薬師シャルロット
迷走と真理(前編)
ラウリィさんと、エンハーサさんの二人が大事な対話をすることは何となく言葉の端から伝わってきていた。
それが私に関するという話だということも、場所を移すことからすぐに分かった。
だからこそ、暖かい白湯を持っていくふりをして2人のあとを追う。
本当は、立ち聞きなんてよくないと思っていたし、二人が気を利かせてまで場所を変えたのだ。
本当に、私には聞かせたくない内容だったのだろう。
でも――。
それでも……。
もう、自分の知らない所で、自体が動くのだけは嫌だった。
だからこそ、身体強化の魔術を使い二人が入った村の食料を保管している倉庫の戸に耳を当てて会話を聞いた。
そして、私は後悔した。
動揺したことで、私の気配が獣人特有の直感を持つエンハーサさんに察知されてしまい、ラウリィさんと目が合った瞬間、私は何と言っていいのか分からなくなってしまった。
彼の私を見る憐憫を含んだ瞳に見られて頭が真っ白になってしまった。
誰かに敵意を向けられたことはある。
誰かに苛立ちを含んだ眼差しで見られたことはある。
だけど……。
哀れみを持った表情と眼差しを向けられたことはなかった。
だって……。
それは、私が――。
そこまで考えたところで――。
私は、無意識のうちに転移魔術を発動させていた。
明確な座標を指摘せず、場所すら想像せずに発動する転移魔術は、とても危険な物だということも、頭の中から完全に抜けていた。
それでも……、それでも……。
哀れみの瞳で見られるくらいなら――。
「私……うっ――」
不完全な状態で発動させた転移魔術の影響からなのか、吐き気を催し私はその場で吐く。
――気持ち悪い。気持ち悪い。気持ち悪い。気持ち悪い。気持ち悪い。気持ち悪い。気持ち悪い。気持ち悪い。気持ち悪い。気持ち悪い。気持ち悪い。気持ち悪い。
「どうして――」
言葉が……。
明確な意思を――。
意味を持った意味を含んだ理由が――。
「どうして……こんなことに……」
――二人の会話。
その中に存在していた内容。
お母様が、私に精神系の魔術を行使しようとしていたという話。
「何も分かっていなかった……」
私は膝から崩れ落ちる。
地面に両膝をつき体を折り曲げて両手で何度も地面を叩く。
「お母様を、昏倒させてしまったのは……私だったのね……」
誰かが、お母様を攻撃してきたなんて、ひどい誤解だった。
お母様を傷つけたのは私であって――。
私を傷つけようとしたのはお母様で……。
「もう、どうしたらいいのか分からない……」
思考は、混濁としていてまったく意味を成さない。
どうしたらいいのか自分では、分からない。
そんな私の頭に大きな手が載せられた。
「ひさしいな。クレベルト王国の王女シャルロットよ」
悩み嘆き足を止めた私に語りかけてきたのは――。
「魔王さん……」
私の言葉を聞いた魔王さんは、ゆっくりと頷いてきた。
それが私に関するという話だということも、場所を移すことからすぐに分かった。
だからこそ、暖かい白湯を持っていくふりをして2人のあとを追う。
本当は、立ち聞きなんてよくないと思っていたし、二人が気を利かせてまで場所を変えたのだ。
本当に、私には聞かせたくない内容だったのだろう。
でも――。
それでも……。
もう、自分の知らない所で、自体が動くのだけは嫌だった。
だからこそ、身体強化の魔術を使い二人が入った村の食料を保管している倉庫の戸に耳を当てて会話を聞いた。
そして、私は後悔した。
動揺したことで、私の気配が獣人特有の直感を持つエンハーサさんに察知されてしまい、ラウリィさんと目が合った瞬間、私は何と言っていいのか分からなくなってしまった。
彼の私を見る憐憫を含んだ瞳に見られて頭が真っ白になってしまった。
誰かに敵意を向けられたことはある。
誰かに苛立ちを含んだ眼差しで見られたことはある。
だけど……。
哀れみを持った表情と眼差しを向けられたことはなかった。
だって……。
それは、私が――。
そこまで考えたところで――。
私は、無意識のうちに転移魔術を発動させていた。
明確な座標を指摘せず、場所すら想像せずに発動する転移魔術は、とても危険な物だということも、頭の中から完全に抜けていた。
それでも……、それでも……。
哀れみの瞳で見られるくらいなら――。
「私……うっ――」
不完全な状態で発動させた転移魔術の影響からなのか、吐き気を催し私はその場で吐く。
――気持ち悪い。気持ち悪い。気持ち悪い。気持ち悪い。気持ち悪い。気持ち悪い。気持ち悪い。気持ち悪い。気持ち悪い。気持ち悪い。気持ち悪い。気持ち悪い。
「どうして――」
言葉が……。
明確な意思を――。
意味を持った意味を含んだ理由が――。
「どうして……こんなことに……」
――二人の会話。
その中に存在していた内容。
お母様が、私に精神系の魔術を行使しようとしていたという話。
「何も分かっていなかった……」
私は膝から崩れ落ちる。
地面に両膝をつき体を折り曲げて両手で何度も地面を叩く。
「お母様を、昏倒させてしまったのは……私だったのね……」
誰かが、お母様を攻撃してきたなんて、ひどい誤解だった。
お母様を傷つけたのは私であって――。
私を傷つけようとしたのはお母様で……。
「もう、どうしたらいいのか分からない……」
思考は、混濁としていてまったく意味を成さない。
どうしたらいいのか自分では、分からない。
そんな私の頭に大きな手が載せられた。
「ひさしいな。クレベルト王国の王女シャルロットよ」
悩み嘆き足を止めた私に語りかけてきたのは――。
「魔王さん……」
私の言葉を聞いた魔王さんは、ゆっくりと頷いてきた。
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コメント
コーブ
魔王さまぁぁぁぁぁ~~… ってな感じかな♪