。どうか娘を守ってやってください……」
そういってレイラン王は頭を下げ、今日の謁見は終了した。収穫は黒幕が第一王女である可能性は極めて低いということと、怨恨の線はほぼないということの二つしかなかった。
城から出た俺たちはそのままシルヴィアの屋敷に向かうことになった。屋敷は城から歩いて五分もかからない場所にあり、遠くからでも何十人もの兵士たちによって厳重に守られているのが分かる。こんなところからよく抜け出せたと思う。
「小さいころからよく抜けだしてましたし兵士やメイドたちの生活リズムも大体把握してますから」
しれっとそんなことを言っていたが顔に似合わず中々に活発な王女である。仮にこんなことがなくても抜け出して森に行くくらいのことはしそうだ。愛梨といいシルヴィアといい俺の周りには女性らしい性格した女が本当に少ない気がする。
「シルヴィア様!! よくぞご無事にお戻りで……」
屋敷に着くと、玄関から一人のメイドが涙を浮かべながら飛び出してきた。背丈はそこそこ高く、至って正統派美人という感じではあるのだが、にしてはやけに耳がとがっているような……。
「心配させてすみません。ほら、この通り私は無事ですから」
そう言いながらシルヴィアはメイドをなだめていた。そうして五分くらい経った頃だろうか、ようやく泣き止んだメイドはこちらに気づいたらしく、
「えっと……」
まぁ主人が見知らぬ人間三人も連れて帰ってきたわけだからそりゃ戸惑うよ。とりあえず警戒を解くためこちらから自己紹介をする。
「初めまして、浅野悠一っていいます。一応アデルの国王をやらせてもらっていて、後ろの二人は旅の連れで、僕の右後ろが木内愛梨、左後ろがリィンです。シルヴィアさんとは迷いの森でお会いし、その縁で少しの間こちらの国に滞在することになりました。短い間にはなりますがよろしくお願いします」
「あ、いえこちらこそ! 紹介遅れました、お嬢様の付き人をやっているマリアと申します! その節はお嬢様がお世話になったみたいでなんとお礼を言ったらいいか……」
「いえいえお礼なんてそんな……。困っている人がいれば助けるというのが僕のモットーですから」
意識すべきは常に笑顔。これで彼女の中で僕の株はだいぶ上がったはず。
「僕? あの、なんかユーイチさんキャラ変わり過ぎじゃ……」
「男って美人に弱いから。昔から知ってるけどあんな礼儀正しくしてる悠一君初めて見るよ」
「あ、あれ? 私初めて会った時礼儀正しくされなかったような……? それって、つまりそういうことなんです……?」
外野が口々に勝手な事を言っていたが別に俺は美人に弱いわけではない。いや弱いけどそんなことで態度を変える人間じゃない。
「いいか、お前らに足りないのは外見じゃない。女性らしさだ!!」
『余計失礼なんだけど(ですが)!?』
全員不服そうな顔をしているが事実なんだから仕方ない。というか違う扱いされたいなら外見変えろみたいな無茶言ってないんだからちょっとは努力して欲しい、いやというかリィン、お前不服そうな顔しているが俺そんなにお前のこと雑に扱っていたか? 割と俺娘や妹みたいに可愛がってた気がするからその反応はショックなんだが……。
「ま、まぁその辺りは追々話し合うとして……。マリア、客人用の部屋は空いてますか?」
「えっと、後で一応確認しますが確か全て空いていたように思います」
「わかりました。それでは彼らを客室に案内してください」
「はい!」
今の言い方からするに屋敷の客室の数は相当数あるのだろう。というか特に予定とか入れてなくてもすぐにもてなしの準備に入れる辺り、アデルとは圧倒的な財力の差を感じる。……………………悲しくなるからこれ以上考えるのはやめよう。
「それでは皆様こちらに」
マリアは俺のそんな葛藤には気づかなかったようで、彼女はそう言いながらいつの間にか俺の前に行っていた二人とともに屋敷に入って行った。そして俺も彼女たちに置いて行かれないよう、彼女たちの後ろに続き屋敷に入るのだった。
「うちの馬鹿娘が迷惑をお掛けしたようで申し訳ありません。このお礼はいつか必ずいたします」
レイランの王はアデルの時とは違ってかなり腰が低いらしい。こちらが子供であるにもかかわらず高圧的な態度は一切取ってこない辺り。
「いえ、別にそこは構いません。それよりも彼女の命を狙う輩に心当たりはございませんか?」
的を絞るためにそう聞いたのだが、レイラン王はかなり困惑していた。
「い、いえ全く……。もともと我が国の王は先祖代々殺されるほど恨まれるようなことはなかったはずですが……。それもまだ王になっていない姫が狙われるなんてことは……」
恨まれることはない、ってことは怨恨の線はほぼ確実になくなったってことか。シルヴィアの容姿に惚れたストーカーの仕業だとしたらあの森での一件の説明がつかねぇし、ひょっとして貿易国であることが狙われたのか? いや、そしたら今度は第二王女が殺害された理由が思い浮かばない。
「あの、不躾ですが第一王女の線は。今この国では王を決めるために争っているんでしたよね? だとしたらそのような画策があっても不思議ではないのでは?」
しかし王は首を横に振り、
「いえ、それはあり得ません。なんせ本来であればセレナーデ、あ、いえあなた方で言う第一王女こそが王になるはずだったのですから。今のままであれば画策などする必要もなく彼女が王に選ばれます。三人の中で最も聡明な彼女であればそれくらいわかっているはずです」
なるほどな。レイラン王は娘だからという理由から疑わなかったわけではなく、状況的にありえないから疑わなかっただけか。となると余計に誰なのか分からない。
「ふむ、であればしばらくの間は黒幕を探し出すより刺客から彼女を守る方にシフトするしかなさそうですね」
これではいたちごっこになってしまうが仕方がないだろう。もし黒幕探しにかまけて目を離した隙にシルヴィアがやられましたなんてことになったら目も当てられない。
「お願いしますアデルの王。どうか娘を守ってやってください……」
そういってレイラン王は頭を下げ、今日の謁見は終了した。収穫は黒幕が第一王女である可能性は極めて低いということと、怨恨の線はほぼないということの二つしかなかった。
城から出た俺たちはそのままシルヴィアの屋敷に向かうことになった。屋敷は城から歩いて五分もかからない場所にあり、遠くからでも何十人もの兵士たちによって厳重に守られているのが分かる。こんなところからよく抜け出せたと思う。
「小さいころからよく抜けだしてましたし兵士やメイドたちの生活リズムも大体把握してますから」
しれっとそんなことを言っていたが顔に似合わず中々に活発な王女である。仮にこんなことがなくても抜け出して森に行くくらいのことはしそうだ。愛梨といいシルヴィアといい俺の周りには女性らしい性格した女が本当に少ない気がする。
「シルヴィア様!! よくぞご無事にお戻りで……」
屋敷に着くと、玄関から一人のメイドが涙を浮かべながら飛び出してきた。背丈はそこそこ高く、至って正統派美人という感じではあるのだが、にしてはやけに耳がとがっているような……。
「心配させてすみません。ほら、この通り私は無事ですから」
そう言いながらシルヴィアはメイドをなだめていた。そうして五分くらい経った頃だろうか、ようやく泣き止んだメイドはこちらに気づいたらしく、
「えっと……」
まぁ主人が見知らぬ人間三人も連れて帰ってきたわけだからそりゃ戸惑うよ。とりあえず警戒を解くためこちらから自己紹介をする。
「初めまして、浅野悠一っていいます。一応アデルの国王をやらせてもらっていて、後ろの二人は旅の連れで、僕の右後ろが木内愛梨、左後ろがリィンです。シルヴィアさんとは迷いの森でお会いし、その縁で少しの間こちらの国に滞在することになりました。短い間にはなりますがよろしくお願いします」
「あ、いえこちらこそ! 紹介遅れました、お嬢様の付き人をやっているマリアと申します! その節はお嬢様がお世話になったみたいでなんとお礼を言ったらいいか……」
「いえいえお礼なんてそんな……。困っている人がいれば助けるというのが僕のモットーですから」
意識すべきは常に笑顔。これで彼女の中で僕の株はだいぶ上がったはず。
「僕? あの、なんかユーイチさんキャラ変わり過ぎじゃ……」
「男って美人に弱いから。昔から知ってるけどあんな礼儀正しくしてる悠一君初めて見るよ」
「あ、あれ? 私初めて会った時礼儀正しくされなかったような……? それって、つまりそういうことなんです……?」
外野が口々に勝手な事を言っていたが別に俺は美人に弱いわけではない。いや弱いけどそんなことで態度を変える人間じゃない。
「いいか、お前らに足りないのは外見じゃない。女性らしさだ!!」
『余計失礼なんだけど(ですが)!?』
全員不服そうな顔をしているが事実なんだから仕方ない。というか違う扱いされたいなら外見変えろみたいな無茶言ってないんだからちょっとは努力して欲しい、いやというかリィン、お前不服そうな顔しているが俺そんなにお前のこと雑に扱っていたか? 割と俺娘や妹みたいに可愛がってた気がするからその反応はショックなんだが……。
「ま、まぁその辺りは追々話し合うとして……。マリア、客人用の部屋は空いてますか?」
「えっと、後で一応確認しますが確か全て空いていたように思います」
「わかりました。それでは彼らを客室に案内してください」
「はい!」
今の言い方からするに屋敷の客室の数は相当数あるのだろう。というか特に予定とか入れてなくてもすぐにもてなしの準備に入れる辺り、アデルとは圧倒的な財力の差を感じる。……………………悲しくなるからこれ以上考えるのはやめよう。
「それでは皆様こちらに」
マリアは俺のそんな葛藤には気づかなかったようで、彼女はそう言いながらいつの間にか俺の前に行っていた二人とともに屋敷に入って行った。そして俺も彼女たちに置いて行かれないよう、彼女たちの後ろに続き屋敷に入るのだった。
「ファンタジー」の人気作品
書籍化作品
-
-
11128
-
-
444
-
-
140
-
-
40
-
-
107
-
-
1
-
-
70812
-
-
1359
-
-
3395
コメント