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薬師シャルロット

なつめ猫

勇者がやってきました(4)

 食事を摂ったあと、ラウリィさんは瞼を閉じるとすぐに寝てしまった。
 やはり、回復魔術で骨を繋ぎ、内臓を修復したとしても、それまでに受けたダメージは回復しないし、完全には治っていないから、それなりに痛みはあると思う。

「やっぱり疲れていますよね……。でも、ラウリィ=ベルナンドさんですか……」

 私は、ラウリィさんが食事をしたお皿を洗いながら一人呟く。
 彼の容態は、体を動かさなければ特に問題はない。
 でも無理に動かせば、治りは遅くなるし、あまり無理なことはさせられない。
 しばらく居間で休んでもらってから、体が回復したら別の部屋に移動してもらったほうが良いかも。

「――それにしても……」

 聖教会に属している方とはエンハーサさんから伺ってはいた。
 だから、最初は傲慢な言いから少し身構えてしまったけど……。
 食事を渡したときもキチンと御礼も言ってくれたし、そんなに悪い人ではないような気がする。

 でも一つ気になるのは、あんな大怪我をどこでしたのかってこと。
 両手両足骨折の内臓損傷とか、ちょっとありえない怪我の仕方をしていた。
 普通に考えて、ちょっとありえないというのが少し考えただけで分かる。

「まぁ、深く考える必要はないよね……」

 そう、私には、お母さまを目覚めさせる方法を見つけるという目標があるから。
 それに魔王さんにも、きちんと謝ってないし――。

 それに、そろそろ冬が到来する。
 冬になる前に薬を売って一稼ぎしないといけない。
 とくに売れるのは風邪薬で。
 地球の医学をある程度、知っている私は普通の薬草で作った薬に回復魔術を混ぜることでどんな風邪でも一発で直せる風邪もイチコロリンなポーションが作れるのだ。

「さてと――」

 私は、食器を洗い終わると居間を通りラウリィさんが寝ているのを確認した後、作業場に向かう。
 作業場と言っても地球にあるような工場ではなく、何十個もの瓶の形をした陶器と、薬草や毒消し草や毒草などを磨り潰す道具が置かれている。
 それらは、私が5年間使い続けているもの。

 市場で購入してきた薬草・毒消し草・毒草を磨り潰して何対何の比率で調合し、陶器の中に入れ終えるとすでに時間は、お腹が鳴った。
 お腹の空き具合から見てお昼くらいなはず。
 私は数十個もの薬草が入っている陶器の器を見て油紙で蓋をしていく。

「ふうー……、とりあえず、これを全部売れば今年の冬は暮らしていけそう」

 居間を通り台所へと向かおうとすると「ずいぶんと熱心に作業しているんだな?」と、居間と作業場の間に立っているラウリィさんは私に語りかけてきた。
 彼の言葉に、私は一瞬だけ眉を潜める。
 だって――。

「ラウリィさん! 怪我人が勝手に出歩いたら駄目です!」
「――え? あ、うん……」

 一瞬、俺様のような話し方をしてきたけど、話は素直に聞いてくれるみたいで頷いてきてくれた。
 私はラウリィさんの横を通り抜けると台所にいき、食事の支度を始めた。



 ラウリィさんが、シャルロットのアトリエ。
 つまり診療所に来てから、すでに一週間が経過している。
 彼の体は、まだ完治していないということもあり、居間から移動することは出来たけど、激しい運動などは、まだ行うことは許可していない。

「アヤカが作る薬は不思議な効果があるな」
「そうでしょうか? さすがは秘伝のレシピですね」

 どうも彼は、傷跡が治りやすくなる薬に興味があるようだけど。
 その秘密を教えるわけにはいかない。

 私は、ラウリィさんの包帯をとっていく。

「殆ど傷は癒えたようですね。来週くらいには動けると思いますので、そうしたら人里に向かうのもいいか知れません」
「……君も一緒に行かないか?」
「私もですか?」

 ラウリィさんは、頷き返してきた。

「君の作る薬は、戦いの役に立つと思うのだ。多くの人々の命を救うかもしれない」
「……ごめんなさい」

 私は頭を下げる。
 たった一人の肉親すら、助け出せてないのに大勢の命を救う余裕なんて私にはないから。

「わかった――、ただ俺の怪我を治すためにかなりの薬草や希少な物を使ったのだろう?」
「――えっと……。そうですね」

 効果な物を使ってないと言ったら大変な事になるような予感がした。
 だから、秘伝のレシピ=希少な素材と答えたけど……。

「そうか……無理強いはできないな――」

 ラウリィさんは、小さく溜息をつくと壁に寄り掛かるようにして目を閉じると寝てしまった。
 どこでも寝られるとかすごい特技。 



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