チート無しクラス転移〜〜Be chained(ベチーン)〜〜

キズミ ズミ

二章 3話 『スラム街の悪意』




この世界、ランドソールにおいて、魔物の侵入を防ぐために大体の街や村が領地の周りをグルッと一周壁だの掘りだので囲んでいる。

つまり、円状都市が非常に多く見られるランドソールだが、その形状が常識とされている中でコルドバは非常に稀有な街として名を馳せていた。

コルドバには、壁も掘りも無い。魔物に攻め込まれれば簡単にその侵入を許してしまう造りになっている。

とはいえ、かつてはコルドバという街にも壁が有った。

しかし当時のコルドバは街の規模が余りにも小さく、かつ四方八方が壁で囲まれているためにこれ以上の土地拡大も出来ずにいた。

寂れて行く街を見兼ねて嘆き、悩んだ当時の領主は壁を取り払え、と命じた。

領内の人間には大バッシングを受け、この事が原因で暗殺もされかけた。

領主は暴徒と成りかけた町民を3年越しに説得した。

魔物が侵入したらどうするんだ、彼らの言は決まってこれだった。

だから、領主はまず、各地から屈強な兵を集めて来た。

街を護る壁として。

そして領主はまた、各地から武具職人を集めた。

この街を、製錬の音の絶えない武具の街にしようと思い至ったのだ。

領主の目論見は、大成功した。

壁、崩壊から30年経った今、一度も魔物の侵入を許す事なく、この街は武具の聖地と呼ばれるほどの成長を遂げた。

今まさにコルドバは、辺境ながら質の良い武具を置く事と、壁を取り払ったことによる景観の良さが呼び水となり、年々観光客が増加している。

そんな今、絶好調なコルドバの中で、一際異彩を放つそこは、俗にスラム街と呼ばれるものだ。

街としての大いに成長しているコルドバで、そこはどこまでも暗く、汚く、旧態依然な場所だった。

普段、地元の人でも行くことの無いそこは、チンピラと落伍者の吹き溜まりであるそこは、どこまでも、街の裏側を表しているようだった。

「スラム街?」

昼ごはんを食べ終え、スラム街に向けて
ズンズンと歩いていくミツキに歩幅を合わせて並んでいた。

「うん、この街の最南端に、だいぶ前からあるらしくてねぇ、多分、そこなら武具が置いてあっても不思議じゃ無いと思うんだぁ」

「・・・・・・どゆことだ?ミツキ」

「そもそも、なんでこんな盛況な街にそんなマイナスイメージなものがあるんだろうねぇ、て事かなぁ」

「そりゃ、そういうの撤去するにはお金がかかるんじゃ無いのか?」

前に、ゴミ屋敷のゴミを撤去するのに何万もするのだ、という旨の番組を見た記憶がある。

「まぁ、そういう側面もあると思うよぉ、実際リサーチした時もそんな理由が大半だったしぃ」

「でもねぇ、ミキオ。スラムがあるにもかかわらず、この街の犯罪率はクリーン過ぎるんだよぉ」

「それは、いいことじゃ無いのか?」

ミツキは頭を振り、答えた。

「問題はスラム街にいる人たちがどうやって生計を立てているか、なんだよぉ」

「生活に困窮した人は法を犯し、金を得る。スラムなんてそんな人たちの吹き溜まり、なのに、治安は滅法良い」

「つまり、この街とスラムは奇妙な共生関係にあるんじゃないかなぁ?」

「共生関係?つまりどういう・・・?」

やはり明瞭としないミツキの口ぶり、とは言えそれこそミツキのミツキらしさなのだから仕方がない。

ゆっくりと答えをつかんで行こうと思い、ミツキに再び問いかけるとーーーーーーー

「はぁい、ちょっとそこのお前らー、取り敢えず有り金全部置いてこっから出てけや」

男、いや、少年に話しかけられた。

スラム街の中でも、人に会いづらい裏道を通っていたのだが、果たして、俺たちは絡まれた。

もちろん面識は無い。

少年の身なりはボロボロで、いわゆるチンピラなのだろうかと思った。

「・・・なんだよお前、追い剥ぎかなんかか?」

出会い頭に金品を要求してくるあたり、まぁ確実にそうだろうと見当はついたが、一応聞いといた。

「だいせいかーい。僕ちゃんこのスラム生まれスラム育ちの生粋の追い剥ぎ。命が惜しけりゃホラァ、早く金出して消えちまえよ」

そう言って、少年は懐からナイフを取り出し、オレたちに突きつける。

ギラリと鈍色に鈍く光るナイフは先端が尖っており、刺されでもしたら命が危ういだろう。

「このスラムに、工場から投棄される廃棄物の集積地はありませんか?」

けれどもミツキは突きつけられたナイフに物怖じせず、
眼前のチンピラにそう尋ねた。

「・・・アァ?何言ってんだテメェコラ、いーから出すもん出してとっとと失せろコラァ!!」

分かりやすく激昂してみせるチンピラとは対照的に、ミツキは淡々とポケットから金貨を取り出し、見せる。

「もし、ゴミの集積地に連れていってくれるようであれば、金貨1枚、あなたに渡します」

いつもの間延びした穏やかな口調はなりを潜め、理路整然とチンピラに交渉を持ちかける。

実はミツキは、普通にも喋れる。

目上の人や親しく無い他人などには、このようにどこか事務的な態度で接する事が多い。

「へぇ、金貨なんて、大層なモン、ポンと出せるなんざあんたら。なにもんだァ?」

チンピラは、金貨を見て若干目の色が変わった気がした。

「まぁだ、持ってんだろォ?金貨。いいなァ、恵まれない僕ちゃんなんかに、財布ごといただけやしねェかなァ・・・、フヒッ」

浅ましさを含む笑みに狂気を隠さず、チンピラは乱杭歯を剥き出した。

「そりァ・・・、こんな腐れたトコでンなもん出したら、こうなんだろォ。仕方ねえよ。あァ、仕方ねぇ・・・」


「・・・殺してでも!!奪いたくなっちまったよォ!!!」

チンピラは駆け出し、ミツキにその凶刃を突き立てたーーーーーーー。






どうも! キズミ ズミです!!


微妙な話でゴメンナサイ!

謝罪ついでに、報告です。

一章幕間の仮面の男の説明がわかりづらい、という意見がありまして、少しセリフを変えてみました。

それに伴うルールの変化もあるので把握頂ければ。






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