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チート無しクラス転移〜〜Be chained(ベチーン)〜〜

キズミ ズミ

三章 7話 『姿が見えず』




 数時間前じゃ考えられないような忙しなさが、今のワタシにはあった。

「うわぁ、痛そ・・・。『リリーフ』」

 指先から迸る魔力が治癒の光に変換されて、エメラルドのベールが目の前の男の傷口を包み込んだ。

「・・・・・・うおっ!すげぇ!傷が治ったのか!?すげぇな回復魔法!!」

 治療が終わった男の人は綺麗になった自分の傷口跡を手でこすったりして、子どものようにはしゃいでいる。

「あんまり動いちゃダメですよ。まだ傷はあるんですから」

 グイと顔を近づけて男に注意すると、男は一定の距離を保とうと後傾姿勢になった。その顔はやや赤らんでいて、目が斜め上の方向へ向いている。

「お、おう。すまねぇ・・・」

 ーーー今現在、ワタシ、鏡山マドリはボロボロで傷だらけのゴロードの子分さんたちに回復魔法をかけて回っている。

 見たところ傷はだいぶ深く、その多くが化膿していて、あと少し遅ければーーーというところまできていた。
 
「実際、よくこの傷で何日も歩いてこれましたよね。何の手当もせずに、感染症にかかったら痛みで動けなくなっちゃってましたよ?」

「・・・着の身着のまんま、みっともなく逃げてきたからなぁ。手当てとかメシとか、そんなのは全く考えてなかった」

 目の前の男は自嘲気味に笑って、どこか遠いところを見ていた。

「ジゴロンさんたちって、どこから来たんですか?」

 ジゴロンというのは、目の前の男の人の名前だ。服も顔も泥だらけだが、よく見れば盗賊らしくもないほどに精悍せいかんで爽やかな顔をしていた。

 爽やかな顔、と言えば最初に思い浮かぶのはワタシのクラスの学級委員、浦島ダイスケの顔だ。

 彼はクラスで浮いた存在のワタシ(当時は男だったし、俺?)の事も何かと気を使ってくれた人だった。

 それでいて恩着せがましくもなく、スポーツもできて学校中から好かれている。浦島ダイスケは、理想的で、模範的すぎるほどに完璧な、そんな生徒だと言える。

 ただ、その浦島は、何故か異世界転移以来、行方不明になっているらしい。

 ワタシが一時期合流していたクラスの人たちも、最初は浦島という絶対的なリーダーがいないので困惑していた事を覚えている。

「俺たちゴロード一家はな、アルディア奇岩地帯の端っこにアジトを持ってたんだ」

「持ってた?過去形・・・?」

「・・・・・・何日まえだったか、俺らのアジトに旅の商人を名乗る男が来た。そいつはアジトに入るなり、こんな事を言った。『この場所を委譲させて貰いたい』と」

「ふ、何をバカな事を、つって笑っている間に、仲間が半分殺された」

「ちょ、ちょっと待って、殺したって・・・!?何でいきなり・・・」

 想像するなり、怖気おぞけが走った。彼らの身の上を鑑みればありえない話で無いのだろうが、そんな理不尽な事があるものなのか。

「俺らのアジトはもともと別の集団がずっと昔に使っていた所を偶然見つけたんだ。奇岩地帯の洞窟をくり抜いて造られた場所でな、住み心地は無類だ」

「ーーーとにかく、恐ろしく強いヤツだった。そいつ1人で、A級盗賊団である俺たちが鎧袖一触がいしゅういっしょくされちまった」

「・・・・・・」

「そいつは自分の事をマッチメイカーと名乗っていた。王宮直轄の魔術師なんかと比べてもまるで遜色そんしょくない強さで、ヤツの放つ炎の魔法で焼かれた仲間たちの断末魔が、耳にこびりついて離れねぇ・・・!!」

 ジゴロンは唇を内側にキツく巻きこんで、煮えたぎる怨嗟えんさを押さえつけているようにみえた。

「・・・マッチメイカーに敵わないと悟った俺たちはブチ切れたゴロードさんを引っ張って外に逃げようとしてな、そこでアイツに出会った」

「アイツ・・・?」

「とにかくデカくて、サビだらけのヨロイで全身くまなく固めた騎士だった。名前は分かんねぇ。ただソイツもマッチメイカーの仲間で、俺たちを見るなり襲って来た」

「必死に応戦したが、まるで歯がたたねぇ。最悪ゴロードさんだけでもって事で、あの人が吹っ飛ばされて気を失った隙に尻尾巻いて逃げた。5人も犠牲になったけどな・・・」

「そこからガムシャラに逃げ回って、気がついたらどっかの洞窟に入っていた。どこから来てどこへ抜けるのか誰も分からなかったから、水も食料も無い真っ暗闇の中、何日もさまよい歩いていた」

 ーーー何にもない洞窟の中、いつ出れるとも知れない暗闇を歩き続ける恐怖。それはどれほどなんだろう。







 どうも!キズミ ズミです!!


 は、話を進ませろおぉぉおお・・・!!











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