もう一つの片思い
5話 妹が本当に言いたかったこと
俺たちは遊ぶ気がなくなり、家に帰ることになった。帰宅中、俺たち3人はただただ無言だった。下を見てトボトボ帰る華恋の姿に翔太は追い打ちをかけるように「素直に謝ろうよ!かれんちゃんなら出来るよ!」と言っていたが華恋はさらに黙り込んでしまった。
翔太の言っていることは一里ある。確かにあの時謝らなければならなかった。でも、華恋はそれより気づいてほしかったことがある。
そう、華恋は俺たちが謝る前にちゃんと謝っていた。ただ、その言葉はかき消されてしまい聞こえなかった。再度俺が「ごめんは?」と言ったのはチャンスを華恋に与えたつもりだった。だが、この時華恋は「私、ちゃんと謝ったよ!」言える状態ではなかった。言えてたら俺がフォローしたのに…。
帰宅後、「ただいまー」と俺だけ言い、華恋は走って自分の部屋へと逃げ込んだ。兄弟げんかでもしたのかと母親に言われたが俺は横に首を振った。そして、事の経緯を話したら「それは華恋が悪いね。ママからも言っとくから。」と言った。だが、母親にはこのことだけは分かってほしかった。誰だって自分の兄妹を悪く言いたくない。だから、「ほんとは僕たちがごめんなさい言う前にちゃんと言っていたよ、ごめんなさいって。」と付け足した。
母親は俺が何でそのことを言ったのか察して「分かった。でも、ちゃんと伝えないとダメよって華恋に伝えといてくれる?お兄ちゃんの特権で!」と言われ俺も母親の本当の意味を理解した。
俺は華恋の部屋に行った。予想通り華恋はベッドの上で泣いていた。嗚咽を漏らしつつ手で顔を覆い隠す妹にティッシュ箱で頭をパコっと叩いて渡した。
ティッシュ箱を手に取り、ティッシュを取り出し、鼻をかんだ妹の隣にどかっと座った。チラッと妹を見た。その顔からして、翔太に言われたことに納得のいかないことと、ちゃんと謝れば良かったという後悔、親に怒られたらどうしようという不安が表れていた。
俺は正面を向き直って妹に口を開いた。
「なあ、華恋。」
その言葉にビクッとする妹は、きっと怒られるとでも思っているのだろう。
だが、俺はその不安を消し去る言葉を妹に呟くのだった。
「俺たちが謝る前にちゃんとごめんなさいって謝っていたな。」
「え?」
俺の意外な言葉に妹は驚きを隠せなかった。何で知っているの?と言わんばかりの妹は俺の方を向いた。びっくりして涙も止まったようだ。少し落ち着いて聴けるように俺は静かに話し始めた。
「俺、ちゃんと聞いていたよ。ちゃんと言っていた。でも、あの子大泣きでさ、かき消されちゃったな。あはは。」と笑っても見せた。
ふふふっと妹も俺につられて笑った。
「うん、せっかく…っせっせ、せっかく、いっいっ言ったのに!」またもや大粒の涙を目からこぼす。
「そう、せっかく言ったのにな〜。悔しいよな〜。あの子に伝わらなくて。」
俺は妹の方を向いて話し出す。
妹はせっかく謝ったのに相手に伝わらなかったことがすごく悔しかった。それと…。
「翔太も翔太だよな〜。」
ビクッ!
妹は自分の事を見透かされているようで驚いていた。これで完璧涙は止まった。
「でもさ…」と俺は妹の方を見て、母親が言ったことを伝えた。
「ちゃんと言ったって言っても、あの子にちゃんと言わなきゃいけないよな?」
またその顔。ああ、ずるいわ。
だが、今回は眉をひそめるが「そぉだよね…」と呟いた。
「ちゃんと言いたかったのにっ。言えなかったよぉ〜。ううっ。うわぁーん!!!!」
妹はこれでもか!というくらい大泣きしていた。相当悔しくて、でもちゃんと謝れば良かったことに罪の意識を感じているんだろう。反省していることがわかるくらいだ。
俺は妹に「じゃあ、今度またあの公園に行ってみよう。そしてちゃんと謝ろう。な?」と伝えたら、俺の方を向き勢いよく抱きしめてきた。俺は妹が抱きついてくることにびっくりしたが更に大泣きすることの方が驚き、とっさにこの前の母親がしたように「よしよし」と頭を撫でて泣き止むようにあやした。
母親はその様子をドアの外側で聴き、途中で帰ってきた父親に「お兄ちゃんになっちゃって。」と涙を浮かべて呟いた。父親は「そうだな」と短く返事をした。
「2人とも、ご飯よう!」という母親の言葉で俺と妹は元気よく「はーい!」と言うのであった。
翔太の言っていることは一里ある。確かにあの時謝らなければならなかった。でも、華恋はそれより気づいてほしかったことがある。
そう、華恋は俺たちが謝る前にちゃんと謝っていた。ただ、その言葉はかき消されてしまい聞こえなかった。再度俺が「ごめんは?」と言ったのはチャンスを華恋に与えたつもりだった。だが、この時華恋は「私、ちゃんと謝ったよ!」言える状態ではなかった。言えてたら俺がフォローしたのに…。
帰宅後、「ただいまー」と俺だけ言い、華恋は走って自分の部屋へと逃げ込んだ。兄弟げんかでもしたのかと母親に言われたが俺は横に首を振った。そして、事の経緯を話したら「それは華恋が悪いね。ママからも言っとくから。」と言った。だが、母親にはこのことだけは分かってほしかった。誰だって自分の兄妹を悪く言いたくない。だから、「ほんとは僕たちがごめんなさい言う前にちゃんと言っていたよ、ごめんなさいって。」と付け足した。
母親は俺が何でそのことを言ったのか察して「分かった。でも、ちゃんと伝えないとダメよって華恋に伝えといてくれる?お兄ちゃんの特権で!」と言われ俺も母親の本当の意味を理解した。
俺は華恋の部屋に行った。予想通り華恋はベッドの上で泣いていた。嗚咽を漏らしつつ手で顔を覆い隠す妹にティッシュ箱で頭をパコっと叩いて渡した。
ティッシュ箱を手に取り、ティッシュを取り出し、鼻をかんだ妹の隣にどかっと座った。チラッと妹を見た。その顔からして、翔太に言われたことに納得のいかないことと、ちゃんと謝れば良かったという後悔、親に怒られたらどうしようという不安が表れていた。
俺は正面を向き直って妹に口を開いた。
「なあ、華恋。」
その言葉にビクッとする妹は、きっと怒られるとでも思っているのだろう。
だが、俺はその不安を消し去る言葉を妹に呟くのだった。
「俺たちが謝る前にちゃんとごめんなさいって謝っていたな。」
「え?」
俺の意外な言葉に妹は驚きを隠せなかった。何で知っているの?と言わんばかりの妹は俺の方を向いた。びっくりして涙も止まったようだ。少し落ち着いて聴けるように俺は静かに話し始めた。
「俺、ちゃんと聞いていたよ。ちゃんと言っていた。でも、あの子大泣きでさ、かき消されちゃったな。あはは。」と笑っても見せた。
ふふふっと妹も俺につられて笑った。
「うん、せっかく…っせっせ、せっかく、いっいっ言ったのに!」またもや大粒の涙を目からこぼす。
「そう、せっかく言ったのにな〜。悔しいよな〜。あの子に伝わらなくて。」
俺は妹の方を向いて話し出す。
妹はせっかく謝ったのに相手に伝わらなかったことがすごく悔しかった。それと…。
「翔太も翔太だよな〜。」
ビクッ!
妹は自分の事を見透かされているようで驚いていた。これで完璧涙は止まった。
「でもさ…」と俺は妹の方を見て、母親が言ったことを伝えた。
「ちゃんと言ったって言っても、あの子にちゃんと言わなきゃいけないよな?」
またその顔。ああ、ずるいわ。
だが、今回は眉をひそめるが「そぉだよね…」と呟いた。
「ちゃんと言いたかったのにっ。言えなかったよぉ〜。ううっ。うわぁーん!!!!」
妹はこれでもか!というくらい大泣きしていた。相当悔しくて、でもちゃんと謝れば良かったことに罪の意識を感じているんだろう。反省していることがわかるくらいだ。
俺は妹に「じゃあ、今度またあの公園に行ってみよう。そしてちゃんと謝ろう。な?」と伝えたら、俺の方を向き勢いよく抱きしめてきた。俺は妹が抱きついてくることにびっくりしたが更に大泣きすることの方が驚き、とっさにこの前の母親がしたように「よしよし」と頭を撫でて泣き止むようにあやした。
母親はその様子をドアの外側で聴き、途中で帰ってきた父親に「お兄ちゃんになっちゃって。」と涙を浮かべて呟いた。父親は「そうだな」と短く返事をした。
「2人とも、ご飯よう!」という母親の言葉で俺と妹は元気よく「はーい!」と言うのであった。
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