お嬢様は軍師様!
お嬢様 入学する
(フフフ・・・・ついに・・・ついに来てしまった)
アメリア・ヴィクトリア 16歳。
ただいま私は恋愛ゲーム『セイント王国~赤の絆~』の学園である、ソラリア学園に来ている。
今日はゲームでは定番である入学式。
ここでアメリアの運命が決まると言っても過言ではない。
(大丈夫よ、私。その為に努力をしてきたじゃない・・・)
クロームとの追いかけっこ?から、はや数年。
あの日からアメリアは、何処にも行かず、ずっとヴィクトリア領にいた。
いわゆる引きこもりと言うものだ。
(いかに学園生活を目立たず平穏に過ごすか・・・)
ーーーあの追いかけっこの時、アメリアは隠し持っていた煙幕を使ってクロームから逃げた後、そのまま馬車へと駆け込んだ。
馬車で待機をしていたロンはアメリアの異常に気づいて『どうなさいました?』と聞いてきたが、アメリアは答える気力もない。
ロンはアメリアから何かを察したのであろう。
そのまま何も言わず外に出ていった。
そしてアメリアは、そのままイーゼスが戻ってくるまでずっと中で待っていた。
あれから領に引きこもり数年間。
舞踏会のイベントをズル休みをし、自分の御披露目もせず、考えて考えて考え抜いた結果、アメリアは学園逆デビューをすることにした。
長い黒髪は三つ編みのおさげ。
顔隠しの為に牛乳ビン底みたいな厚い伊達眼鏡。
見た目は田舎から出てきた令嬢みたいだ。
(アメリア・ヴィクトリア!!いざ、参る!)
******
ーーーソラリア学園ーーーー
セイント王国唯一の王立学園。
『誇り高き騎士であれ、淑やかな淑女であれ』を掲げ、多くの貴族を育て上げてきた伝統ある学園である。
学園では、王国貴族の子息や令嬢達は敷地内にある学生寮で過ごすこととなる。
そしてアメリアは今、学園内にある図書館にいる。
(確か、ここで主人公の登場イベントが始まるのよね)
図書館の窓ガラスから庭園を見ると、庭園に植えてある大きなリンゴの木や木の下ある色とりどりな花畑。
真ん中には白い噴水の水が光を受けてキラキラと光っている。
「キャー!殿下よ!」
「とても麗しいわ・・・。」
「クローム様も素晴らしい・・。」
令嬢達が黄色い声で叫ぶ中、オーガスタ殿下を先頭に一団が通る。
オーガスタ・セイント
セイント王国の一人息子。
髪は金髪で光を受けるとキラキラと光る。
瞳は、海の様な蒼い瞳。
「で・・・殿下。これ・・・どうぞ・・。」
令嬢の一人が、緊張しながら黄色の花でまとめあげた花束を渡した。
「ありがとう。嬉しいよ。」
「キャー!!」
オーガスタがそっと花束を受けとり、そのままニコリと微笑むと、令嬢達から黄色い声が上がる。
「オーガスタ様。私がもちます。」
「ありがとう、クローム。でも大丈夫だ。」
説明は必要ないと思うが、一人だけ説明されないというのは、寂しい気がするので、改めて説明しましょう。
名前はクローム・サジタリア。
英雄と称えられたセバス・サジタリアの息子。
髪色は漆黒で瞳の色は金色だ。
「しかし・・・」
「クロームはお堅いなぁ~。殿下、そのままデートでも誘えばよかったのに・・・」
「アルト・アディジェ!」
「冗談だよ。冗談。」
クロームと言い争っているこの男、名前はアルト・アディジェ。
見た目は赤髪、黒目のチャラ男。
こいつも攻略対象の一人だ。
アルトの父親は宰相をしているが家との関係が良くなくて、厄介者扱いをされているらしい。
「僕だったら花より甘いものがいいなぁ~。ねー、ポール。」
「はい・・・。」
アルト・アディジェの後ろであるいているのがヒューデガルド・ブライト。
灰色の髪と瞳をもつ、セイント王国一の商人一族。
兄弟が多く末弟の為、幼いころから可愛いがられていて、学園でもアイドル扱いをされている。
いつもポールと一緒に行動している。
ついでに言っておくが、ヒューデガルドとポールも攻略対象だ。
(・・・ここで主人公が出てくるのよね)
ゲームでは学園へ入学してくる攻略対象者達が揃った所で、リンゴの木からヒロイン=マリアが落ちてくるイベントが発生する。
ヒロインのマリアは木の上で動けなくなってしまった猫を助けようとするのだが、一緒に落ちてしまい、起き上がる際にオーガスタに手を借りて立ち上がり、そこで初対面となる。
(けど、なにもしない私ではないわ!)
アメリアは心の中でガッツポーズをする。
この日にイベントがあることを知っていたアメリアはある作戦を考えていた。
(物がなければイベント発生などしない!)
アメリアはヒロインとの出会いイベントを発生させないよう、事前に兄に頼み込んで庭園にいる猫を回収し、飼い主に返していた。
でも、もしかしたら飼い猫ではなく野良猫である可能性も考え、野良猫もアメリアが引き取っている。
因みに引き取った野良猫達は、王都でネコカフェなるものを出し、これが庶民に大人気。
けっこう繁盛させてもらっている。
(これでイベントが発生しなければ・・・)
「キャーーーー!!」
ドサッーー
(えっ嘘!)
木の上から何かが落ちてきた。
しかも、落ちた場所はオーガスタ達の前。
「いたた・・・。あっ・・ネコちゃん大丈夫?」
(何故、ヒロインが・・・)
事前に確認はしたはずだ。
オーガスタ達が来るギリギリまで、ネコどころか他の動物まで来ていないか確認をしたはずなのに。
「あ~良かった。怪我がなくて・・・。」
ヒロインはそのまま猫を持ち上げニッコリと笑った。
「君、大丈夫?」
「えっ??あっっ、ごめんなさい!」
オーガスタに声をかけられて、ヒロインはビックリして声がある方へ顔を上げた。
「立てるかな?」
オーガスタはそう言いながら、スッとヒロインに手を差しのべる。
ヒロインはそのまま、オーガスタの手を取りゆっくりと立ち上がった。
「あ・・・ありがとうございます。」
「怪我がなくてよかったね。」
「私、マリアと言います。あなたのお名前を教えてくれませんか?」
「私はオーガスタと言います。」
「オーガスタ様・・・。」
(い~や~~。せっかく頑張ったのに~~~。)
アメリアは頭を抱えた。
(何でネコがいるのよ!ちゃんと確認したはずなのに!)
ちらっと見てみると、ヒロインであるマリアの腕の中には、赤い首輪のついた白いネコが収まっている。
(あれ・・・?あのネコ、おかしくないか・・・)
木に登っていたはずなのに体が汚れていない。
黒とか茶色とか他の色であったら、多少汚れていても目立たないのだが、あのネコは白色だ。
目立たない訳がない。
(まさか、あのヒロイン・・・)
アメリアはある仮説を考えた。
そんな訳あるわけがないと思うが、全くないとは言い切れない。
だが、確証となる証拠はない。
(いや・・・落ちつきなさい。アメリア・ヴィクトリア・・)
まだ、学園生活は始まったばかりなのだから・・・
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