お嬢様は軍師様!

葉月 飛鳥

幕間 マリアside


私はマリア。
生まれは王都から離れた小さな田舎。
特産物や観光地みたいな場所がなく、本当にのどかな場所で母親と2人で生きてきた。

毎日、水汲みをして、掃除をして、洗濯をして平民の子供の生活をしていたの。
でも、私は普通の子供とはちょっと違っていた。
普通の子にはない力があった。

「マリアちゃん、大変そうだね。手伝ってあげよう。」
「マリアちゃん、これ食べて」
「マリアちゃん、これマリアちゃんに似合うと思って買ってきたんだ。どう?」
「ありがとー!!スッゴくうれしい!」

きっかけは、わからなかった。
これが普通のことだと思っていたし、モノなんて他の子もきっと両親からもらっていることなんだなと思っていたから。
でも、私が普通の子とは違うと意識したのは10歳ぐらいのころ。
ある日、私がいつものように井戸から水を運んでいると、村の女の子達が集まっておしゃべりをしている所を見かけた。

「えっー!スッゴくキレイ!」
「でしょ。これ、パパが王都で買ってきてくれたの。」
「王都まで?いいなぁー。」
「パパは何でも買ってくれるのー。」

女の子の1人が自慢げに見せている、キラキラとした赤い石ペンダント。
この村のアクセサリーといったら木彫りのモノしかないから、石のアクセサリーは持っているだけで自慢になる。
それに、あの子は村長の1人娘。
今持っているアクセサリーの他にも着ている洋服だって、他の子供とは違って明るくてキレイな服を着ている。

「今度、私も王都に連れてってくれるってパパが言ってたの。そしたら王都でドレスを買ってもらうの。」

(私もほしいな・・・。)

私だって年頃の女の子。
アクセサリーだってほしいし、キレイなドレスもほいし。
でも、この村にいれば願いは叶う事がない。
毎日毎日、家の手伝いばかり。
遊ぶことも出来ないし、お金もないから無駄な物をなんて買えない。
お母さんに頼んでも「無理よ。そんなお金はないのよ。」だと答えるだろう。
でも、どうしても欲しかった。
あの子が持っているペンダント。
同じ物ではなくて、もっと大きくてキレイな物を・・・。

(毎日、キレイな服を着てアクセサリーもつけたいなぁ・・・。)

私は毎日、願った。
朝、家を出るときは太陽に。
夜、眠る前には窓から見えるお星さまに。
毎日欠かさず願った。
『いつか願いが叶う日がくるのだろう』、そう信じて願っていた。 

そして、私の願いが叶った。 
ある日、偶然この村に来た領主様がわたしの顔を見て「養女にしたい。」といきなり言ってきた。 
なんでも領主様は事故で一人娘を亡くして、悲しみのドン底にいたけど、偶然、立ち寄った村に娘とそっくりな私を見つけ、ぜひ養女に迎えたいとのことだった。
あまりにも唐突なことで、どう言っていいのかわからなかったけど、私は願いがかなったのだと思い、「養女になりたい。」とその場で答えた。 
それから私は幸せだった。
毎日、キレイなお洋服を着て1日のんびり過ごしていた。
朝早く起きて水を運ばなくていい。
代わりにメイドがやってくれるから。 
洗濯だって、掃除だって代わりにやってくれる。
料理だってやらなくてもいい。
だって専属の料理人がいるから。 
毎日、高級食材を使った料理が出てきて、とても美味しかった。

(わたしってスゴい?もしかしたら願えば、なんでも叶えてくれるのかしら?)

そう思った時、今までの事が普通ではないと思うようになった。
水を溢してしまった時、必ず大人が来て代わりに水を汲んできてくれた事もあった。
村の子供達と森に行った時、野生の動物に襲われも大きな怪我なんてしたこともない。
お腹が空いた時には、お菓子などをもらっていた。
なぜ、自分がこんなにも幸運なのか。
一度だけお義父様に聞いてみた。

『それは、マリアがとても皆から愛されているからだよ。』

その言葉に、ストンと何かが収まった感じがした。
みんなが助けてくれるのは、自分が1番愛されているから。
みんなが物をくれるのは、みんなに愛されているから。
そして、願いを叶えてくれるのは、世界に愛されているから。

(そうよ、きっとそうよ。私は、みんな・・・いや、世界に愛された子供なの。) 

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