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チート無しクラス転移〜〜Be chained(ベチーン)〜〜

キズミ ズミ

三章 9話 『ごめんなさいとありがとう』





「おいジゴロン、いい加減にしろよ」

 ジゴロンさんが激昂し、自分の感情を思うさま吐露とろした直後、その背後から野太い声が投げられた。

「さっきからずーっと話を聞かせてもらっていたよ。姉ちゃん、名前はなんてンの?」

 声をかけてきたのは、顔に刻まれた大きな十字傷が特徴の男だった。言葉を中断された事で若干不満げなジゴロンさんの視線を気にする様子もなく、彼は悠然とあご髭をこすり、問いかけてくる。

「ま、マドリです」

「ほうか、マドリちゃんか。変わった名前だが、良い名前だぁ。あ、ワシはネクストってゆーんだ」

「・・・は、はぁ」

 十字傷の男、ネクストさんは鼻から大きく息を吸い込み、何かを堪能たんのうする様に目を閉じている。

 なんなんだろうこの人・・・。多分良い人なんだろうけど、何を考えてるのかよく分からない。

「マドリちゃん。今、歳はいくつだい?」

「えぇっと、16歳です」

「ほぅ!これは偶然、ワシと同い年だ!」

 ・・・嘘つけっ!!

 ワタシは心の中で呆れ混じりのツッコミを入れた。眼前のネクストさんは明らかにワタシとは親子以上の年齢差があるだろう。

「プ・・・・・・ッ!」

 と、どこか近いところで誰かが噴き出した音が聞こえた。

「で、好きなものはあるかい?」

「・・・・・・甘いお菓子とか、です。えっと、なんなんですか?この質問」

 ワタシはチラリとジゴロンさんを見た。助け舟を出してくれないかと思ったからだ。

 ジゴロンさんはさっきの苦しそうな表情はすっかり無くなって、ふて腐れたようにムッスリとしていた。

「気にしない気にしない。そうだな、装飾品なんかに興味はあるかい?」

「別に、あんまりありません」

「ほうかぁ。キミくらいの歳の女の子で、それは珍しいなぁ」

 いや、ホントは男なんですけどね・・・。なんて言ってやったらどう言う反応をするのか。

 みたい気持ちもあったが、もし言っても絶対信じてくれなそうだからやめておいた。実際まだ男に戻る方法もわかっていない訳だし。

 と言うかこの質問はいつ終わるのだろうか。ふと、コチラを見つめる沢山の視線に気がついた。子分たちだ。

 彼らは先ほどまで憔悴しょうすいしたように俯いていたが、今は打って変わって、なんて言うか、目に輝きが宿っていた。

「じゃあコレ、マドリちゃんはあまり興味が無いかもしれないけど、貰ってくれないかな?」

 そう言ってネクストさんはどこからか透き通ったエメラルドの輝石がはめ込まれたネックレスをワタシに差し出した。

「わぁ、綺麗・・・」

 感嘆が漏れて、渡されたエメラルドのネックレスに釘付けになる。

 ふと、気がついた。太陽の光を浴びて翠緑に煌めくエメラルドは、単なる宝石じゃ無かった。

「この石、回復の魔力を帯びてる・・・。って事は魔石?」

「ほん。やっぱり魔法使いにゃ分かっちまうのね。そう、しかもその魔石はかなりの純度だよ」

「・・・ッ!ネクストのおっさん、あんたそんなモン隠し持ってたのか。どうしてゴロードさんが倒れた時に出さなかったんだよ!」

「おぅ、怖い怖い。出す時には出したさ。それが今だって話だ」

 食ってかかるジゴロンさんをヒョロリといなした後、ネクストさんはジッとワタシを見つめた。

「なぁ、マドリちゃん。良けりゃあ、ワシと結婚してくれ」

「・・・・・・・・・・・・・・・へぇ!?」

 へぇ!!?頭が真っ白になった。告白自体は、別に初めての事じゃない。異世界転移前はそれこそ引っ切り無しに告白されていた。

 ーーーしかし、しかしだ!異世界に来て、それも女の子の身体では、初めての告白。

 ど、どうしよう・・・!しかもまさかこんな突然ムードもへったくれもない場所で告白されると思わなかった。いや、仮にムードがあったとしてもどうなのこれ!?

 ネトゲでネカマやってたら告白されるのってこんな感じなのかー・・・。

 どこか他人事のように思いを馳せていると、ネクストさんはグイと距離を詰めた。

「なぁ!?どうなんだ!ワシと結婚してくれるか!?と言うか、してくれ!こんなに頼んどるんだ、たのーーー。グヘェ・・・!!」

「この色ボケオヤジ!命の恩人を困らせてんじゃねぇよ!!」

 にじり寄るネクストさんのアゴにジゴロンさんの拳固が突き刺さった。

 それを合図に周りからワラワラとゴロードさんの子分さんが集まって来て倒れ伏すネクステさんを袋叩きにする。

「嫌な予感がしたんだ全く。ネクスト、お前どーゆーつもりだよ」

「言い訳なんざ聞かんで良いだろ。死罪だ死罪。オメェ、絶世の可愛さを持つマドリちゃんとゴブリン面のお前とじゃ微塵も釣りあわねぇよ」

 子分たちは次々にネクストを罵倒して、ガシガシと蹴りを入れている。

「だ、誰が絶世の美男子だ・・・!」

「ンな事誰も言ってねぇよ!?」

 暴行を受けながらも言葉を絞り出したネクストさんに子分たちは揃って突っ込む。

 ネクストさんをまた回復しなきゃいけなくなる気がしてワタシは止めに入ろうとしたが、すぐに気がついた。

 子分たちは誰も彼も本気でネクストさんを蹴っているわけじゃなく、さっきまでの悲痛な表情がウソのように楽しげにしている。

 心なし、一方的に蹴られているネクストさんも笑っているように見えた。

 あぁ、何となく納得した。きっとネクストさんは、重く陰鬱なこの空気を壊す為にワタシに話しかけたのだろう。

「あ、マドリちゃん。ごめんな、困らせて。ネクストこのバカは今すぐ処理すっから、勘弁してくれっ!」

「え!?ええっと」

 突然言葉を投げかけられて、少し口ごもる。その間にムクリと起き上がったネクストさんは、ツバを豪快に飛ばして周りの男たちを怒鳴った。

「なんじゃあ!お前ら、良い子ちゃんぶりやがってこのぉ!マドリちゃんはなぁ!こんなワシたちの為に涙を流してくれたんだぞ!?死なれる覚悟!?あぁ、よっぽど無かったさ!!ハッとしちまった!好きになっちまうだろうがぁ!!」

「テメェネクスト!何を泣いてやがる!ジゴロンがどう言う思いで必死に我慢してたと思ってんだ!!」

「なーにをバカな事を。涙をこらえようとして相手に八つ当たりしちまうバカなんざどうだっていいだろうがッ!」

「え・・・?我慢?八つ当たり・・・!?」

 問答の最中に出てきた言葉が信じられなくて、ジゴロンさんを見る。ジゴロンさんはバツの悪そうな顔で頬をかき、目を逸らした。

「・・・っはぁ〜〜〜。おら、全員で行くぞ」

 ジゴロンさんの近くにいた子分の1人が彼の背中をバンと叩いて促すと、子分たち全員が一斉にワタシの方へ向き直った。

「・・・・・・・・・・・・」

「・・・・・・・・・・・・」

 お互い、静寂だけが交錯して、模糊とした時間が過ぎていく。

 口火を切ったのは、先頭にいるジゴロンさんだった。

「本当は、一番最初に言うべきだった」

「・・・ッ!?ちょ、えぇ!?土下座!?」

 この世界にも土下座は存在するのか!と言う驚愕よりも、一度にこんな沢山の人に土下座された事の驚愕が大き過ぎて軽く目眩めまいがする。

「これは後でお前の仲間にも言うつもりだが、すまなかった!!本当に、すまなかった!!謝って許してもらえるものじゃ絶対にないのは分かってる!だけど、まず謝っておきたい!」
 
 口々に謝罪の言葉が投げられた。そのどれもが痛切で、気圧されるほどに真剣な謝罪だった。

 数えて、十数人の後頭部を遥かに高い所から仰ぎ見ると流石にたじろいでしまう。

 ーーー本音を言えば、たしかに怖かった。『死』と言う言葉が頭をよぎらなかった訳じゃ無いし、客室に乗り込まれた時、ミツキが居なければ硬直してしまっていたと思う。

 しかし、我ながら呑気な事だと思うが、今、生きているんだから別に気にしていない、なんて感情が心の大多数を占めている。

 だけどこの人たちはきっと納得してくれない。彼らは結局、咎めて欲しいのだ。咎められる事で、悪し様に糾弾される事で、自らの行為の悪辣さを再確認する。

 ここで『別に気にしてませんから』なんて言っても主張は平行線だ。だからこそーーー。

「ごめんなさい。それは出来ません」

「・・・あぁ、ありがとうな。はっきりそう言ってくれた方が、ずっと楽だ。真っ当に生きて働く事は出来ねぇが、それ以外の方法で、どうにかあがなおうと思ってる」

「・・・・・・。何、言ってるんですか?」

 声を震わせるな。気づいてないフリをしろ。てんとした表情で、小首を傾げてみせろ。

「け、結婚は出来ません・・・・・・・・、ごめんなさい。あ、だけどこの魔石のネックレスは綺麗だから貰っちゃって良いですかね?ーーー・・・・・・。」

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」

 ゴクリ。生唾を飲み込んだ。冷や汗が吹き出て、ちょっとだけ肩が震えてるかもしれない。

「ク・・・・・・ッ!!ギャハハハハハハハハハハハハハッッッ!!!!」

「へ?え?え?え?」

 突如として場を席巻した大爆笑にワタシは戸惑った。まさかこんなにウケが取れるとは予想だにしていなかった。

「ク、ククククククク・・・・・・ッ!!あぁ〜マジか。なんだこの子、超可愛いじゃねぇか・・・!!そんな首飾りなんざいくらでも持ってけよ!何気にウチの団の宝だがなぁ!!」

「あからさまにわっかりやすい演技しちゃってなぁ。クソ、一本取られたぞ。何だよ、こんなに腹から笑ったのは何日振りだ・・・!?」

「何笑ってんだお前らぁ!ワシの一世一代の告白が不意になったんだぞ!?」

「最初っから始まっちゃいねぇよ。50代のおっさんの恋なんざな」

 各々顔いっぱいにシワをつくって悲喜交々ひきこもごもの様子だ。

 せきを切ったように笑い始めて止まらなくなった仲間たちを横目に、ジゴロンさんは1人立ち上がってワタシの方へ歩いてくる。

「あと、さっきはいきなり怒鳴ってすまなかった。本心じゃねぇ」

「はぁ〜・・・」

 ワタシは前傾姿勢で顔を近づけたジゴロンさんの額に思いっきりデコピンをした。ペチンッ、と小気味良い音がして、ジゴロンさんは呆気にとられている。

「ワタシにここまで言わせといてまだ謝るつもりですか?生きてるんですから、そんな仏頂面しないで笑って下さいっ!」

「は、ハハ・・・。笑って、良いのかな・・・」

 ジゴロンさんの含意がんいは当然伝わった。仲間が死んでまだ何日も経ってないくせに、俺たちが呑気に笑っていて良いんだろうかと言う葛藤が痛いほど分かる。

 でもーーー。

「笑いたきゃ笑っていいんです。せっかくジゴロンさんはイケメンさんなんですから」

「おいおいワシは!?ワシもイケメンだろ?マドリちゃん!」

「ね、ネクストさんはちょっと・・・」

「ちょっと、ちょっとイケメンか!?大分イケメンじゃねぇ!?」

 地黒の肌を惜しげもなく大気に晒した、見るからに山賊然としたネクストさんは鼻息荒くワタシに問いかける。てゆーか、顔が近い・・・。

「ちょっと気持ち悪い、かな」

「ギャハハハハハハッッ!!」

 肩を落とすネクストさんと、囃し立てる子分のみんな、それを遠巻きに見守るゴロードさんは口元を緩ませている。

 ついさっきまで敵対していたとは思えないほど打ち解けてしまったワタシたちは、すぐそばまで這い寄ってきている『その存在』に気づくことは無かった。

 破滅をもたらす、その存在にはーーー・・・。











 どうも!キズミ ズミです!!


 やっと話が進みそうだわ!やったぁ!!


 どうでも良いけど、今更気づいた。


 マドリとミツキって2人で話した描写が無いことに。


 主人公主観で進めてると無意識にそうなりがちだけど、普通に仲良いですよ!!









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