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チート無しクラス転移〜〜Be chained(ベチーン)〜〜

キズミ ズミ

二章 7話 『脳みそ数センチフロントライン』




ずっと、歯がゆかった。

コルドバに来てからずっと、オレはミツキの世話になりっぱなしだった。

「ミツキは、すげえんだぜ・・・?」

「なまじ言葉と文字が分かんのに常識も勝手も日本と全然違うんだ・・・」

「それでも、ミツキはいろんなトコ駆けていろんなモノ知ってくる」

「オレは、ミツキの力におんぶに抱っこで何の役にもたってない・・・!」

「・・・・・・。・・・困るんだよ、鎧が無いと!」

「ミッションをやり遂げなけりゃ、ミツキはペナルティを受けなきゃならない!!」

「だったら!せめてオレが体張って鎧取らなきゃいけないんだよ!!」

「それくらいしか!オレはミツキにしてやれる事が無いんだ!!!」

図らずも、情けなく垂れた激情の発露。

それは今まで溜め込んでいたアレコレの決壊だった。

オレは、騒がしく心臓のあたりを掻き立てるナニカを抑え、深く息を吸って、吐いた。

「まだ勝負はついて無いぞ、ヴァルド・・・!」

オレが構えると、ヴァルドは再び自分の手から鉄骨を生やし、凶悪に笑った。

「イィぜ・・・、第2ラウンド、開始だ・・・!!」

「ーーーーーちげーよ」

瞬間、オレは大きく踏み込みヴァルドの懐に入った。

あまりに突然の事に、それでもヴァルドは反応し、迎撃の構えを取る。

「ガハァ・・・・・・・・・ッッ!?」

しかしオレは、ヴァルドの拳が届く前にヴァルドの腹に一発、打ち込んだ。

腹部への衝撃に仰け反るヴァルド、その間隙を見逃さず、続く一発、次も同じ腹、しかし浴びせたのは蹴撃だった。

脇腹に響く一撃、ヴァルドは勢いを殺しきれず、左方の壁に激突した。

「勝負に一区切りつけようとすんな、お前の番が終わったってだけだろ」

「こっからはオレのターンだ。ずっとな」

とはいえ、仮面の男に底上げされたオレの力は想像以上だった。

まさか蹴っただけでヴァルドがゴムボールよろしく飛んでいくとは思わなかったぞ・・・。

やっべえ、殺しちゃった・・・?

と、壁に埋まり今も晴れることのない粉塵の中で倒れているだろうヴァルドを心配してすらいるとーーーー

「ウハハ、コイツはヤベェなァ、クッションにしたヴァルド棒が歪むとは思わなかった」

と、不敵な笑みをたたえ、どこか余裕さえ感じられるヴァルドの風貌。

手には大きくひしゃげた鉄骨があった。

てかあの鉄骨、ヴァルド棒って言うのか・・・。

「よォ見誤ってたわ、認めてやる。お前、強ェよ・・・!」

ヴァルドがこちらに駆けてくる。

いつのまにかひしゃげた鉄骨を捨てたヴァルドのスピードは、凄まじいものだった。

オレに肉薄し、再び手から生やした鉄骨をオレのはるか頭上まで上げて、叩き落す。

一辺倒な攻撃法だと思ったが、先ほどとの違いはある。

今まで片腕のみで振るっていた鉄骨だったが、今回、ヴァルドはしっかりと鉄骨を両手で握っていた。

それはつまり、その分威力は上がると言うわけでーーーー

「歯ァ食いしばれや冥護人ォ!!」

「『気骨・イッポンギーーーー!!!』」

振り落とされた大質量物はまさに、死の権化と呼んでも相違ない代物。

その時、死で満ちたオレの脳内に、ミツキの顔が差し込んだ。

「死んでたまるかァァァァァァ!!!」

咄嗟に両手人差し指を鎖に変えて、交差させ、それぞれを両壁にくっつけた。

ーーーーガィィン!と耳朶を打つ金属音。

オレは脳天数センチの位置で、むくつけき死の権化の勢いを殺しきった。

己の技を殺されたヴァルドは顔にわずかな驚愕と、逡巡を表す。

と、微小ながら、鉄骨に込められた力が抜けた。

ーーーーーーーチャンスだ!

眼前に据えられた鉄骨を睨み、瞬時に鎖を指に戻すと体を捻って鉄骨の上に乗った。

なんともアクロバティックな芸当だが、異世界において、なぜかソレが出来るという確固たる自信があった。

鉄骨の上を駆け、ヴァルドに接近する。

もちろんヴァルドは反応し、鉄骨のみを『収納』する。

突如足場の無くなったオレは思い切り虚空を踏みバランスを崩すーーーーーかに思われた。

オレは鉄骨がヴァルドの体に吸い込まれていく瞬間、大きく飛んだ。


「『鎖縄ーーーーーーー黒鞭ッッ!!!』」


普段、鈍色の光沢に輝くオレの鎖はこの時ばかり漆黒に色を変えてヴァルドに打ち込んだ。

ーーーーギイィィィン、と、辺りに不協和音が轟き、やがてソレも聞こえなくなった頃、果たして、ヴァルドは立っていた。

「ウハハ・・・!やっぱ冥護人ってのはぶっ飛んでやがる」

ヴァルドの交差した腕の前には、幾重にも重ねられた鉄骨の束が見て取れた。

緩衝材にでもしたかったのだろうか、しかしその光景に、ヴァルドの子分は全員、息を飲んだ。

鉄骨、つまりはヴァルド棒、これはコルドバの最高級鎧、その売れ残りを鋳つぶし、接合してこしらえたヴァルド専用武器だ。

そのヴァルド棒には、極めて高純度のメルメタルが含まれており、その硬度は無類であった。

しかし、眼前の光景には、目視出来る限りで4本の折り重なったヴァルド棒が、ひしゃげ、ねじ切れ、振るわれた猛威がヴァルドにまで及んでいたのである。

「ヴァルド兄ィ!!」

「アニキ!!」

「ヴァル兄ちゃん!!」

今までミキオとヴァルドの戦闘を傍観していた子分たちは、皆一様に心配げな顔を浮かべた。

ある者は目を塞ぎ、ある者は涙をこらえ、ある者は手を強く握りしめていた。

そしてある者は、ヴァルドの劣勢を前に、先走った。

「おい!!そこの冥護人ォ!!!!」

大声で呼びかけられ、ヴァルドから距離を取った後、振り向いた。

声の主は先ほど、ヴァルドと出会う前に絡まれたチンピラ。

チンピラの手にはナイフ、そしてその傍に、ミツキがいた。

「なッ・・・・・・!?」

予想だにしていなかった事態に、オレの思考は一瞬だけ止まった。

ミツキを、人質に取られたーー!?

思えば、ココはまさに敵の陣地じゃないか。

闘えないミツキはまさに格好の人質と言えるだろう。

やられた・・・!コレも、作戦だったのか・・・。

ミツキを慮れなかった後悔が、怒涛に押し寄せてくる。

しかしーーーーーーー

「ハチゴォ!!!みっともねぇ事すんじゃねェ!!」

放たれた、地鳴りのような怒号にその場の全員が、身を強張らせた。

「ア、アニキ・・・!僕ちゃんは、アニキの役に立ちたくてーーーー」

「バカヤロォ!!!」

「なァ、ハチゴォ・・・、オレ様は、子分に心配される程情けねェのか?」

その問いかけに、チンピラは食い気味に答える。

「そんなわけ無い!!でも、この2人は、僕ちゃんが連れてきた、だから!せめてその償いだけでも・・・!!」

「・・・ちげェぞハチゴォ、オレ様は勝負のことなんざ言ってねェ、汚ねェ真似すんなッてんだ」

「汚ねェのは生き様だけで良い」

「ーーーーーお前らァ・・・!」

唸るように、ヴァルドは子分たちすべてに問いかけた。

「初めてネズミを喰った日ィ、覚えてるか・・・?」









ヴァルド


年齢・・・10代後半から20代前半(誕生日不明)

身長・・・180センチ

趣味・・・子分たちとの会話・・・?

友人・・・子分を除けば全員死亡済み


備考


現在、群雄割拠のスラムを取りまとめるスラム街のボス

逆立てたオレンジ髪に細身の筋肉質。

下半身はダボっとしたサルエルパンツに上半身は前の空いた甚平を1枚着用している。

有している天稟は『収納』

無機物に限り、なんでも自分の体に取り込める。

ただし、入れた物質を取り出すのには、物質の大きさ、重さに比例して体力を使う。

その代償と己の戦闘法を鑑みて作り上げたのがヴァルド棒という大きな鉄骨。

多分もっと燃費の良い武器もあるのではと、子分の間で賛否両論。

ファッションセンスは大分壊滅的。



どうも!キズミ ズミです!!

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