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チート無しクラス転移〜〜Be chained(ベチーン)〜〜

キズミ ズミ

二章 幕間 『さよなら武具の聖地』




 マラケシュ村に向かおうと決意してから一夜明けた今日。

払暁の光が街に訪れ、コルドバを明るく照らす明け方。

オレは数日世話になった宿屋の前で深く一礼すると

「さぁ、行くか!」

 顔を引き締め、足を街の郊外にある馬車の停留所に向けた。



ーーーーーーーーーーー


 停留所に着くと、既にミツキとマドリが居て獣に寄り添った男と話していた。

「よ、おはよ」

 オレが近づいてミツキの肩をポンと叩くとミツキも挨拶を返してくれ、次いでマドリもそれに倣った。

「あ、ミキオさんですね。アッシは御者のベンハーという者です。10日ばかりの付き合いですがどうかお見知り置きを」

 御者のベンハーさんは被っていた帽子を脱ぎ、胸のところに当てると柔和な笑みを向けてオレにお辞儀をした。

「あ、どうも。マラケシュ村までよろしく、です」

 落ち着いた身なりの大人の男の人に少し気後れして、オレはたどたどしくお辞儀を返す。

「えぇっと、それで、これが馬車、なんだな・・・」

 オレはベンハーさんの傍で荒く息を吐く獣に目を見張った。

 馬車、これからオレたちはこの馬車でコルドバを出て、数百キロ、10日の移動を経てマラケシュ村に向かう。

 とはいえ、眼前の獣はオレの知る馬では無く、漆黒の外皮に黄色い爬虫類じみた瞳を持つ、オオトカゲだった。

「ええ、アッシのマリアンヌは優秀でしてね、飯をたらふく食べる分長い間走れます」

 ベンハーさんは自分の子どもを自慢するかの様に鼻をこすってにこやかに笑う。

「って言うかミキオ、来るの遅いよ!ワタシとか今日早く起きて買い溜めしまくった荷物を全部キャビンに運んだんですけど!」

 マドリがプンスカと頭上に憤慨の雲を浮かべると恨めしげにオレを見る。

「悪いって、昨日はヴァルド組のやつらとのお別れ会で寝るのが遅かったんだ」

 昨日の夜を思い出すと、オレは少しだけ痛む頭に手を当てる。

 昨日の昼ごろ、コルドバを出る、という旨をヴァルドに知らせたところ、ヴァルド組総出で3日ぶりの大宴会を開いた。

 そこでオレは自分に強いた誓いを破り、再び酒を飲みまくったのは忘れておこう。

多分また、物凄い失態を犯してそうだし。

「あー、だから今日そんなに顔が悪いんだ」

「なんて事言うんだ!顔色が悪いだけだし!!」

 マドリは納得がいったかのようにウンウンと頷くが、オレは訂正を求めた。

「やっぱお前毒舌治ってないのな・・・」

 やはり女体化してても鏡山マドリという絶対のアイデンティティは失われていないようだった。

「マドリ、忘れ物は無いよな。取り行くなら今のうちだぞ?」

「ワタシの荷物って、ほとんど服かお菓子だからねぇ。ミキオは・・・まぁ無いか」

「何その決めつけ!?」

マドリがオレを一瞥してイタズラ気に口を綻ばせると

「何も失うものが無さそうな顔してるしね」

「朝っぱらから止まんねぇなお前!!」

「ミキオはリアクション良いから面白いよねぇ」

 オレとマドリの掛け合いの最中、キャビンに半身を乗り出して、ミツキはのんびりと言った。

「さぁ、ミキオ、マドリぃ、そろそろ乗り込んでぇ」

 いつの間にかベンハーさんも御者台に行って愛馬、マリアンヌの手綱を握って待っていた。

 キャビン内は六畳一間の広さで、バスにあるようなソファだけが設えられた質素な造りだ。

 キャビンの扉をくぐり、設えられたソファにどっかりと座る。

 朝の爽やかな風を切って、オオトカゲのマリアンヌは動き出した。

 木製の小窓を開けて離れていくコルドバを、見ていると、空にかかる七色の橋に目を剥いた。

「ーーーー虹だ!」



ーーーーーーーーーーーーー



 コルドバから少し離れた丘の頂上に、朝早くから体操座りで走行中の馬車を見送る少女がいた。

「ーーーいいのか?直接会ってお別れ言わなくても」

と、群青色のボサ髪を掻き、あくびを噛み殺しながら少女に近づいて来る少年。

 少女は少年と同じ色のポニーテールを揺らして少年を一瞥した後、少しふて腐れたように口を開いた。

「別にお兄ぃは呼んでないんだけど」

「悲しい事言うなよ・・・、それに俺は寝坊した委員長の代理だ」

少年、北村ムギヤは覇気のない顔で薄く息を漏らす。

「なんだ、もう行っちゃったのか」

「うん、だから別にお別れとか、いい」

「ーーー本当に?」

 曲げた両膝に顔を半分埋めたホナミを、ムギヤはまっすぐ見つめる。

ホナミの胸中、その煩悶にムギヤは気づいていた。

 お兄ちゃん歴も既に十余年、妹の感情の機微には誰よりも詳しい自信があった。

とか言うと、またホナミに気持ち悪いとか言われるが、

 ムギヤは知っている、投げやりな態度を取っているように見えるホナミに、実は世話焼きな一面があることを。

「・・・・・・」

 押し黙ったホナミにムギヤは肩を竦めて薄く笑みを浮かべる。

「ーーーなに?お兄ぃ、キモい」

「いや、ーーーーほら」

 ムギヤは右手を伸ばすと天稟を発動、わずかに大気が揺らいでホナミの頬を撫でる。

「・・・ん」

 2人の間に言葉は無かったが、ホナミは兄の意思を察しておずおずとムギヤの手を取った。

と、同時にムギヤは指先から流れ込んでくる力の奔流に身を任せて、現実に空想を混ぜ合わせる。

 小さくなっていくあの馬車からでも見えるように、ムギヤはその天稟で空に大きな虹をかけるとホナミは小さく感嘆を漏らす。

「あんな事出来たんだ・・・!お兄ぃ知ってたの?」

「出来るんじゃないかなーって思ってただけだ。ホナミのことなら四六時中考えてる訳だしな」

「むぅ、やっぱキモい」

 純粋に感心してしまったものだから、ムギヤは予定調和的におどけて答える。

 ムギヤは誰に対しても、自分の魅力を悟られようとせず、それは妹のホナミにあっても同様である。

 故にいつも妹の出がらしなど、不名誉な言われ方をする事が多いのだ。

 ホナミは兄の悪癖に辟易としながら、しかしそんな兄の、一種の対人防衛線が兄妹の心地良い関係を生み出しているのだと言うのも事実である。

 踏み寄らず、かと言って突き放さず、この緊張感こそ、兄と私の不文律なのだと、ホナミは分かっている。

 貧乏くじに塗れた、ムギヤの気性も、この世の誰より理解している。

分かっているからこそ、ホナミは気にくわない。

 もっと私を頼っても、それこそ何を求めても、構わないと言うのに。

 そんな反骨の念が通じたのか、ムギヤは参ったように、頬をポリポリ掻いて明後日を見る。

「俺はホナミが何か嫌な事があれば代わってしてやれるし、荷物が重けりゃ半分持ってやれる。でもそれは俺がお前のお兄ちゃんだからだし、お前以外は特別扱い無しだ」

「誰だって、利口には生きられないよ。誰かを贔屓して、されて、今日もからがら暮らしてる」

「だから俺はむしろ、そんな人間に憧れてるんだ。自分の事は二の次にしても、誰かの為に尽くしてやれる人間」

 ムギヤはそこで言い終わると、おもむろに後方を振り向いてフッと笑う。

「例えばーーーすっかり寝過ごして、梳かしてもいないボサボサ髪で半泣きで、走ってくるような奴とか、な」

 バタバタと足音を立てて向かってくる、三つ編みメガネの真面目系少女。

とはいえ髪はまともに結べておらず、寝る時の肌着にブレザーだけ羽織っている。

完全に宿屋から着の身着のまま、ここまで来た感じだ。

「ーーー何で起こしてくれないんですか!ミキオくんたちもう言っちゃいましたよ!?」

 三つ編み少女、委員長はムギヤの前で急停止し、肩で大きく息を切らしている。

「まぁ、一応ミキオたちが乗ってる馬車ならまだ見えるけどな」

「えっ、何処に・・・、めちゃくちゃ遠い所じゃないですか!あぁ、もう、コレ!!」

委員長はムギヤとホナミにメガホンを渡す。

 日本であれば100均に売ってそうな安っぽいメガホンだ。

「何これ委員長、まさか昨日の夜これ作ってたから今日寝坊したんじゃ・・・」

「そ、それは今いいじゃないですか!ほら、見えなくなっちゃう前に早く」

「早くって・・・?」


「ガンバレーーーーー!!!」


 委員長は手製のメガホンを口元に当てるとずっと遠くの馬車めがけて大声をはりあげた。

 そしてムギヤとホナミに目で、「私に倣え!」と訴えてくる。

ムギヤはそんな委員長に微苦笑した。

ーーーそんなキャラでも無いだろうに、それでも、別れて行ってしまうクラスメイトを見送りたいから、ガラにもなく一生懸命になる。

そんな生き方は、ムギヤにとって物凄く眩しくてーーー

「ガンバレーーー!!!」

「ガンバレーーー!!」

「が、がんばれーーー・・・」

 委員長にムギヤは追随して、最後にホナミが頬をやや赤らめてボショリと呟く。


「グスッ・・・・・・」

ーーーとうとうミキオたちの乗る馬車が地平線の向こう側に消えてしまった時、鼻をすする音が聞こえた。

「え?何委員長、泣いてる・・・?」

「お兄ぃ・・・そういうのは言わないでいいから」

 ムギヤが委員長を心配げに見るも、分かってないと言わんばかりの目でホナミがたしなめる。

が、委員長は三つ編みをブンブン振り回した後、薄い胸を張った。

「泣いてませんっ!ミキオくんたちは強いですもん、不安なんかじゃ全然無いです!!」

「それに、まだダイスケくんが見つかっても無いのに泣いてられませんよ!」

委員長はフンスと意気軒昂にガッツポーズした。

「そうだな、浦島も見つけなけりゃ」

 ため息交じりの息を漏らし遠い目をした後、踵を返してムギヤは宿屋に帰ろうと足を向ける。

 ムギヤの背中を追って、数歩遅れてホナミと委員長が肩を並べる。

「ねぇ、委員長」

 ホナミは群青色のポニーテールの毛先を弄びながら、ホナミは委員長に話しかける。

「?」

ーーーホナミは、知っているのだ。

 兄は他の女子と、委員長との接し方に看過できない違いがある事に。

 兄は普段取り澄ました性格のクセして、意外に惚れっぽい事に。

 しかし、まだ委員長はおろか、兄ですら自分の心に気づいていない。

 だから、妹として、あくまでも妹としてホナミは兄の暫定想い人に言ってやらねばならないことがあった。



「私、負けないから」


お兄ちゃんからの特別扱いは、私だけなのだから。

ーーーーーーーーーー


コルドバ中央にある大きな図書館。

 図書館内には沢山の長テーブルとイスが設えられており、その一角で赤髪に真紅の瞳を持った少年と侍る様に少年の横の席に座る少女。

少年の名は、二戸生ニコナマリュウト。

 リュウトは今、かき集めた古めかしい本のページを繰ってウウムと唸っていた。

背表紙には『王国の歴史』と印字されている。

王前四腕オウゼンヨンカイナ・・・、超カッケー・・・!」

 リュウトは書かれている文章の一部に注目してらんらんと目を輝かせた。

「やっぱこういう『十刃エスパーダ』とか『七武海』とか言ったグループ名は唆るよなぁ!リョウカ」

「マスター、図書館の中では静かに。あと私の事はしっかりと真名で、戦聖女ハギア・ソフィアとお呼び下さい」

興奮したリュウトを横にいた少女がたしなめた。

 アメジスト色の髪にターコイズの瞳を持った少女、服装は白を基調にしたゴスロリ系ドレスを着ており、多分このファッションは異世界初のものだろう。

少女の名は、上田リョウカ。

 リュウトと少し部類は違うが、彼女もまた厨二病の一種であり、脳内設定ではリュウトをマスター、自らをサーヴァントだと思っている。

「うむ、では戦聖女ハギア・ソフィア、この本はどうやらシリーズ物らしくてな、次の巻を持ってきてくれないか?」

主人の仰せのままにイエスマイマスター

 リョウカは洗練されたカーテシーを見せると本棚の向こうに消えていった。

・・・何というか、はたから見たらカオスである。

 厨二病2人、ツッコミ不在の今、謎の親文字とルビが同時に見えるヤツ乱用し放題だ。

とは言えリュウトは至極当たり前の様に言葉を交わし、リョウカを見送ると目で文字を追っていく。



 王前四腕オウゼンヨンカイナ、この国、リマリア王国で現王、ルーブザック王が認めた者のみがその称号を与えられ、真の英雄として讃えられる。

 『攻城』のオーゼ・バッバルーザ。世界最高の腕力を持った怪傑。

 15年前の隣国との戦争の折、単身敵国の城に乗り込んで陥落させるという武勲をたて、終戦後その城跡にバッバルーザ公国を建て王となった。

 人格者である反面、享楽主義者でもあるので公国の統治はもっぱら宰相であるマルザームが務めている。


 『霊猫』名前は不明。いつから存在していたかすら不明な謎に包まれた喋る猫。

 魔法の分野に精通しておりたまにフラッと現れては人々に魔法を教えているので一部では魔法の始祖と呼ばれてもいる。


 『王玩』ギロイ・エッジスカル。帝国時代のリマリアで先王の側近を務めていた。

 周辺諸国を武力制圧する為、体の隅々まで禁術や外法が施されている。

 その病的なまでの先王への忠誠心と隅々まで身体を弄るその姿からまさに『王』の『玩具』であるので『王玩』という称号がつけられた。

 先代の王の時は身を粉にして帝国(後の王国)に尽くしていたが、現王には全く従わない上暗殺未遂までしたので現在は王国の地下牢に幽閉されている。


 『搏撃』カムリ。西の大国、デーリア王国、『六元勲』の『雷帝御雷』、ケンモチ・ヤスデと異世界最強の名を2分している。

 常に琥珀色の鎧を纏っていて彼の素顔を見た者は誰一人いないという、

 その存在は200年前から知られており『霊猫』と親交が深く何かの関係性があると思われる。


番外ーー『ーーー』ーーーーー



「・・・?」

 王前四腕、『搏撃』の後、番外と書かれたその欄には黒い墨で称号も、名前も、説明も全て塗りつぶされていた。

 まるでこうしなければならなかったかの様なその不自然さにリュウトは眉をひそめて顔をしかめる。

「この席、よろしいですか?」

と、突如リュウトは向かいの空席をわずかに引いてそう尋ねられた。

壮年の男だ、屈託のない笑みを浮かべている。

「さて、単刀直入に言います。あなた、冥護人ですね?」

 壮年の、白髪混じりの男は伸びやか笑みはそのままで、言った。

「・・・・・・!」

 リュウトたちの存在、その核心を突いた問いに剣呑な感が到来した。

 リュウトは条件反射的に右手の指ぬきグローブを外し、記憶忘却の天稟を発動しようとして、制された。

「逸らないで下さい。このことを知っているのは私だけではありません。今ここに居る、全員が私と情報を共有して居ます」

 リュウトは全方向から向けられているギラギラした目に遅まきながら気づいて歯噛みした。

ーーーここで怪しい真似をしたら我も、リョウカもただでは済まない、という事か。

「身動きが取れない立場だということを確認できましたね。では本題に」

 男は懐から黒い装丁の本を取り出してリュウトの方にやった。

「ーーーこの本をあなたに読んでいただきたい」

 目の前の男は、リュウトに選択権がない事を確信し、言外に強制の意を込めて言う。

 もはやその顔に先ほどの貼り付けた様な笑みは無く、瞳には深淵が宿っていた。

「ククク・・・!」

それが何より可笑しくて、リュウトはくつくつと笑う。

「何がおかしいのですか・・・?」

「貴様が何処の結社の手先かは知らんが、お使いも大変だな」

「・・・・・・!!」

 リュウトはおもむろに右手の指抜きグローブを外した。

 左手に指抜きグローブはしていないので、これでようやく調和がとれたコントラスト

調律ちょうりつせよ。『調和のとれた不協和音パラドックス』」

 剥き出しになったリュウトの右手から、薄紅のベールが展開されて図書館を覆った。

リュウトの天稟。それは何処までも暴力的で、ゲリラ的で、簒奪的で且つ恒常的に最強無敵なチート能力。

まぁ、全てリュウトの自己評価ではあるが・・・。

「・・・あれ?私は、何を」

キョトンとした顔の壮年の男。

 男だけじゃない、図書館にいるほとんどの人間が虚空を見つめて呆けていた。

と、何かに考えが至ったのか、バタバタと慌て始め、足並み揃えて図書館から出て行った。

「ククク、身動きが取れないだと・・・?我の異能を用いればこの様な包囲網、砂上の楼閣に等しい」

森閑としてしまった図書館に、荒い息遣いが聞こえた。

「マスター、お疲れ様でした」

 本棚の隙間から出てきた少女には見覚えがあったが少女の足元で倒れ伏している男性は誰だろう。

「・・・この人ですか。明確な敵意をもって襲ってきたので、ついーーー」

「殺したのか・・・!?」

あり得ない話じゃない。

リョウカの天稟はそれすらも容易くなし得るのだから。

しかしリョウカは頭をフルフルと横に振ると、

「簡単に生成できるチャチな麻痺毒です。命に別状はありませんよ」

「そうか・・・、うむ、なら良いのだ」

「はい、それでこの事態は一体ーーー?」

 今しがた起きた一連の流れを大雑把に話すと、リョウカは壮年の男が置き残していった黒の装丁の本に視線を移した。

「なるほど、襲撃の主犯はマスターにあの本を読めと言ったのですか」

「うむ、まぁ読むわけが無いがな。素性の知れないヤツが渡してきた本だ。どんな魔法が組まれているか分かったものじゃ・・・なぁ!!?」

 リュウトの心は、突如として眼前の黒本に釘付けになった。

 何故か、それは本の表表紙に、いかにも魔法文字チックなフォントでこう書かれていたからだ。

ーーー『グリモワール』、と。


『グリモワール』

 グリモワールとは、フランス語で魔術の書物の事を意味し、主にヨーロッパなどで流布されたものである。

 狭義では悪魔や精霊、天使などを呼び出して、願い事を叶えさせる手順、そのために必要な魔法円やペンタクルやシジルのデザインが記された書物を指すが、魔術を行う側の立場から書かれた悪魔学書、魔術や呪術などに関する知識、奥義を記した古文書、書物全般のことを指す場合もある。(Wikipediaから一部抜粋)。


「剣と魔法の世界に来て6日!やはりあったかグリモワール!!」

 その本が怪しいものである事も忘れてリュウトはたかだかとグリモワールを天に掲げた。

「ま、マスター!落ちちゅ、おつちゅいて下さい!!特級聖遺物かも知れません!!早く、早く私に渡して見せてみて下さい!!」

 リョウカはそんなリュウトの周りをぴょんぴょんと小さくとんでグリモワールを催促する。

 どうやらその本は厨二病2人の琴線を大きく揺らしたらしい。

「ま、まぁ落ち着け、まずは我が見て危険が無いか判断するっ!リョウカ、じゃなかった戦聖女ハギア・ソフィアは襲撃の第2波に備えておいてくれ!」

 どうしても自分が、いの一番に読みたかったのだ。

 リュウトはショーウィンドウ越しに欲しいオモチャを眺める少年の様に真紅の瞳をキラキラ輝かせて本を、グリモワールを開いた。

 ペラペラとページをめくっていると、『王前四腕、番外について』という見出しが目に入った。

 王前四腕の番外、先ほど読んでいた本では黒い墨で塗りつぶされていて読めなかったのだ。

ならばリュウトにとってはタイムリーな情報だ。

「ふむ、なになに、王前四腕、番外『夜伽』のクラウゼリア、その性格は残忍にして凶悪」

「有する天稟は、『文字を操る』・・・?」

 突如、読んでいた文字列が蟲の様にうごめき出し、それらは明確な意思を持って他のページに逃げていった。

あまりにも唐突な出来事に息を飲むヒマもなかった。

 未だ状況が理解できず、虚しく開かれている空白の2ページの中央で、黒インクの文字が浮き出て来た。



         私に従え




「は・・・・・・!」

黒本の全てのページから、漆黒の液体が噴出した。

 液体はリュウトの頭から首まで覆い、目、鼻、毛穴から体内に侵入する。

「マスター!!」

 液体が脳にまで沁み渡って、眼前の情報全てにノイズがかかる。

 意識を刈り取られ、再び起きた時、自分はその自我を保っていられるだろうか。

 ふと、恐ろしい考えが脳裏に去来して肌が粟だった。

「う・・・、あァァァァーーー!!!」

 手持ちのナイフでリュウトは自分の手を突き刺し、薄れゆく意識をかろうじて繫ぎ止める。

 灼けつく鋭敏な激痛に顔を歪めながらも、漆黒の液体の隙間からわずかに見える、少女の手を取って声を絞り出した。

「ーーーーーーーーー」

「・・・ッ!?マスター!?嫌です!そんな・・・」

 息も絶え絶えに告げられたその言葉にリョウカは目に涙を浮かべ、やや金切り声じみた悲鳴をあげる。

「頼んだぞ・・・!我が、心の盟友」

 漆黒が何倍にも膨張しリュウトの身体を完全に呑み込んだ。

 ブヨブヨと突起型に突き出た漆黒のオブジェは、ゆっくり地面に浸透していってとうとう見えなくなってしまった。

 力なく四つん這いでうなだれるリョウカを嘲笑うかの様に、図書館内には女の哄笑が響き渡った。









上田リョウカ


年齢・・・17歳

身長・・・149センチ

趣味・・・裁縫、リュウトとの秘密基地作り

友人・・・リュウト、他少数の女子

天稟・・・『触れた物に毒性を帯びさせる能力』

無機物有機物問わず、接触した物を毒にする事が可能。

 毒の種類は自分で指定できるがあくまでも生成法を知っている毒のみである。

 リョウカはもともとそういう黒魔術や毒関係には趣味の分野で一通り知っていたので、作れる毒のレパートリーはかなり多い。


備考


 アメジスト色の髪にターコイズの瞳を持った少女、服装は白を基調にしたゴスロリ系ドレス。

リュウトとは少しジャンルが違うがいわゆる厨二病。

 クラスで孤立している時にリュウトに話しかけられて仲良くなる。そこから紆余曲折あってリュウトを自らのマスターだと思って付き従う様に。

 自らを『戦聖女(ハギア・ソフィア)』と名乗っている。

 リュウトの事を憎からず思っているが未だ友達以上恋人未満な関係から踏み込めておらず悶々とした夜を過ごしている。

 裁縫の分野に天性の才能があり、リョウカが来ているゴスロリドレスもリュウト愛用の赤いロングコートも全て手縫いの自作である。

 将来の夢は公務員で、それを聞いた生徒の9割が「意外に堅実なんだな」と思うが、公務員を志望する理由は単純に英訳したらカッコいいからだ。

ちなみに、公務員は英語でパブリックサーヴァント。




どうも!キズミ ズミです!!


いやぁ、ね、やっと二章終わりましたね。


20話ですよ20話。


文字の総数でいったら多分文庫本4分の3くらい。


 ・・・物凄い長かったです。最初は5話くらいで終えてやるぜ!って感じだったんですがねぇ(遠い目)。


 改めて二章を読み返してみるとズサンな構成でたどたどしく至らないところが多々ありましたが、


 今は一つの章を書き終えた、という達成感が満ち満ちています。


さて、次からは予告通り特別編、コラボ章に入ります。


 大体のストーリーラインは同じですが、2人の作者がそれぞれの表現で物語を創っていく、一粒で二度美味しい感じになる予定ですので乞うご期待です!!







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