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チート無しクラス転移〜〜Be chained(ベチーン)〜〜

キズミ ズミ

一章 3話 『トゥラトゥラトゥラー』




『ーーー『トラ』と戦え』

いや、何を言ってるんだろう?

さも当たり前のように仮面の男が口にした言葉。

それに誰もが疑問符を浮かべた。

倒せるわけがないだろう。虎だぞ。

もしもここが異世界というチンプンカンプンな場所でなければ、きっと誰だってそんな発言一笑に付していただろう。

それなのにーーー

『制限時間は無制限。健闘を祈るよ。諸君』

そう言うと仮面の男は世界に混じる様に、音もなく姿を消した。

そして数秒後。

「ガァァァァァァッッ!!!!」

大地を震わせる咆哮をもって、その『トラ』は現れた。

360°どこを見たって地平線まで見える広大な大草原に、その巨躯は果たして現れた。

どこからでもなく、目の前から、いきなり。

『トラ』が姿を現してからほんの少し、刹那の間だけオレ含むクラスメイト達は水を打った様に静まり返った。

そしてーーー

「う、ウワアアァァァァァァッッ!!!」

「ト、トラ!!デカすぎるだろァ!!」

異世界に来た、という緊張感がそのまま何倍にも膨れ上がって恐怖にコンバートしたんだろう。

クラスメイト達は恐怖を顔面に縁取って蜘蛛の子を散らす様に、一も二もなく、三三五々、あちらこちらに逃げていった。

オレは足がすくんで動けなかったーーーー訳ではなく、
ただ、慄然りつぜんとしていた。

『トラ』、たしかに『トラ』だ。

トラ柄の毛とどう猛な爪と牙、ギョロリと動く大きな目玉はオレ達をただの生き餌と見ていた。

そして、とても、途轍もなく、途方もないほど、絶望的なサイズのトラだった。

見上げるほどの、巨躯。

目測、ゆうに5メートル、全長は10メートル以上ある。

『トラ』、成る程『トラ』だと、直感した。

虎でも無く、トラでも無く、『トラ』だった。

異形の、怪物。

「こんな・・・勝てる訳、無いだろ・・・・・・」

情けなく溢れた弱音は、誰に咎められる謂れはない。

『トラ』の涎でヌラリと鈍く光る牙、オレの右腕ほどもあるその牙に迎えられて、オレは『トラ』の口内にーーー。

「ミ、キ、オおおぉぉぉぉぉ!!」

『トラ』にガブリつかれる寸前で、オレはミツキにベルトを引っ張られ、間一髪、命を拾った。

「走って!!」

普段柔和なミツキからは想像もできないほどの、ハッキリとした声で喝を入れられた。

「ーーーすまん!逃げるぞミツキ!!」

我に返ったオレは体制を立て直し、脱兎のごとく、『トラ』の前から離脱した。

もちろん、『トラ』は仕留め損ねたオレに向かってくる。

「う、オ、オ、おおぉぉぉ!!?来た来たキタァ!!」

『トラ』は虎だけあって恐ろしく速い。

そして何より歩幅がハンパじゃない。

短距離でも長距離でも自信のある健脚なオレだが、
『トラ』とオレとの間はあっという間に縮まり、
再び『トラ』はオレに牙を剥いてーーーーーー。

ピタリと、『トラ』の疾走は止まった。

すぐに分かった。『トラ』は巨躯を振り回し、大地を踏みしめている。

その音が、轟音となってオレの後を追うのだ。

恐怖増幅器なんてものじゃない。

背後のプレッシャーが凄まじい中、全力疾走をしていたオレだ。

不思議に思って、ふと後ろを見た。

振り返りざまに耳朶じだを打つ、不快な咀嚼音。

『トラ』と出会ってから今まで、常に怠ることのなかった、最悪の状況の想像。

『トラ』の口元には、おびただしい量の鮮血が滴っていた。

『トラ』の、黄色と、黒と、白の毛はそれに真っ赤な
紅がマダラに、飛び散っていた。

地面を見ると、かつて人であったものの残骸が、上半身の削り取られたソレだけが、力なく布置されていた。

「ミ、ツキ・・・?」

どこにもミツキの姿は無かった。

あるのは、ただのーーー

「ア、ああああああァァァァァァ!!!!!」

「おまえエエェェェッッ!!!」

気がついたら、『トラ』に向かっていた。

頭が真っ白なのか真っ黒なのか、自分でもよく分からなかった。

オレは『トラ』の前足に渾身の力で殴りかかった。

殴打して、打擲ちょうちゃくして、蹴撃した。

『トラ』はソレらの攻撃を毫ともせず、受け続けていると、遠くにいる、別の獲物に気づいたらしい。

ノッソリと『トラ』は頭を振ると、地平線の向こうに行こうとした。

去り際に、オレを一瞥する。

まるで死んだ獲物に対する様な、ゾッと底冷えする様な
冷えた視線だった。

『トラ』が居なくなると、草原にちっぽけな嗚咽だけが
響いた。

「ウ、ぅグッ!クソォ!クソッ!クソ!クソッッッ!」

「こんな、こんな事、ミツキは、ミツキはなんでッッ!!!」

自分の無力感に、打ちのめされていた。

後悔が、後になって死ぬほど襲いかかってくる。

いっそ、この場で死のうか。

無力なまま、唯一の親友と同じ場所で、野垂れ死のうかーーー

どこまでも捨て鉢な発想になんの疑いもなく、それでも頭はやけに冴えていた。

ポシェットの中身、金貨と、謎の箱と、そしてーーー縄。

随分と手ごろな麻縄だった筈だ。

首を締めるのに、至極手ごろなーーー。

悪魔のささやきに耳を、体を貸して、ポシェットの中からその麻縄を取り出そうとする。

すると、やけに神々しい光芒を纏った謎の箱に気がついた。

「これは・・・?さっきまでは、光って無かったのに・・・」

不思議に思い、麻縄の前に、ヒョイと、その箱を手に取って見た。

ーーーーーーガションッッ!!

箱が思いっきり開くと、オレは莫大な光量に包まれたーーーーーーーー。

光が収まると、光の中から現れたオレは、オレはーーーーーーー

「今なら、大虎にも勝てそうな気分だ・・・」

ゆっくりと目を開けるとみなぎる力を体中から感じた。

「ミツキ・・・・・・すぐに終わらせるから」

そう言うと、人知を超えた速さで『トラ』に向かった






どうも!キズミ  ズミです!

よろしくお願いします!

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