理想の彼女は清楚系美少女なんだが

ウィング

第10話 過去とその先

──墓参りにて。


「竜希さん、一つの疑問点が出たので聞いてもよろしいですか?」
「ん? なんかあるなら是非是非言ってくれや」
「成海さんと唯衣さんが竜希さんの過去を言うのは『三年後』って言ってましたよね? それってお爺さんが関係してるのでは?」
「!?」


確かに言われてみればそうかもしれない。
つまり、俺の過去は成海と唯衣だけが関係してるのではなく、爺ちゃんも関わってくるのか?
ちっ……ややこしくなってきた。
確かめる手段は成海達に直接聞くしかないか。


「陽葵、次の部活で全てを聞こう。成海と唯衣に」
「分かりました。私もそれが一番いいと思います」


意見一致、これは聞くしかないな。


「部活が楽しみだぜ……」


俺は軽く微笑みながらそう言った──


次の部活の日。
もちろん全員揃っていた。


「では、部活を始めましょうか」
吹雪ブリザードは何かしたいものあるの? 我が部活は、今から超能力を手に入れに行こうと考えているんだけど!」
「「「却下」」」


相変わらず態度の変わらない唯衣を見て、少しホッとしながらも俺は本題に入った。


「今日は唯衣と成海に聞きたいことがあるんだ。俺の過去についてだ」
「またそれっスか? 何度聞かれても答える気はないっスよ」
「爺ちゃんが関係してるんじゃないか? と、言ってもか?」
「「!?」」


ビンゴ!
やっぱり爺ちゃんは関係してるみたいだ。
だが、俺の切り札はここで切っちまったし、この先に言い包めるのが大変そうだなあ。


「な、なんでライト……タッキーがそれを!? まさか、お見舞いに行ったの……?」
「行ったが今は関係ない。俺が知りたいのは過去だ。何があったか話してくれ」


一瞬の沈黙、第一声を発したのは成海だった。


「分かったっス。でも、自殺をしようとしないでくださいっス」


どういう事だ?
と、聞くのはやめ、大人しく話を聞くことにした。


「あれは、幼稚園の時の事っス──」



「よっしゃー、ボール遊びしようぜ!」


元気にはしゃいでいるのは、竜希だ。
家の前で遊ぼうと考えているようだ。


「いいねー、私もやりたーい!」
「僕もやりたいなあ」


いつも遊んでいるのは成海と唯衣、そして……。


「ほほほほほ、たのしそうじゃな。どれ、ワシもやってみようかのう」


爺ちゃんも常に一緒だ。


「何する? やっぱり無難にドッジボールにしようか! 二対二だから……俺と爺ちゃん、成海と唯衣で勝負しようぜ!」
「「「さんせーい!」」」


ドッジボールをするため、近くの公園へと向かった。
唯衣と中二病遊びしてたあの公園へ。
その公園の広さは遊具はなく、一軒家位の広さしかない。


「狭いがまぁ気にしないでやっていこうぜ」
「そうじゃな、みんなで気をつけながらやっていけばいいじゃろ」


そう言ってドッジボールを始めたわけだが。
成海の投げたボールが、車の走る道路へと飛び出してしまった。


「あ、やっば。ちょっと取ってくるわ」


竜希はそういい、飛び出した。
その時、


「危ない!!」


俺は道路の真ん中で、爺ちゃんの叫び声を聞き振り向くと、爺ちゃんが俺を突き飛ばしていた。
そして、俺は尻もちをつきながら爺ちゃんが轢かれるところを目の前で見て倒れた──


「──き」
「──つき」


あぁ、みんなが叫んでるなあ。
そう言って辛うじて開けていた目を閉じた。


起きると知らない天井、知らないベットの上に乗っていた。


「……? ここはどこだ?」


俺のその言葉に近くにいた人達が。


「あ、竜希気がついた?」
「あーよかった、僕のせいだったからどうなる事かと……」


俺は首を傾げて、


「? 君たち一体誰? 俺は君達を知らないよ?」
「「え? な、何ふざけてるの?」」


そう、俺はそのショックで記憶を失くした。


それから小学生の間ずっと何も思い出すことなく、成海は不登校、唯衣は話しかけてきたが恐怖でしかなかった。
中学の時、唯衣は中二病になり、キャラを濃くしようと考えた。
その結果、俺も唯衣と仲良くなり、幼馴染だと思い込むようになったが、根本的な部分は全く思い出していなかった──




「と、まぁそんな感じっス。そして僕が竜希さんをリスペクトしてるってのは、車にも動じず飛び出したのがかっこいいなって意味で」
「私が中二病になったのは、私という存在を記憶に付ける為で……」
「俺にそんなことがあったのか……? なるほどな、これで辻褄があったよ」


じゃあ爺ちゃんが病院にいるのは俺のせいだってのか?
……成海が予め自殺するなって言ったのは、自分のせいで爺ちゃんが余命宣告受けてるから責めないでってことなの……あれ、轢かれて余命宣告貰うっておかしくね?


「なあ、なんで爺ちゃんは余命宣告貰ってんの? 轢かれたんなら、死ぬか生きるかの二択じゃね?」
「病気っス。轢かれて地面に転がった時、傷口から入った細菌で……」


そんなことありえるのか?
初めて聞いたぞ?
だが、事実であるわけだし、あるんだろうなあ。
空気が重くなり、どうしようか悩んでいると。


「はい、じゃあもう帰りましょう。この話はこれで終わり、次の土曜辺りに皆でお見舞いに行きましょう」
「「「そうだな」」」



──十年後


「竜希、電撃人間ライトニングマン、どっちがいいかわかんないけどさ、それよりも問題なのは私がどっちでいて欲しい? オタク中二病? 清楚系? 新婚なんだしさ!」
「そらもちろん……『清楚系』でいてください!!」







          

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