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チート無しクラス転移〜〜Be chained(ベチーン)〜〜

キズミ ズミ

二章 16話 『シスコンは厨二病と共に』




小高い丘。その頂上に突き刺さった一本の棒に縛り付けられた少年がいた。

少年は右手に真っ黄色の紙を握りしめて、天高く掲げている。

誰であろう、オレである。

オレの体を縛った縄はギチギチと音を立ててその強固さを主張する。

はるか高くにある曇天はオレの頭上にだけわだかまり、今にも雨が降り出しそうだ。

「・・・本当にやっていいの?アタシは知らないからね」

「うん、やっちゃってぇ」

オレのいる場所、つまりは丘の頂上なのだが、そこから少し離れた所で、気だるさを隠そうともしない少女とオレの唯一の親友であるはずの少年が並んで佇んでいる。

「なぁ、ミツキィ!!ホントに雷に当たっても死なないんだよなぁ!?」

何度も説明はされたのだが、不安なものは変わりない。

ミツキは両腕でマルをつくると隣の少女に目配せした。

「じゃ、いくよ」

少女が一言呟くと、頭上の曇天がうねり、雷が落ちる。

オレの、真横に・・・。

雷の後を追うように鳴り響く轟音が鼓膜をつんざいた。

「ッッギッヤあぁぁぁぁァァ!!?ダメだこれめっちゃ怖いぃぃ!!」

オレが根をあげて絶叫するも、少女は素知らぬ顔で続く第2の雷を準備する。


ーーー何故こんな事になってるのだろう。

気が動転して、記憶が逆流する。確か、3時間前の事だった。



委員長と別れた後、宿屋に帰るとミツキが居た。

オレは今しがた委員長から得た情報をミツキに話す。

とは言え、既にミツキも知っているものだったから、再確認と認識の擦り合わせに終始した。

その後、目下議題は『いかにして手元のミッション指示書に雷を当てるか』という事だ。

この世界には、地球に無かった概念がある。

つまり、魔法だ。

どうやらオレの魔法適正(たくさんある魔法属性のうち、オレが一番向いてる属性)は雷属性らしい。

だから、オレのミッション指示書に雷魔法を当てれば、ミッションの攻略法が指示書に浮かんでくるのだ。多分。

とは言え問題は、「オレ魔法とか使えないじゃん」って事だ。

いくら向いてるとは言え使い方がわからない。

ミツキもそう考えて今日、コルドバの冒険者ギルド(要するに魔法が使えたり戦いのエキスパートたちが集まる所)に行って雷魔法を使える人を探したらしい。

オレが雷を打てないのなら、ほかの人に代わって貰えばいいのだ。

冒険者ギルドに行って、わかったことは5つ。

1つ、この街に雷魔法を使える人は一人しか居ない。

2つ、唯一使えるその人は今、ダンジョンに潜っているので当分帰ってこない。

3つ、ダンジョン内の魔物は強いので冒険者ギルドに加入している人以外ダンジョンには立ち入り禁止。

4つ、ギルド加入登録は最低でも3人1組が原則。


ギルドに入りたくても、オレとミツキしか居ないのでギルド加入できない。

もし数合わせ的にクラスメイトからもう一人連れてきて、登録した後に別れると、諸々の事情があって色々手続きがめんどくさくなる。

つまりは、オレとミツキと、プラスアルファもう一人。

今後のミッションでオレたちと同行する誰かを連れて来なければいけない。

もちろん、そんなやつはいない。

ついでに言えば、オレとミツキはクラスメイトたちと合流しない事にきめたのだ。

二人だけの方が身動きが取りやすく、また、他のクラスメイト(ミッションを失敗してもペナルティを受けないで済む人たち)とミッションに対する温度差が不和の原因になる気がした。

別に、友達が居ない訳じゃない。わけじゃないから・・・。

「っていう事で、この作戦はキツいかもねぇ。誰か知り合いに雷出せる人いなかったっけぇ?」

「そんなビックリ人間との親交はねぇよ。それこそ天稟でも使わなけりゃ・・・・・・あぁ!!」

オレの頭に衝撃が走る。

ベットで寝そべっていた体勢から半身を起こしてミツキを見た。

「ミツキ居るぞ!!雷を出せる知り合い・・・いや、知り合い、か?そういや話したことあったっけ・・・?」

眉をひそめて自問するオレにミツキは首を傾げていた。


そんなこんなで、現在。

整った顔で丘の頂上を睨む群青の髪を1つに束ねた少女の名は、北村ホナミ。

学年トップクラスの美少女にして、『天候を操る能力』の持ち主。

彼女の天稟ならば、この指示書に雷を落とす事も可能だろうと考えたのだが・・・・・・。

「まさか縛り付けられてオレごと雷でバーベキューとか想像してなかったぁ!!」

オレの魂の叫びも、真後ろに落ちた雷の音によってかき消される。

ホナミいわく、狙ったところにピンポイントで雷を落とす事は極めて難しいらしい。

だから、避雷針というか、当てるべきマトがあった方が彼女的にやりやすい。

「ミキオは雷属性だからある程度の雷撃に耐性があるんだよぉ」

「そんな事言ったって怖いものは怖いだろぉーーー!!」

ガッシャーンと空気が破れる音がこだまして、オレの鼻先数センチのところに雷が落ちた。

「ああァァァ!!もうムリ、ムリムリムリムリーーー!!」

オレは体を縦横無尽に動かして緊縛の解放を試みる。

「ちょっと動かないで、今マジで集中してるから・・・!」

額にシワを寄せてホナミがドスを効かせる。

と、曇天が淡く光ったかと思うとおびただしい数の雹が頭上から降り注いだ。

「アダッ!?痛だだだだだぁ!!」

オレのにじり拳くらい大きい雹は容赦なく全身に激突し、オレの意識を刈り取っていったのだった。


ーーーーーーーーーーーーーー


「あーあー、何やってんだアイツら・・・」

ミキオたちから少し離れた場所。

地面から露出した岩に腰掛けてホナミが雹を降らすその様を、ため息じみた声で呆れる少年が居た。

不精な性格ゆえ、伸びきった群青の髪に妹からいつも顔に覇気が無いと罵られる彼。

少年の名は、北村ムギヤ。北村ホナミの双子の兄である。

「何だよホナミのヤツ。俺に何も言わないで出てくからお兄ちゃん心配しちゃっただろうが」

ムギヤは群青の髪をボリボリかくとホナミのいる方向に歩みだした。

とーーーーーーー

「止めておけ、『無垢なる逡巡ラビリンスオブイマジン』、貴様が行くと妹御の集中が乱れるであろう」

やたらと尊大な口調でムギヤを呼び止める一人の少年。

「ビビった、二戸生かよ・・・」

「フッ、今日も我のハイディングスキルは健在であるな」

赤い髪に真紅の瞳を半分隠して、右手だけに指ぬき手袋をつけた少年の名は、二戸生リュウト。

いわゆる、厨二病である。

「どっからつけて来たんだ?やめとけよ、ストーカーとか、モテないぜ?」

「今の貴様にだけは言われたく無いんだが・・・、それに我を呼ぶときは
調和のとれた不協和音パラドックス』と呼ぶがよい」

リュウトは片手の指先を額に当て、若干海老反りになって振り返った。

後からその様を、シャフ度と言うのだと知った。

「やだよ、つーかそれどうなってんだ?親文字とルビが同時に見えたんだが・・・」

「選ばれし者だけが会得できる秘術である。我自身、よく分かってない」

「知らねぇよ・・・、てかそんな高等テクを俺に求めんな」

ムギヤが鬱陶しげにそう返すと再びホナミを見る。

「ーーーーーーーッッ!!」

依然、雹を降らせ続けるホナミの体がよろけるのをムギヤは見逃さなかった。

ムギヤは矢のように飛び出し、俊足でホナミに駆け寄ると華奢で柔らかな肢体を受け止めた。

「あれ・・・?なんでお兄ぃココにいんの」

ホナミが蒼の大きな瞳でムギヤを不思議そうに見る。

「そりゃ俺がお兄ちゃんだからだよ。俺はいつだってホナミを心配してるんだぜ」

「・・・ふぅん、じゃあお兄ぃ、その手どけて」

「だがこの手を離したらホナミが倒れちまうぞ?」

ホナミの背中を抱えているムギヤは眉をひそめ、視線を交錯させる。

「いや、ブラの感触楽しんでそうでキモいからそっちもなんだけどさ」

ホナミは苦虫を噛み潰した顔をしてムギヤの左腕に目を向ける。

「こっちの手、置く意味ある?」

ムギヤの左腕は、ホナミの胸を包むように添えられていた。

「心拍の確認だ。安心しろーーーーーーーーぐあぁぁ!!」

突如、頭上から降って来た特大サイズの雹がムギヤの頭に激突して、膝から崩れ落ちた。

「お兄ぃ、ホントキモい」


ーーーーーーーーーーーーーー


「あーーーークソ、全身痛ってぇ」

オレは銭湯の脱衣所で服を脱ぎながら一人ブツクサと文句をはく。

結局、アレ以上北村(妹)の集中力が保たない、と言う事で一旦解散してまた後日、という運びになった。

ミツキは宿屋に直帰し、オレは銭湯に足を運んだ。

全裸になって、脱衣所に置かれていた鏡をふと見ると、地球にいた頃よりも肉体が一回りたくましくなった気がする。

何気なく腕を曲げると力こぶが盛り上がる。

「そう言えばヴァルドにくらった傷、もう大体完治してるな。いや押したりしたらまだ痛いけど」

これも冥護人の恩恵なのか、自然治癒力も格段に上がってるようだ。

とはいえ、先程しこたま叩き込まれた雹弾のアザは未だ紫の跡を残している。

「明日こそ雷を受けるんだろうなぁ。気が重い」

オレは深くため息をつくと浴場の戸をガラリと開けた。

モウモウと立ち込める湯気の中に足を踏み入れるも、人の気配はしない。

「お、今日はオレ一人大風呂独占か?よっしゃ、クロールでもしちまおうか」

「残念、先客がいるんだぜ」

音のこもる浴場内で一人テンションを高めていると奥の方から声がした。

だが、声はすれども姿は見えない。

オレは風呂を注視すると水面が泡立ち、波紋が広がっていく。

ザバァッ、と水が逆巻いたかと思うと波紋の中央から男が突き出て来た。

「既に水泳大会も、息止め合戦も、果てはアイスバケツチャレンジまでお先に終わらせといたぜ、さぁ、お前はどうする!?」

「先に出ますね。ゆっくり浸かってて下さい」

オレはパタンと浴場に繋がる戸を閉めるとそそくさと服を着直す。

なんだあの人!?あそこまで人を怪しいと思った経験はないぞ!!

言動は擁護不能なレベルの不審者な上、更にはーーーーー

「おぉい!なんだよ少年、一人じゃ寂しかったんだよ一緒に入ろうぜ!?」

いつの間にか戸の前に来てオレに入浴を促す全裸の男は、もはや恐怖すら覚えるほどに、ビックリするほど不審者だった。

「・・・回覧板に書かれないように注意して生きてください」

「唐突に何!?」

男は全裸のままオレに歩み寄って来て、オレの発言に驚いたような、声音だった。

「オレの何がいけないんだ。オレは君みたいな少年の恋バナとか聞いてみたいただの中年だぞ!?」

「怪しすぎんだよアンタ!第一、人と話すときは目くらい合わせとけ!」

男は全裸のまま、鍛え抜かれた肉体に刻まれた古傷を惜しげもなく晒し、好意的なフランクさとはかけ離れた雰囲気を醸し出している。

更にはーーーーー男の顔が、否、頭全てが、黒いモヤで包まれてフルフェイスのヘルメットみたいになっていた。

「オレの名はカムリ。搏撃卿だの言われてるが、まぁ適当に、カムっちゃんとでも呼んでくれ」





どうも!キズミ ズミです!!


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