お嬢様は軍師様!

葉月 飛鳥

お嬢様 罠を仕掛ける 6 クロームside

「・・・・・・・あーはっはっはっはっはっ!!おまえ、面白いなぁ!!」

攻撃をしてくるかと思ったのに、相手は突然腹を抱えて大笑いをした。
意外にも声をかなり大きい。
さっきまで刃を交えていたはずなのに、これで一気に戦意が消えてしまった。

(なんだ・・・急に・・・)

クロームは剣を下ろした。
なんで、急に笑いだしたのか。
理由が本当にわからない。

「あの・・・。」
「あーごめん、ごめん。急に、『俺の好きな人は軍師様だー』って言うから笑っちゃって・・・。」
「笑う事ですか??」

そんなに笑うことでもないはずだ。
相手のセリフに少しイラッと来た。
正直に言って何が悪い。

「えーっ!だって、あの時と変わっていないじゃん、君。また、殴られても知らないよ。」

(・・・・今なんて言った。)

衝撃が強すぎて、体が動かない。
俺があの時と変わらない??
殴られても知らない??
何故、相手がその事を知っているのか。
マリアは意味がわからないみたいで、首を傾げている。
それもそうだろう。
あの時いたのは、クロームの父セバスとオーガスタとクローム。
そして、軍師様が率いていた兵士達。
ということは・・・

(軍師様を知っている!)

「貴方は軍師様のこと知っているのですか!!教えて下さい!」
「えっ・・・ちょ・・騎士君??」
「知りたいのです!軍師様のこと!」

「何をしているのですか、フェイ。」
「げっ!!セラ!!」
(女性・・・??)

新たな人物がクロームの前に現れた。
さっきの黒装束の人物とは違い、この女性は黒いワンピースに白のエプロンを着用している。
この人はメイドなのか。
メイドだとしても、なんでここにいるのだ。

「全く・・・何故、ここにいるのですか?貴方の場所はここではないはずです。」
「えーっと・・・作戦まで時間があるから、遊んでようと思って・・・・・ちょっとセラ!!殺気はやめて!!」
「不真面目な・・・。どうするのですか?この2人は・・・」

メイド服の女性が、じっとクローム達を見た。
睨み付けて見ているから、正直に言って怖い。
横にいるフェイは、本気で恐れているのか。冷や汗がダラダラと流れている。

「それは・・・。」
「はぁ~。このまま去れば不信感を抱き、足を引っ張るのが目に見えていますので、私がここにいます。」
「えっ!!大丈夫なのか、あの方の傍にいなくても??」
「部下がいますので、まず大丈夫です。」
「そっそうか!ごめんなっ!」
「あっあの!!フェイさ・・・」

フェイはさっさとこの場所から去ってしまった。
よほど、この場所にいたくはなかったのであろう。
今、この場にいるのは、クロームとマリアとメイド服を着た女性だけ。
メイド服の女性はたしかセラといっていた気がする。
見た感じ、しっかりとした女性で、さっきも思ったことだが、何故この場所にいるのか不思議なぐらいだ。
本当は、疑問に思っていることを聞きたい所なのだが、この人にどう話しかけていいのか迷ってしまう。

「あ・・・あの・・・」
「先ほどは大変失礼を致しました。クローム・サジタリア様。」
「私の名前を知っているのですか?」

この女性とは初めて会ったはずなのに、何故クロームの名前を知っているのか。
驚きを感じた。
どこかで会ったことがあっただろうか。
思い出せない。

「名前だけ存じ上げているだけです。先ほど申し上げた通り、お仲間と合流するまで護衛致しますので、はぐれないようお願いしますよ。」
「護衛など・・・。自分の身は自分で守れますので大丈夫です。彼女だけをお願いします。」

メイド服の女性、セラさんには申し訳ないが
自分は剣を持っている。
それに騎士団までの腕は持っていないが、ある程度の強さをもっていると自負をしている。
もし、敵と剣を交える場合になっても足手纏いには、ならないはずだ。
そう思いながら、はっきりとセラに伝えた。
後ろにいるマリアも、同じ考えだったらしく、頷いている。
でも、セラの顔は目が鋭く無表情だった。

「サジタリア様、もう一度言います。貴女方は作戦の邪魔になりますので、手出ししないで下さい。足手纏いです。」

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