たたかえ!グレートファントム10号 プレイバック

山本正純

しゅつどう! グレートファントム10号

緑の山の頂上にある白い建物。その近くには巨大な50メートルプールがあった。
施設の廊下でサイレンの音が鳴り響く。
『緊急警報。緊急警報。街に怪獣が現れました!』
館内放送を聞き、ベッドの上で眠っていた短髪黒髪の少年が跳ね起きる。その少年、黒金ケンは、部屋を飛び出した。
彼の行き付く先。それは博士がいるオペレーター室。ケンの予想通り、オペレーター室には白髪で腰が曲がった白衣の男がモニターに映る怪獣を見つめていた。
「博士。早くグレートファントム10号を出動させましょう! このままだと街が壊滅してしまいます」
正義感の強い少年は博士に訴える。しかし、博士はケンに対して衝撃的な発言をする。
「ケン君。プールに行こう!」
「なぜですか? こうしている間にも街は瓦礫の山になろうとしているんです。そんな時にプールで遊ぶんですか?」
「グレートファントム10号をプールの地下に移動させておいた!」
博士の発言に、ケンは開いた口が塞がらなかった。
「なぜですか? いつものところじゃないんですか?」
ケンの疑問を聞き、博士は偉そうに答える。
「光○○のマ○○はプールを二分割した所に巨大ロボットが奈落のように出てくるんだ。あの出動方法は、子供達に衝撃を与えたという。あれを超える画期的な出動方法を思いついた。今日はそれを試してみたいと思う。初めてだけど」
「初めてなのに大丈夫なんですか?」
パイロットの疑問を聞いても、博士は考えを変えない。
「大丈夫だ。光○○のマ○○は新開発の武器を試運転もせずに使ったらしい。上手くいくはずだ。ということで、海パンに着替えてきてくれ」
「なぜですか?」
「いつものパイロット服を着る男がプールにいるわけがないだろうが。バカ野郎。着替え終わったら、娯楽用に作っておいた敷地内のプールに来てくれ!」
ケンは訳も分からず、自分の部屋に戻り海パンに着替え、敷地内のプールへと走った。


プールサイドにいる白衣姿の博士は、海パン姿のケンを見つけ、手を振る。
「ケン君。時間がない。一度しか言わないからよく聞いてくれ。このプールの1番レーンの50メートル地点の壁にボタンを設置した。そのボタンを押したら、巨大ロボットのグレートファントム10号が急浮上するシステムだ」
「分かりました!」
ケンは元気よく返事をしてからプールサイドを走る。ロボットを急浮上するボタンを押すために。ところが、そんな彼を博士が呼び止めた。
「バカ野郎。誰がプールサイドを走れと言った! 危ないじゃないか! 何でもいいから泳いでからボタンを押せ」
時間がないと言ったのはそっちだろうと心でツッコミを入れつつ、ケンはプールに飛び込んだ。
勢いよく水しぶきが飛び散り、平泳ぎをするケンの体が水の中で進んでいく。
40秒程で泳ぎ切ったロボットのパイロットは、ゴール地点のプールの壁に埋められたボタンを押す。しかし、何の反応もない。
ゴール地点には、いつの間にか博士の姿があった。博士も何が起きたのか分からず、慌てている。そんな博士に無線でメカニックから連絡が届いた。
「なるほど。分かった。じゃあまた来週」
博士は無線を切り、プールから上がろうとしているケンに頭を下げた。
「ケン君。すまなかった。プールを開閉させるシステムに異常があったそうだ。復旧に一週間ほどかかるらしい」
「何やってるんですか! こうしている間にも街は怪獣に破壊されているんですよ!」
「グレートファントム10号が動けなくても、別の研究所のロボットが怪獣を倒してくれるさ。それに、どんなに街が壊れても、一週間後には元通り」
他力本願な博士の言動に、ケンは呆れた。
博士の予想通り、街に現れた怪獣は別の研究所の巨大ロボットが倒し、街に平和が戻ったという。

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