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チート無しクラス転移〜〜Be chained(ベチーン)〜〜

キズミ ズミ

二章 19話 『行くぞマラケシュ村』




月下の薄暗闇の中、オレは引かれる腕をどうにか振りほどこうと頭を絞っていた。

「待ってよ〜〜〜ッ!!」

縋り付く様に、腕をホールドしているこの美少女の名は、鏡山マドリ。

ツヤのある白銀のツインテールをブンブン揺らし、淡青色の瞳には薄く涙が張られている、オレのクラスメイトだ。

「だから、言ってるだろうが。パーティメンバーは間に合ってますのであなたの今後一層のご活躍をお祈りしています・・・!」

「何そのテンプレみたいなお祈り文句!?落ちたなら落ちたってはっきり言えぇ!」

「落ちました」

「はっきり言うなぁ!!」

どうすりゃいいんだよ・・・。

オレは辟易すると同時に、腕に伝わる柔らかくて弾力性のある、お母さん以来の感触に身悶えした。

「あー、じゃあそういう事で、取り敢えず今日は解散しようぜ。明日からまた落雷ガッシャンチャレンジしなきゃいけないんだよ」

「超ストイックな異世界生活送ってるね!暗殺一家の家系!?」

神秘的な星空の美しさに忘れていたが、そうなんだよなぁ・・・。

明日こそ雷が当たると思うと倦怠感ヤバい。

腹に溜まった牛乳全部ブチまけそうになる。

苦手な教科のテスト前日ってこんな感じだったなぁ、とどこか他人事の様にかつての日本生活に思いを馳せた。

「遠い目してるとこゴメンだけど、ワタシならミキオが雷に打たれてもその場で回復魔法かけられるよ?」

とびきりの営業スマイルを見せて、上目遣いでオレを見る。

・・・物凄く可愛いんだよなぁ。コイツがあの毒舌家でなければ速攻持ち帰って嫁にするまである、趣旨違うな・・・。

「む、たしかに便利だな。回復魔法・・・」

アゴに手を添えて沈思黙考。

優秀で美少女の魔法使いをヘッドハンティングするかどうかオレは心の中で天秤にかける。

相対するは、異世界転移以前の、イケメン嫌味毒舌王子。

「・・・お祈りします」

「だから落ちたって言えぇ!」

仕方ない。あまりにも対抗馬が強すぎたのだ。

「って言っても、雷撃直後の即回復魔法は魅力的だし、明日の昼、オレの宿の前に来てくれるか?」

「仲間に入れないって言った直後に!?都合良すぎじゃ無いのかなぁ!」

「出来次第ではメンバー加入も検討します」

「ワタシ、アナタナオス、イッパツデ」

カタコトになる程喰いついた。

「じゃあそういう事でな」

絡みついてた腕はスルリと、案外すぐ抜け、透き通ったスベスベの鏡山の肌から離れる事に、どこか哀愁を感じた。



ーーーーーーーーーーーーー



「殺すなら殺せぇ!!」

昨日の状況の踏襲。

縛り付けられ、右手にミッション指示書を握りしめたオレは小高い丘の上で落雷を待っていた。

頭上にはわだかまった黒雲が縦横無尽にうねり、真下の人間を見据えている。

準備オーケーとばかりに丘の麓にいる北村ホナミに目配せする。

ホナミの横にはミツキと、そして鏡山がいた。

「じゃあ、いくよ」

北村ホナミは群青色のポニーテールをバレッタでまとめ直した後、取り澄ました顔で低く宣言した。

電気の線はわずかにオレの右側に逸れ、大地を穿ったかと思うと、追いで空気がガッシャーンと張り裂ける。

「ッッッビャあぁぁァァ!?!やっぱ超怖ぇええ!」

「くっ・・・!まだまだ・・・!!」

ホナミは歯噛みすると再度、天稟を行使する。

吹き荒れる暴風。心なし、小雨も降っている。

「あ」

握り締めていたミッション指示書は、ふとした瞬間に風にさらわれて、オレから離れていった。

次の瞬間ーーーー

世界に一瞬の静寂と、鼓膜を介さず脳に伝わってきた耳鳴り。そしてーーー

「あああアアアアぁぁぁぁぁぁ!!!」

ガッシャーンと、落ちてきたのだ。真っ直ぐ、オレめがけて。

雷撃による余韻と達成感。意外と痛くなかったな、と思っていると、スタスタとミツキが歩いてきて、オレにこう言った。

「おつかれぇ、ミキオ。ところで、指示書はぁ?」

「指示書?ーーーあ・・・」

雷に打たれる寸前、逃げる様にオレの手から離れていった指示書の事を、今更思い出した。

本来、指示書に雷を当てる事が今回の本懐な筈だ。

しかし、今、当たったのはオレだけで・・・。

いつの間にか歩み寄ってきたホナミが、事務的な声音で一言。

「・・・もう一回」

「勘弁して下さいぃ!!」

弾かれる様にオレは懇願の土下座を敢行した。

もうあんな怖いのヤダ!ダメージはさほど無かったけどショックがデカすぎる!!

と、オレの背中に細い指先が当たる。

「『リリーフ』」

誰のかと訝しむまでも無く、背中から広がる暖かい感覚に鏡山の回復魔法だと直感する。

顔を上げると淡青色の瞳がぶつかった。

「えぇっと、お疲れ様、ミキオっ!ワタシの魔力ならまだあるから、いくらでも打たれてね」

天使の微笑みで、悪魔みたいな事を言ってきた。

「ううぅ・・・、ミツキィ・・・」

オレは多分、捨てられた子犬の様な目をしていたと思う。

そんな目でミツキに視線を向ける。

「どうしても、この作戦が嫌なら止めるぅ?」

優しい声音で、諭すようにオレに問いかけるミツキの声に、そして期待の眼差しに、オレの答えは一つしか無かった。

「冗談だよミツキ、リトライだ。次こそ指示書を雷に当ててやるぜ!!」

「いや、それはもうしなくてもいいんだけどねぇ」

「へ?」

なんで?今までこの為に頑張ってきただろ?

「うーんミキオぉ、ボク達がなんでこんな事してるか覚えてるぅ?」

「なんでって、そりゃ指示書に雷を当てる為だろ。オレは雷属性だから、当てれば武具が揃う裏技が見えてくる、から」

それは、委員長に教わった、ミッションの抜け道。

だからオレは血反吐吐こうとも雷に当たらなければならないのだ。

「だったら、ほかの雷魔法が打てる人に指示書を渡せばいいんじゃない?」

「はぁ?それが出来れば苦労してないだろ、この街で雷魔法が使える人は一人しか居ない上に、その人は今ダンジョンの中だろ?」

ミツキらしくもない。それにーーー

「ダンジョンに入れるのはちゃんとした手続きを受けた冒険者だけで、しかも冒険者って言うのは最低でも3人1組のパーティを組まなきゃいけないからオレとミツキだけじゃどうしようもーーー」

「それ、ワタシが加われば3人1組になるんじゃ・・・」

言葉の途中で、鏡山がおずおずと手を挙げて入ってきた。

「・・・あーーーー!!そうか!」

ミツキも自分の言わんとする事が伝わったのか、満足げな吐息を漏らしてオレと鏡山を交互に見る。

「今、ミキオには二つの選択肢があるんだぁ。このまま北村さんに雷を打ってもらうか、鏡山さんを仲間にして、ボク達自身で雷の魔法使いを迎えに行くか」

「ミキオは、どっちがいい?」

オレは一瞬、逡巡して、そして鏡山と固く握手をした。


・・・アレ?ていうかミツキ。

それオレが雷に打たれる前に言った方が良かったんじゃ・・・。


ーーーーーーーーーーーーー



コルドバ中央にでかでかと配置されている冒険者ギルド、その中のテーブル席の一角で、オレは瞑目していた。

ギルドに充満するのは喧騒による熱気と酒臭、そしてわずかな血の匂いだ。

ギルドにいるのはオレ達だけでなく、筋骨隆々な男たちがガヤガヤと騒ぎ立て、昼間から酒を煽っている。

「なんか、めっちゃ簡単に冒険者になれたな・・・」

オレは今しがた渡されたカードをしげしげと眺める。

あれから、オレとミツキと鏡山は冒険者ギルドなる所に行き、簡単な書類を書いて受付のお姉さんに渡しただけでアッサリと登録は完了した。

「出身地、山奥の村とか、大雑把に書いて出したのにまさかオーケーされると思わなかったよね・・・」

鏡山も若干呆れ混じりの微苦笑を漏らした。

そうなのだ。まさか出身地に『別の世界』だの、『日本』だの書くわけにもいかないから、ミツキの指示で適当にでっち上げた。

その紙をお姉さんは確認もせずに箱に入れると簡単な説明だけ受けてカードを渡され、今に至る。

「ともあれ、コレで晴れて冒険者だねぇ。コルドバ付近のダンジョンは比較的危険度は少ないけど、今日は準備だけしてダンジョンに行くのは明日にしようかぁ」

ミツキはそうとだけ言うとオーダーした甘い果実の汁を飲み干し、テーブルを立つ。

その時ーーー

「大変だああぁぁァァァ!!」

地黒の肌にモジャモジャのヒゲをたくわえたおじさんが、ギルドの扉を乱暴に開けて入ってきた。

その双眸には計り知れない焦燥が含まれていて、それまで酒を飲んでいた人たちはその手を止め、事態の緊急性を察した。

「コルドバ付近のダンジョンに強い魔物が現れて・・・!俺は何とか逃げ帰ったがまだ中でモンジェロが・・・!!」

痛烈な表情で言葉を吐き出すモジャヒゲのおじさん。

その周りに男たちが集まってきて、励ましているようだ。

「ダンジョンに強い魔物がねぇ。やっぱり今日行くのはやめといた方が良いな」

オレは人だかりを横目にそう再確認する。

「・・・そうもいかないかもねぇ」

ミツキは怜悧な瞳をオレと鏡山に向けると、イスに座って手を組んだ。

「ボクたちが探している雷の魔法使いの名前は、モンジェロ、なんだ」

「ーーーーぇ?」

モンジェロ、まさに今、モジャヒゲのおじさんの口から出てきた、魔物に襲われている冒険者、だった。



ーーーーーーーーーーー



「助けて下さり、本当にありがとうございます!!」

眼前の金髪碧眼の美青年、モンジェロは、礼を述べるとオレたちに深く頭を下げた。

「あぁ、いや無事で良かったです。あなたが居なけりゃマジでオレ困るんで」

目端には、大きな豚の魔物の死体が転がっている。

今オレが倒したヤツだ。

手強かったが、ヴァルドに比べれば雑魚もいい所だった。

オレたちがダンジョンにたどり着いた時、既に満身創痍だったモンジェロだが、鏡山の回復魔法のおかげでアフターケアは完璧だ。

「お疲れのところすいません、モンジェロさん、この紙に雷魔法を打ってくれませんか?」

ミツキが指示書を差し出してそう頼むとモンジェロは二つ返事で快諾する。

「もちろん、では、『ボルト』」

短くモンジェロが詠唱すると指先から漏れ出た魔力が世界のイデアに干渉し、電気へと性質を変化させる。

バチリと音がして、指示書に雷魔法が直撃すると指示書の裏側に、文字が浮き出てきた。

「おぉ!文字出たぁぁぁぁ!!」

ここまで、本当に長かった。

ここまでの道のりを振り返ると、達成感もひとしおだ。

思えばこの街に来てからオレは散々な目にばかり遭ってきた気がするが、もはや忘れよう。

「えぇっと、なになに、『マラケシュ村』・・・?」

文字を読み上げた鏡山は、怪訝な顔をする。

「どこだそこ?」

「この街から何百キロか離れた小さな村だねぇ、馬車だと大体、10日くらいかなぁ」

「え?10日・・・?」

オレはミツキの言葉に耳を疑った。だってーーー

「ミツキこの前、コルドバは辺境だから近く20日以内に行けるような街は無いって言ってなかったか?」

その疑問にミツキはあぁ、と呟くと冷然とする。

「外したのはわざとだよぉ、マラケシュ村の村民は農耕作物で生計を立てているから、武具屋なんてあるわけ無いんだ」

でも、とミツキは言葉をつなぐ。

「どういうわけか、指示書にはマラケシュ村が浮かび上がった。どうする?ミキオ、鏡山さん」

わかりきった答えだ、そんな事聞くなと言ってやりたかったがしかし、ミツキの良さはそこにある。

オレの前に、鏡山が一歩出てミツキを見ると、強い意志を感じさせる瞳で言葉を放った。

「ワタシは2人の仲間なんだから!どこまでもついて行くからね!!」

「あと、ワタシは鏡山さんじゃなくてマドリだから!ミキオもそこのとこ、よろしく!」

鈴の声を張り上げて鏡や・・・マドリは胸を張り、フンと鼻を鳴らす。

オレはガシガシと頭を掻き、肩をすくめるとーーー


「行くぞ!マラケシュ村!!」









鏡山マドリ


身長・・・171センチ/157センチ(女体化)

年齢・・・16歳

趣味・・・写生、適当にインストールしたスマホゲーム

友人・・・第一印象で相手の方から話しかけてくることが多いが、去っていくことも多い。結果、友達0

天稟・・・『女体化(?)』

転移直後からずっと女体化し続けている。

女体化による恩恵は今のところ見つかっておらず、また元の姿に戻る事も出来ない。

自覚は無いが、女体化したマドリは転移以前のマドリよりも性格がマイルドになっており、毒舌もある程度なりを潜めている。

一人称も然り、性格まで女体化した姿に影響されて女の子らしくなっている。

魔法・・・『リリーフ』

対象者の痛みと怪我の度合いを和らげることが出来る。オーソドックスな回復魔法。


『リカバリー』

リリーフの上位互換。大概の怪我は治せるが魔力消費量はリリーフとは比べものにならない。



備考


毒舌家な性格が災いして恵まれた容姿がマイナスにしか働かない残念イケメン。

女体化時は透ける様な白く、キメの細かいやわ肌に淡青色の瞳、月明かりで光芒を纏う白銀の長髪を2つに括っている。

胸が大きく、走るとものすごく揺れて痛いので不便に感じている。

元来、目立ちたがりな性格で、マドリの行動について来てくれる様な、いわば悪友に強い憧れを持っている。

第一印象は良いので他学年からは尋常じゃないほど人気がある。

実は彼女が出来たことが無く、女子に話しかけられると極端にどもったりする。

友達が居ないので、基本1人でいることが多く、マドリを一目見た者はクールでカッコいいと評するが実は寂しがり屋。

異世界転移後、少しの間だけマドリはクラスメイトたちと同行して居たが、宿屋を決める際に男女どっちの部屋で寝るか大揉めしてマドリはひっそりと姿を消した。

それからは謎の喋る猫に魔法を師事してもらいある程度この世界の知識を得た。

持っている謎の箱のカラー(魔法適正)は緑(回復)と黒(闇)のマーブル模様だが現在使えるのは回復魔法のみである。

ちなみに一章2話で、地味に初登場してた。




どうも!キズミ ズミです!!

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