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チート無しクラス転移〜〜Be chained(ベチーン)〜〜

キズミ ズミ

二章 10話 『決着、歴史の齟齬』




「オラァッ!!」

「アブ・・・ッ!?」

放たれたヴァルドの右ストレートを半身で避ける。

正直、大分綱渡りだ。

先ほどとは一転、小細工抜きの真っ向勝負になってから、オレはずっと防戦一方だ。

「逃げる!避ける!構わねェがそれじャァ鎧はやれねェぞォ!!」

続く左フック、顎に当たる寸前で体をひねり事なきを得る。

「無っ茶言うなぁ!怖ぇっつーの!」

「シラけンだよ!キリキリ動けやァ!!」

顔へと伸びるヴァルドの一撃。

オレは腕でガードしようとする、しかしヴァルドはオレの腕を抑えるとニヤリと笑みを浮かべる。

「・・・・・・ッッッ!?」

ヴァルドの拳はオレの頬にめり込み、頬骨が砕ける音が聞こえた。

「〜〜〜〜ッ!痛っってぇぇーーーー!!」

反射的に涙が浮き出る。ズキズキと痛むほっぺたをさすって現状把握。

たまらずバックステップでヴァルドから距離を置く。

「だァから言ッたろォが。もっと根詰めて戦えや」

彼我の距離はヴァルドによって一気に縮められ続く追撃。

やべえ、ころされる。

「ガァッ・・・!」

乾いたうめき声、あげたのはヴァルドだった。

「てッめェ・・・!やるじャねェかよ・・・!!」

とっさに繰り出した左フックがヴァルドの腹に決まったのだ。

「あ、あと・・・そうだろ?反撃開始だぜ・・・?」

割とラッキーパンチだったが、オレは少し調子に乗った。

ーーーーーーーーーーーーーー


「う、ぅグッ!キアルディ・・・!」

キアルディの亡骸を抱え、すすり泣くヴァルドの背後から、忍び寄る大きな影があった。

手にはナイフを持ち、一歩、また一歩とヴァルドに近づく。

ーーーーザクリと、嫌な音がした。

「ーーーーーーーぇーーーー?」

未だ理解が及ばず、呆然としているヴァルド。

しかしその左肩は、ダクダクと、紅が流れ続けていた。

「・・・・・・ッ!!?あぁぁぁぁぁぁ!!」

激痛が、ダイレクトに伝わってくる。

脳が平時ではあり得ない量のアドレナリンを身体中に送る。

ヴァルドはキアルディに覆いかぶさるように、その場にうずくまった。

「ーーーーーーー」

その様を、遥か高みから睥睨するその少年。

少年はどこまでも淡々とした表情で再びヴァルドにナイフを振り下ろす。

「あァァァ・・・・・・!!」

しかしヴァルドは肩の痛みを押し殺し、ナイフを躱した。

ゴロゴロと横に転がり、壁に密着し、正体不明の敵、その全貌を確認する。

7対3に分けられた髪型に冷然とした切れ長な瞳。

その顔貌からも、背丈の大きさからも、当時13歳のヴァルドよりも一回り年上に見えた。

「ーーーーーーー」

少年はヴァルドに一瞬で近づくと右から、左へ、ヴァルドの顔に凶刃が走った。

噴出する鮮血の後を追うようにざわめき出す激痛。

ーーーーーーーこわい、こわいこわいこわいこわいこわいこわい。

貴族の屋敷で、一生分出し尽くしたつもりの絶望がぶり返してきた。

いや、既にキアルディをなくした時点で漏れていたソレは、眼前の少年を引き金にとめどなく溢れ、涙となってこぼれ始めていた。


ーーーーーーーーーーーーーー


ミキオとヴァルドの、絶え間なく続く拳戟を見ていたヴァルドの子分の1人が首を傾げた。

「なぁ、ナーナス」

子分の1人は自分の横にいた女子に話しかける。

「何?」

「いや、ヴァルド兄ィのよ、肩の傷、前からあったっけ?」

ヴァルドはいつも、黒く染まった甚平を素肌に羽織っているだけの格好である。

もちろん今日も例に漏れずそのファッションなのだが、既にその甚平はミキオとの戦闘により破れ、もはや上裸と言っても差し支えないほどだ。

ヴァルドの露出した肩口には、見慣れない、大きな刺し傷が刻まれていた。

いわんや、スラム街での生活は過酷を極める。

ヴァルドのみならず、そこで暮らしているものは少なからず古傷はある。

しかし、誰よりも敬慕しているヴァルド。

見慣れない傷があれば、なんとなく、違和感があった。

しかしーーーーー

「何言ってるの?前からあったよ」

と、一言で切り捨てられた。

「そ、そうか・・・そうだっけ?」

そこで会話を終えたものの、やはり腑に落ちない。

子分はナーナスから、再びヴァルドに視線を戻す。

そして、目を疑った。

ヴァルドの顔、頬骨に沿って、真一文字に深々と刻まれたその切り傷には、絶対に見覚えが無かった。

猜疑心が確信に変わりナーナスを見やる。

「な!?おいナーナス!兄ィの顔の傷!アレいつついたんだよ!?」

「・・・・・・前からあったじゃない。私たちと会う前からあの傷はあったよ?」

当然のように、やはり答える。

その問答に、子分はまたしても首を傾げた。


ーーーーーーーーーーーーーー


「ハァっ、ハァっ、くそ、体動かねぇ・・・」

慣れない戦闘、もうずっと気を張りつめ、動かし続けていたオレの体は痙攣し始めていた。

「・・・おいコラ冥護人ォ、ちッとはやる様になってきたと思ったがもう終わりかよォ」

口調こそ、余裕があるヴァルドだが、肩で息を切っている、既に疲労困ぱいなのは一見して見て取れた。

鉄骨で緩和したとはいえオレの『黒鞭』のダメージは少なくない。

ヴァルドの腕、尺骨のあたりは肉が亀裂していて、血が滴っている。

「・・・なぁヴァルド」

「あ?ンだよ冥護人」

1つ、疑問を抱き問いかける。

「お前、自分の子分の事どう思ってんだ?」

「ーーーーーーあ?」

突拍子も無い、場違いな質問にヴァルドは虚を突かれ、一瞬呆けた。

「いや、えっとなぁ、勝負が始まってからずっとなんだが、全方位からの熱視線がすげぇんだよ」

なんて言うか、アウェイ感がハンパ無い。

アニキを負かしたら殺すぞ!って感じの雰囲気が満ち満ちてる。

マジで、肝の小さいヤツなら軽くチビるレベル。

「だから、随分慕われてんだなぁ、って思ったし、じゃあ、お前はコイツらの事、どう思ってんのか気になったんだ」

言い終えて、ヴァルドはやや口の端を緩めた。

「・・・ったく、くだんねェ、コイツらは全員オレ様が助けてやって、こうして生きてる。そりャァ懐くさ」

「ンでよォ、実はオレ様も救われてんだ。意外だって思われッかもだが、クソ遠い街から帰ってきて、そんで、出迎えてくれるコイツら見たらよォ、その、なんだ・・・、あぁ!うぜェ!」

ヴァルドは照れくさげに何か言いかけるが途中で諦めてオレンジ髪をガリガリ掻きむしった。

「とにかく!だ、冥護人ォ!お前さえいてくれりャァ子分どもはザイーダのクソ野郎に泣かされる事ァねェンだよ!」

「オレ様は勝たなきャァいけねェンだよ・・・!他の誰でもねェ、オレ様の為にだ!!」

言い終えて、聞き終えて、オレは図らずもコイツの子分になっても良いかもしれない、と思ってしまった。

「は、何だよ、お前、いいヤツじゃんか」

「ただ、オレも負ける訳にいかないんだよ・・・!ミツキの為に」

双方、同時に前へと駆ける。

ぶつかり合う拳と拳、途端、ソコを起点に軽い衝撃波が発生する。

辺りにいた者は全員、一歩下がりクライマックスと言うべきその勝負の趨勢を見守る。

ヴァルドの右フック、腹にあたり血痰を吐く。

オレのヒザ蹴り、胸にあたり空気を出し尽くす。

やはり、戦闘経験の差が如実に現れる。

ヴァルドの一発は果てしなく重い。

ヴァルドは左腕を振りかぶり、打ち込もうとした。

しかし、ヴァルドは己の左腕、いや、左肩の不調に気づく。

ズキズキと痛む左肩は、拳を握ることも出来ず、痙攣していた。

それは確か、いつかつけられたナイフの傷だった、気がする。

はて?この傷は、前からあったものだったか?


「あ、あアァァァァァァ!!!」


白黒した視界、おぼつかない足元、もはやガード度外視で繰り出した全力の右ストレートが、強かにヴァルドの顎を捉えた。

グルンッ、とヴァルドの見る世界が上下逆転する。

脳が揺れて、力を込められない。

ーーーーーここまでか・・・。僅かな諦観が頭を通った時、ヴァルドの脳裏に、ガードンが、ハラズが、ミラーディが、コイザードが、ヤビィニィが、ジェンキンスが、ハイガーナイズが、ラークが、ゼクズが、マウルズが、マレマレが、バイクルが、サイザが、ナーシクルが、ヤードルサルが、ミーミーが、ウィックスが、エンディーが、パイプが、サーバが、ファイナイルが、パクルが、ヂーチルが、サザールが、マイシャルが、ビライズが、ラハラフが、ピーチが、メーテルが、クールが、バイラルが、ーーーーーーーキアルディが、去来した。

皆、スラム街なんかに生まれて来なければ、普通に幸せに生きて、普通に幸せに死ぬはずだった奴らだ。

逃れられない、スラム街の呪縛。

そんなものに生まれつき罹ってしまった哀れな奴らだった。

・・・・・・いい奴らだった。

「ーーーーーーーッッッ!!!!」

やや後傾姿勢になっていたところを、誰かが支え、ヴァルドは倒れずに済んだ。

いや、実際はヴァルドが背中から生やした鉄骨によるものなのだが、しかしヴァルドはそう感じた。

ヴァルドは大きく跳躍すると、自分の体に入っているすべての鉄骨、ヴァルド棒を眼下のオレに落とした。

「『反骨・ライヴーーーーー!!』」

「んなーーーーーッ!?」

頭上から雨粒の如く降り注ぐ鉄骨の雨に、オレは賭けにでた。

「『鎖縄ーーーーーーーニビイロ螺旋!!!』」

十指をすべて鎖に変え、降ってくる鉄骨に巻きつけ、軌道を逸らした。

ズンと重い音が響き、オレの辺りの地面に鉄骨が横たわったり、突き刺さったりする。

己の最後の攻撃が無力化されたヴァルドは、空中から力なく落ちてくる。

「ウハハ・・・、すまねェ、お前ら」

重力に従って落ちてくる寸前、たしかにヴァルドはそう言った、気がした。

ヴァルドが地面に激突し、砂煙が巻き上がる。

やがてそれが晴れた頃、地面に背をつけて、空を仰ぎ見るヴァルドが一言、

「ーーーーーー負けちまった・・・・・・」

その言葉により、オレとヴァルドの勝負は決着した。

「勝った・・・?」

現実味がない。だって、ヴァルドに勝ってしまった。

「そうか。勝ったのかよ・・・!ミツキ、やったぜ」

オレはミツキを見て、親指を立てた。

その時ーーーーーーー


「ガハハハ!!ヴァーールドォ!!」

酷く、鼓膜を揺らす耳障りな大声が聞こえた。

見ると、禿げ上がった、ネズミみたいな顔をした中年の男が少し離れたところに立っていた。

ネズミ顔の男の後ろには、沢山の男がギラギラした目でこちらを睨んでいる。

「誰だよ、アイツら」

オレが言うとヴァルドが寝転んだ体制のまま口を開く。

「・・・ザイーダ組の奴らだ。アイツら、オレ様が喧嘩してるって事どっかから嗅ぎつけたんだ」

何のためにーーーーー?

聞くまでもなかった。普段ならまず敵わないであろうヴァルドが勝負によって疲れ果てていた時を狙い、漁夫の利を得ようという算段なのだろう。

そしてそれは今、成功しつつある。

奴らの目論見通り、今のヴァルドは満身創痍、疲労困ぱい、どちらピッタリ当てはまるような状態だ。

「オメェら!今がヴァルドをぶっ殺す最大のチャンスだぜ!やっちまえ!!」

ネズミ顔が促すと、後ろにいた男たちがゾロゾロとヴァルドの周りを囲み、手にしている岩石やら、鉄の棒やらで袋だたきにする。

ーーーーーーと、思われた。

凄まじい轟音が響き、ヴァルドを囲んだ男たちは宙を舞い、周りの壁にその体をめり込ませた。

「なんだとぉ!?」

目を向いて驚くネズミ顔、その視線はヴァルドと交錯する。

「ウハハ・・・!オレ様を叩こうなんざ100年早ェ・・・」

研ぎ澄まされた鬼気、辺りの人間は皆、数瞬身体をすくめた。

「まだだッ!オイラの部下はまだいるんだぜ!?」

ネズミ顔の後ろから、数えるのがバカらしくなるほどの大勢がヴァルドに向かってひた走った。

「ンだよ、ちッと多すぎじャねェかよ・・・!」

手に凶器を持った集団。そいつらが全員、なだれ込んでくる。

「『鎖縄ーーーーーー黒鞭!!』」

オレはそいつらがヴァルドに到着する十歩ほど先で、そいつらの足元に『黒鞭』を見舞う。

ただの牽制のつもりだったが、思いの外効果はあった様だ。

男達は足並み揃えてヴァルドから離れていった。

「冥護人ォ、余計なことすんじゃねェよ。子分でもねェお前は、ンなお節介せずに鎧持ってこッから失せろ」

「・・・しゃくだろうが」

「ーーーーーあ?」

「あんなに強ぇえお前がこんなトコで負けちまったら、なんかしゃくに障るんだよ!」

「あと、オレは冥護人じゃなくて加藤ミキオだ。そこんとこ、よろしく!」







どうも!キズミ ズミです!!


話数重ねるごとに文字数増えてってる気がする・・・。


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