チート無しクラス転移〜〜Be chained(ベチーン)〜〜
コラボ章 6話 『Handmade ジゴク』
剣の柄を指先で弄びながら、原は前方で大挙する魔物の群れを凝然と見据えた。
相対する魔物、木霊ザルたちは原の足元、ジャイアントの死骸に対してあまり拘泥せず、殺意を孕んだ熱視線を衝突させる。
先頭にいた木霊ザルはキィキィと金切り声に似た鳴き声で仲間たちに何事か指示すると、
「ん?アイツら、何する気だ・・・?」
それぞれ手に石を持って、大振りにスイングする。
原めがけて投擲された石飛礫は、のんびりと放物線を描くことはせず、ヒウ、と空気を割いて向かってきた。
常人では視認することもままならない豪速球、当たれば体のどこかが欠損するのは言わずもがな。
図らずも息を呑んだミツキだが、その一瞬あと、甲高い衝突音を以って、ミツキの心配は刈り取られた。
「おぉう、いー球投げんなぁ、おい。メジャー行けるぜ?」
あくまでもおどけて、原は粉微塵に粉砕した石飛礫をそう評する。
ギィンと響いた刀身をブラブラ揺さぶって原は第2波を迎撃していく。
数えるのがバカらしくなるほど、石製の弾丸が向かってきて、原は微苦笑のうちに漏れなく叩き落とした。
しのぎ終わった後、両陣営の間に沈黙が生まれる。
「・・・これで諦めてどっか行ってくれれば、ーーーなわきゃねぇよな」
一縷の望みにかけた原だったが、願い届かず木霊ザルの群れは、原めがけて文字通り猪突猛進する。
「やられる前に、か・・・」
原は力一杯大地を踏みしめ、矢の如きスピードで木霊ザルの群れに激突した。
「ーーーッッ!!ねぇ、光希、原ちゃんは、大丈夫なの・・・?」
ーーー原VS魔物100匹越えのデスマッチなんて、馬鹿げてる。
どれだけ原が強かろうと、数の暴力の前に単身は無力だ。
そんな意図を込めて、ミツキは隣に立った光希に問いかけた。
「ーーー木霊ザルに紛れてるあのジャイアントって言うゴリラ型の魔物は、実はとっても手強いんだ〜」
一瞬の沈黙の後、光希はいつも通り、間延びした口調でそう言った。
「ーーー。そんな事は知ってる。ジャイアントは木霊ザルの突然変異種で、何故かそんな強い魔物があの群れの中には無数にいる」
ミツキは更に言葉を続ける。
「原ちゃんがいくら強くたって、所詮1人だから、その内に揉み潰されてしまわないかーーー」
「ーーー関係無いんだ〜」
ミツキの言葉は半ばで中断され、光希がやや響く声で横やりを入れる。
「相手が何だろうが、何匹居ようが、原ちゃんには関係無いんだよ」
光希がまっすぐ見据える先には木霊ザルの一団がいた。
一団はひとところに纏まって、今しがた突貫攻撃を仕掛けてきた怨敵を怒りに任せて押し潰してやろうと躍起になっている。
木霊ザルの群れ、その渦中で何が起こっているかは判然としない。
しかし、突如、群れの中で噴き出した血潮にミツキはアッと目を見開いた。
「ーーー単純な腕力で言えば、原ちゃんはサイトーの足元にも及ばないよ」
「だけど、原ちゃんの武器はそこに無い」
分断された木霊ザルの腕、足、あらゆる部位が宙空に舞って、おびただしい血と断末魔が空気を割った。
「人知を超えた反射神経に機動力、ただでさえ全国レベルの運動神経だった原ちゃんがカミサマの性能補正で更に研ぎ澄まされた」
「いわんや、スピードなら原ちゃんは他の追随を許さない」
「とりわけ、一対多数の戦闘だったら、原ちゃんの独壇場だよ」
むせ返るような血臭の中、原は斬り伏せられた木霊ザルたちの中央に、屹立していた。
が、この群れはあくまで一団でしか無い。
木霊ザルは、ジャイアントはまた荒々しい息遣いをもってして原に躍りかかり、そして血塊に姿をかえた。
「断言するけど、今の原ちゃんはサイトーよりも強い」
確固たる意志を持った光希の言葉に、ミツキの胸中には困惑と得心が交錯する。
もはや盲信とすら呼べる、原に対しての絶対無比な信頼感。
が、ミツキには覚えがあった。俯瞰的なデジャヴを感じた。
自分がミキオに抱くソレと同種のものだと悟ったのだ。
しかし、自分のような紛い物と違って、本物の信頼関係を目の当たりにし、ミツキは静かに瞑目する。
ーーーかつて自分が求め続け、虚栄ではあるが結果的に得たかけがえのない輝きだ。
ーーーならばこそ、ソレには最高の敬意を払う必要がある。
自らの天稟、『司る能力』はランドソールではないからか使えないものの、『汲みあげる能力』は健在である。
ーーーもしもの時は、ボクが絶対に守ってみせる。
ミツキは心の内で、深く、深く自分に誓ったのだった。
ーーーーーーーーーーー
一方、激戦の渦中にいる人物、原は木霊ザルの血と油で切れ味をなくした剣を無造作に投げ捨て、次なる剣を創り出す。
今しがた、物凄い頭数を斬り捨てたばかりだというのに息もつかせず木霊ザルが四方から凶爪を振り落とした。
「・・・・・・んがぁッ!!」
原は神速で前方の、木霊ザルAの肩口を切り落とし、流れるような動作で後方の木霊ザルBに突き刺し、地面と縫い付けた。
態勢を低くもって、両脇からの爪撃を紙一重で避けた後、両手に創り出した刀を木霊ザルの股下に滑り込ませ、背骨に沿うように両断する。
最後に後方で悶えている木霊ザルBを袈裟斬りにしてお終いーーーとは行く筈もない。
ひっきりなしに次なる脅威が荒々しい殺意を携えて原を訪ねる。
先陣を切って突撃してくる木霊ザルに切れ味の鈍くなった刀を投擲し、突き刺すとその一団を縫うように原は侵入する。
一瞬後にモウモウと立ち込めるのは赤黒い血霧だ。
そこには打ち捨てられた刀の数々と乾いた地面を黒く染め上げる血溜まり、そして胃液混じりの痰を吐く少年が居た。
ーーーここは、地獄か・・・?
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コメント
Akisan
自分の作ったキャラだけどカッコ良すぎ!
ワクワクした!