薬師シャルロット
勇者がやってきました(5)
大陸北方に位置するクレベルト王国。
その隣国ということもありカサブランカ公国の冬の到来も早い。
日本のような独特な四季という物は存在しておらず、春が来たら冬! と言った感じで農作物も、寒冷に強いものが作られることになる。
この異世界で食されるのは主に小麦であり、寒冷に強い小麦というはライ麦に近い。
所謂、寒冷小麦というものだ。
「エルカ姉さん、これを40キロほどもらえますか?」
「あいよ。そんなに持てるのかい?」
体の線が細い私に気を使って、話かけてきてくれる。
私がクレベルト王国を出てから、公都エルンの市場に買い物にきて早5年。
市場では、薬草を購入したり加工した薬を卸したりしていることで、すっかり顔が売れているのだ。
「はい、今年は大所帯になりそうなので……」
「大所帯かい?」
「はい、それに荷物持ちならいますから……」
私は後ろをチラリと見る。
そこにはラウルイ=ベルナンドが立っていた。
傷が、殆ど完治してからラウリイさんは私からあまり離れようとしない。
理由はよく知らないけど。
荷物運びや、薪割りをしてくれる。
正直、身体強化魔術を使えば私でも出来なくはないんだけど、薪割りは外で行うし私があまり魔術が使えると変な眼で見られるから正直助かったりしている。
最初は、聖教会の人だからと少し疑ってみていたけど、きちんと毎月お金も払ってくれるし、転移魔術も使えるから、結構重宝していたりする。
「ふーん。とうとうアヤカちゃんにもいい人が出来たのね! これは市場の若いモンたちも大変だわー」
「そんなことないです! ただの居候ですから!」
「必死に否定するところも可愛いわね。――で、名前はなんて言うんだい?」
「えっと……」
私は彼のほうをチラリと見る。
さすがに、私から名前を言うのは不味いと思うから。
「お美しいご婦人、俺の名前はラウリィと言う。これから、よろしく頼む」
「私の名前はエルカよ? エルカと呼び捨てでいいわ。アヤカちゃんも呼び捨てでいいからね?」
「無理です! だって、エルカ姉さんは私の命の恩人ですから――」
「アヤカちゃんの卸してくれる薬は評判がいいのだから、気にしなくてもいいのに……」
「どんなにいい製品であっても、認知度が高くないと売れませんから! だから、とっても感謝しているのです。最初にお店に私の薬を置いてくれたのはエルカ姉さんですから!」
私の言葉にエルカ姉さんは肩を竦める。
「ラウリィさん、この子はへんな所で自分を卑屈に見る癖とかあるから大変だろうけど、面倒を見てやってね」
「分かっている」
「そう……ならいいのだけどね――」
「なんか、駄目な子認定されているような気がします!」
「そんなことないよ」
エルカ姉さんは、小麦が詰まった麻で作られた袋を差し出してきた。
身体強化魔術を使っていなのに40キロ近い小麦が入った袋を差し出してくるとか、ちょっと同じ女性として信じられないけど、長年、重い荷物を持っていると持てるようになるのかもしれない。
ラウリィさんは、エルカ姉さんから受け取った荷物を軽々と片手で持つと肩に掛けて、「それで、これからどうする?」と話かけてきた。
「そうですね……。風邪薬と傷薬も薬師ギルドの納品致しましたし、干し野菜に果物。あとは……新鮮な野菜も購入していきましょう」
「分かった、それじゃ失礼する」
ラウリィさんは、エルカ姉さんに頭を下げていた。
私は彼の動作から、普通の階級の人ではないような気が最近している。
でも――。
一つだけ気掛かりなのは、どうしてあんなに大怪我をしていたかだけど――。
彼は、そのことに関しては何も教えてくれない。
きっと、人には言えない事情があるのかもしれない。
……でも、人に言えない事情があるのは私も同じだし……。
結局、お互い隠し事をしていることに変わりはないのだ。
冬支度のための食料購入を終えた私とラウリィさんは、ラウリィさんの転移魔術で獣人たちの村に転移した。
村に入ると、私を見た獣人の人は手を振ってきてくれる。
私も手を振って返すけど。
ラウリィさんを見ると彼らは嫌悪の眼差しを見せてきた。
以前に、獣人の人が言っていた。
人間は災いを呼び込むと――。
でも、私もそうなのか? と聞いたら私はエルフの血を半分引いているからいいと言われた。
獣人には、どうやら私が人間とエルフのハーフだということが分かっていたらしい。
だから、エンハーサさんに連れて来られても問題なく受け入れてくれたのだろう。
「どうかしたのか?」
「いいえ、色々と難しいなと――」
「そうだな。人間と亜人が仲良く暮らしていける時代が来ればいいのにな」
「――!」
「どうかしたのか?」
「なんでも……」
聖教会の関係者と言うことだったから、てっきり人間至上主義だと思っていたけど、違うのかな?
彼がどんな人なのか分からなくなってくる。
でも……エンハーサさんに対する彼の態度には嫌悪が浮かんでいる様子もないし……。
その隣国ということもありカサブランカ公国の冬の到来も早い。
日本のような独特な四季という物は存在しておらず、春が来たら冬! と言った感じで農作物も、寒冷に強いものが作られることになる。
この異世界で食されるのは主に小麦であり、寒冷に強い小麦というはライ麦に近い。
所謂、寒冷小麦というものだ。
「エルカ姉さん、これを40キロほどもらえますか?」
「あいよ。そんなに持てるのかい?」
体の線が細い私に気を使って、話かけてきてくれる。
私がクレベルト王国を出てから、公都エルンの市場に買い物にきて早5年。
市場では、薬草を購入したり加工した薬を卸したりしていることで、すっかり顔が売れているのだ。
「はい、今年は大所帯になりそうなので……」
「大所帯かい?」
「はい、それに荷物持ちならいますから……」
私は後ろをチラリと見る。
そこにはラウルイ=ベルナンドが立っていた。
傷が、殆ど完治してからラウリイさんは私からあまり離れようとしない。
理由はよく知らないけど。
荷物運びや、薪割りをしてくれる。
正直、身体強化魔術を使えば私でも出来なくはないんだけど、薪割りは外で行うし私があまり魔術が使えると変な眼で見られるから正直助かったりしている。
最初は、聖教会の人だからと少し疑ってみていたけど、きちんと毎月お金も払ってくれるし、転移魔術も使えるから、結構重宝していたりする。
「ふーん。とうとうアヤカちゃんにもいい人が出来たのね! これは市場の若いモンたちも大変だわー」
「そんなことないです! ただの居候ですから!」
「必死に否定するところも可愛いわね。――で、名前はなんて言うんだい?」
「えっと……」
私は彼のほうをチラリと見る。
さすがに、私から名前を言うのは不味いと思うから。
「お美しいご婦人、俺の名前はラウリィと言う。これから、よろしく頼む」
「私の名前はエルカよ? エルカと呼び捨てでいいわ。アヤカちゃんも呼び捨てでいいからね?」
「無理です! だって、エルカ姉さんは私の命の恩人ですから――」
「アヤカちゃんの卸してくれる薬は評判がいいのだから、気にしなくてもいいのに……」
「どんなにいい製品であっても、認知度が高くないと売れませんから! だから、とっても感謝しているのです。最初にお店に私の薬を置いてくれたのはエルカ姉さんですから!」
私の言葉にエルカ姉さんは肩を竦める。
「ラウリィさん、この子はへんな所で自分を卑屈に見る癖とかあるから大変だろうけど、面倒を見てやってね」
「分かっている」
「そう……ならいいのだけどね――」
「なんか、駄目な子認定されているような気がします!」
「そんなことないよ」
エルカ姉さんは、小麦が詰まった麻で作られた袋を差し出してきた。
身体強化魔術を使っていなのに40キロ近い小麦が入った袋を差し出してくるとか、ちょっと同じ女性として信じられないけど、長年、重い荷物を持っていると持てるようになるのかもしれない。
ラウリィさんは、エルカ姉さんから受け取った荷物を軽々と片手で持つと肩に掛けて、「それで、これからどうする?」と話かけてきた。
「そうですね……。風邪薬と傷薬も薬師ギルドの納品致しましたし、干し野菜に果物。あとは……新鮮な野菜も購入していきましょう」
「分かった、それじゃ失礼する」
ラウリィさんは、エルカ姉さんに頭を下げていた。
私は彼の動作から、普通の階級の人ではないような気が最近している。
でも――。
一つだけ気掛かりなのは、どうしてあんなに大怪我をしていたかだけど――。
彼は、そのことに関しては何も教えてくれない。
きっと、人には言えない事情があるのかもしれない。
……でも、人に言えない事情があるのは私も同じだし……。
結局、お互い隠し事をしていることに変わりはないのだ。
冬支度のための食料購入を終えた私とラウリィさんは、ラウリィさんの転移魔術で獣人たちの村に転移した。
村に入ると、私を見た獣人の人は手を振ってきてくれる。
私も手を振って返すけど。
ラウリィさんを見ると彼らは嫌悪の眼差しを見せてきた。
以前に、獣人の人が言っていた。
人間は災いを呼び込むと――。
でも、私もそうなのか? と聞いたら私はエルフの血を半分引いているからいいと言われた。
獣人には、どうやら私が人間とエルフのハーフだということが分かっていたらしい。
だから、エンハーサさんに連れて来られても問題なく受け入れてくれたのだろう。
「どうかしたのか?」
「いいえ、色々と難しいなと――」
「そうだな。人間と亜人が仲良く暮らしていける時代が来ればいいのにな」
「――!」
「どうかしたのか?」
「なんでも……」
聖教会の関係者と言うことだったから、てっきり人間至上主義だと思っていたけど、違うのかな?
彼がどんな人なのか分からなくなってくる。
でも……エンハーサさんに対する彼の態度には嫌悪が浮かんでいる様子もないし……。
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コメント
コーブ
果報は寝て待て…的な♪