チート無しクラス転移〜〜Be chained(ベチーン)〜〜
三章 8話 『死なれる覚悟』
「ーーーと、まぁ、こんな感じで、後は知っての通りさ。脳みそが食い破れるような空腹に耐えられず、俺らはお前らを殺して食料を奪おうとした」
・・・終始、どこか淡々とした口調で顛末を語ったジゴロンは最後、クギを刺すように、
「言っておくが、余計な同情はしないでくれ。俺は聞かれたから答えただけだ。別に死んだ仲間を偲ぶ為に話した訳じゃねぇ」
「・・・・・・!・・・!・・・!!」
ジゴロンは、むしろ達観したかの様にこともなげに仲間の死をそう評した。
その目は依然としてどこか遠くを見ていた。
ワタシはその間に、どうにかしてこの意思とは無関係に出てくる水滴をせき止めようと腐心したが、間に合わず、ジゴロンはコチラに視線を向けるとわずかに顔がこわばった。
「お前、泣いてるのか・・・!?」
「・・・・・・泣いてッ!ないから・・・!!同情なんかじゃなくて、分かんない・・・。でもッ!すごく胸が苦しいの」
分からない、本当にわからない。だけど他人事の様には思えなかった。
言葉を重ねるごとにノドがしゃくりあげて、流れた涙が呼び水にとめどなく溢れる。
「やめてくれ・・・!一回敗けて、逃げた先でまた俺らは敗けた。何を言えた身分でもねぇが、笑われるより、泣かれる方がよっぽど辛い・・・ッ!!」
「違うよ。ジゴロンさんはずっと辛かったの。自分でも気づかなかっただけで、友達が死んで平気な人なんているわけないもん」
「平気なんだよ・・・!!盗賊なんてしてるからな、明日死んでも構わねぇって思って生きてんだ」
「辛いのは残された側でしょ・・・ッッ!」
「・・・・・・ッ!!」
「死ぬ覚悟なら誰だってできるし、耐えられる・・・!結局自分勝手なんだもん!でも、死なれる覚悟は誰にだって出来ることじゃないよ・・・!!ジゴロンさんだって、出来てないはずだよ!」
鼻をすすりながら、ワタシはまくし立てる。口の中はやけにネバネバしていて、時折唇を湿らせる涙がからかった。
「お前が・・・!俺の何を知って・・・・・・!!」
「何も知らないよ・・・!だけど、マッチメイカーの事を話している時のジゴロンさんはすっごく、辛そうだったから」
「いい加減にしろよ、このクソガキがッ!!」
ジゴロンさんはワナワナと肩を震わせて、大音声で激情の発露をぶちまける。
「何回言わせんだよ!俺は盗賊だ!ただの盗賊じゃねぇぞッ!お前らを殺そうとした、盗賊だッ!!なぁなぁで打ち解けあった雰囲気で誤魔化されちゃならねぇ!
お前らは俺たちをどうにでもしていい筈だ!俺らは敗者で、お前らは勝者だからな!!ゴロードさんが首を差し出すって時に抵抗しなかったのはそう言う理由さッ!!」
「ムカつくんだよ・・・!お前ら。クタクタのぶっ壊れたヨロイと食料が釣り合う訳ねぇだろ、バカにすんなって話だ。それでいて負傷したところは腕利きの回復魔法使いが全身くまなく治療してくれて、俺らの自業自得な不幸話を話したら涙を流してくださる・・・ッ!!」
精悍な顔つきに苦渋と苦悶を浮かべて、ジゴロンさんは絞り出すように言葉を吐き出した。
ワタシはジゴロンさんの激情をぶつけられて、遅まきに、やっと理解できた。
この人は、与えられた善意が怖いんだ。得体が知れなくて、脈絡がない善意に怯えて、忌避して、拒絶する。
もっと突き詰めるなら、この人の本質は極端に義理堅く、境遇に即した行動を取られるのが当たり前と思っている。
勝てば官軍負ければ賊軍。思えばこれほどこの人を表した言葉も珍しい。
「聖者にでもなったつもりかよ・・・!自分より弱ぇヤツにお慰みを下さるってか。さぞかし気持ちいいだろうなぁ。このまま盗賊から足洗って真っ当に生きろとでも言うつもりか?ふざけてんじゃねぇよ、何も知らないくせに・・・!!」
「おい、ジゴロン。いい加減にしとけよ」
どうも!キズミ ズミです!!
ふ、伏線を張らなきゃ(使命感)
←なおストーリーの進捗・・・。
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