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独白

羽純燈伽

お母さん

いつからだろう。
楽しくなくても笑うようになったのは。

いつからだろう。
愛想笑いと本当の笑みの境界線がなくなったのは。

いつも笑顔を振りまいて、誰かを笑わせて、本当の心を仮面に隠して。
そのうち、どれが自分の本心かすらもわからなくなって。

誰かに本当の自分を知ってほしいと願うのに、そのくせ、本当をさらけ出すのが怖い。
すでに本当の自分なんてどんなだったかを忘れている。

みんなの求める私でいなきゃ、私はいらない人になってしまいそうで。
誰かの求める私になろうと必死だった。

その途中で大切なものを犠牲にしたのも気づかずに。

今日も私は演じよう。
みんなのお母さんを。私、という他人を。
















自分の思っている本当の自分がどれだけ脆いものかを私は知っている。
他者から見た私がいないと私が成り立たないことも知っている。

だからこれはエゴだ。
私が私という人格を確立していたいというエゴ。
私が自分しか知らない一面を持っていたいというエゴ。

でも認めたくない。
誰かのために作り上げた自分以外に、自分の存在価値がないことを。
自分のために生きている自分がもういなくなってしまったことを。

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