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薬師シャルロット

なつめ猫

勇者がやってきました(3)

「えっと、ここは療養所です」
「――療養所……? ウッ――」

 私は、男性の問いかけに答えながら、戸棚から薬草を煎じて作った薬品――回復ポーションを手に取りながら、男性の容態を解析の魔術で確認していく。
 重要な内臓器官・骨折などは完全には言えないけど寝ている分には回復している。
 ともかく一安心と言ったところだろう。

「無理はされないほうがいいと思います」

 私は、半透明なガラス瓶に入った緑色の液体を陶器の器の中に移し、そこにハチミツを入れる。
 薬草だけ煎じて作った薬というのは、とても苦いのだ。
 だから、なるべく呑みやすいようにハチミツを入れてマイルドにしている。
 ブラックコーヒーだと飲みにくいけど牛乳を少しだけ入れると飲み易くなる理論!

「あの……これをどうぞ……」

 私は、陶器の器を差し出す。
 彼は、私のことを燻しげに見てくる。

「ここは……、どこだと聞いたのだが?」
「ですから、療養所だと――」

 正確には、クレベルト王国外は亜人への偏見が強く扱いも酷いから、私がここの代表者と言うことになっている。
 獣人や亜人が集まって作られた村と言っても、有事の際には、私がエンハーサさんを雇用するという形を取っていたほうがいいだろうと言うエンハーサさんの案だ。

「――はぁ……。まあ、いい――。怪我の手宛をしてくれたのだろう?」
「はい」

 私はコクリと首肯する。
 彼は、私が差し出した陶器を手に取ると中に入っていた薬を一息に飲み干した。

「……痛みが弱まった気がする。これは……、麻薬か何かなのか?」
「いいえ、普通の薬草を煎じたものです。作り方はお教えできませんが……」
「ふむ……。まぁいい……世話になったな。治療費は幾らだ?」
「えっと――。治療費は金貨1枚ですが……」
「金貨1枚? 桁を間違えていないか?」
「えっと、貴方の怪我は、まだ治っていないので――」
「そういえば……」

 私の言葉に彼は、何かを思い出したのか何かを堪えるような表情をしたあと、自分の体を触っていく。

「動かなかった足や腕が治っている? それに息苦しさも――」

 私の見ている前で、男性はしばらく考えるそぶりを見せたあと、私を見上げてくる。

「私は、もっと大怪我をしていたと思うのだが、君が治療してくれたのか?」
「――えっと……。貴方は、私の店舗前で倒れていたので……、なんというか流れで治療したというか、そんな感じですけど……。でも、そんなに酷い怪我はしていなかったです」
「そんな馬鹿な!? 痛っ――」

 彼は突然、声を荒げてくる。
 だって本当のことを言ったら大変な事になるし、回復魔術は使ってないといったほうがベスト。

「あの……。じつは――」
「どうした? やはり酷い怪我をしていたのか?」
「い、いえ……、あ、あの……実は、我が家秘伝の回復ポーションなので……ある程度の怪我にも効果があるのです」
「ある程度? そんな怪我ではなかったような気がするが……」
「いえいえ、本当です。どこのお家でもお家秘伝の料理とかありますよね? そんな感じです」
「――そうか……。たしかに部外者には教えられないか……」

 私は彼の言葉に静かに頷く。
 そして、戸棚から、まったく同じ回復ポーションを手に取る。
 この世界では、薬師が作るのは、あくまでも薬であってポーションではない。

 ただし、私が作った薬は、ポーションと言うことにしている。
 これには、私の回復魔術が少しだけ込められていたりするのだ。
 まぁ、これは5年間の試行錯誤の果てに作り上げた回復魔術薬――通称ポーション。

 エンハーサさんが、元・王宮薬師であっても身分を隠さないといけないことから、肩書きで仕事を取れるわけがないし、客もつかない。
 そこで何とか生計を立てるために、競合していた薬師達との差別化を測るために作った物。

 私は、薬草を煎じた液体を男性から受け取った陶器の器に注ぐさいに、少し強めの回復魔術を添付する。
 簡単に言えば肉体の再生を司りエネルギーを作りだすミトコンドリアの活性化と、細胞増殖の限界値テロメアを付与するイメージ。

「これは、少し強めの物になりますが、どうぞ――」
「……あ、ああ……」

 彼は私を見ながら、素直に頷くと陶器を受け取り口に運んだ。
 私は、彼が飲んだのを確認すると――。
 半透明のガラス容器を戸棚に戻す。

「まだ、怪我が治っていませんので、しばらくはお休みされたほうがいいと思います」
「…………」

 大人しく話を聞いている彼に、私は首を傾げる。
 何か、おかしな態度をしただろうか?
 考え事をしていると、部屋の中に空腹を告げる音が響いて――。

「す、すまない――」
「い、いいえ……えっと、お腹が空いているのですよね? すぐに用意しますね」

 私が彼から離れようとすると、腕を捕まれた。

「――タイミングを逸してしまったが、私はラウリィ=ベルナンドと言う。助けてもらったと言うのに挨拶が送れてしまってすまない」
「いえいえ、別に大丈夫です。知らない場所で目が覚めたら、誰だって警戒心を抱きますよね?」

 私は、そっと私の腕を掴んでいる彼の腕に手を添えると外そうと試みる。
 試みるけど、思ったよりもずっと強い力で掴んできていて離してくれそうにない。

「君の名前は?」
「私は、アヤカといいます」
「アヤカ……、珍しい名前だな――」
「よく言われます」
「ところで君は、魔術師なのか? これだけ強い力で腕を掴んでいるというのに、まったく痛がる素振りを見せないなんて――」
「えーっと……。少しだけ父親のような人に習って……」
「そうか――。ずいぶんと鍛えられたのだな」
「そうでもないです。それでは、食事の用意をしますので――」

 私は、彼が手を離してくれたタイミングを見計らって部屋から出ると台所に向かった。


 



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コメント

  • コーブ

    むむむ…

    0
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